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“良いこと”は稼げないのか

「あの人たちすごいよね。お金も儲からないのに生活を削って頑張ってて」

初めてこの言葉を聞いたのがいつで、誰からだったのかももう覚えてはいないけど、朧気な記憶の中でも僕は首をかしげていた。
生活を削って頑張っているのにお金が儲からないって、どうなんだろう、と。

お金を稼ぐことは正義?

「お金を稼ぐことが正義だ」という価値観を持ったことはない。
それは、僕が一定恵まれた環境で育ってきたからだろうし、お金によって強烈に苦しい思いをしたこともないからだという自覚があるが(大学時代に食べるものがなくて栄養失調になって運ばれたり、新卒時代に貧乏すぎて六畳一間でルームシェアしていたことぐらいはあるけど)、一番は「使いたいものがそんなにない」というところに起因している。

ただ、それと「稼がなくていい」は全く別のところにあり、少なくとも我慢や苦しみに耐えて生きることを「清貧だ」と言えるほどに頓着がないわけではない。

「お金」や「稼ぐこと」に対する価値観は、僕らアラサー世代は最も中途半端であるとも言えるだろう。

高度経済成長期から平成にかけてあった

・良い家
・良い車
・良い時計

といったステイタスはなくなり、出世レースや激烈に働くといった言葉も聞かなくなった。代わりに

・シェア
・自分らしさ
・サスティナビリティ
・ダイバーシティ

といった、個々の特性への許容とゆるやかなつながりという価値観が広がった。

昭和平成的価値観から令和的価値観へ

「いつか都内のタワマンに!」「郊外に一軒家を!」

ーーかつて周りの将来設計はそのどちらかに集約されていたはずだったが、今ではホテル暮らしや多拠点生活、シェアオフィスやコミュニティスペース、「好きな場所で好きなライフスタイル」は今や誰しもが頭をかすめる選択肢の一つだ。

一方で、拝金主義に対して強い憎しみや嫉妬の感情も薄れていっていることも確かで、競争社会で確かに生まれる「敗者」という価値観が生まれにくい構造へと変化している。

これによって、これまで存在していた「清く貧しく」という価値観もまた、どこか嘘っぽく扱われ、それぞれが「心の豊かさを保てる金銭とはどれほどのものか」を考える時代に突入している。

アラサー世代の中には、いわゆる「昭和平成的価値観」と「令和的価値観」を持ったものが入り混じり、それぞれもまたグラデーションの中でときに行ったり来たりをしている。

今や若者とカテゴライズされる多くの人は「とにかく金さえあればいい」という価値観に対して曖昧に首をかしげるだろうし、逆に言えば「金がないこと」は別に「心の豊かさ」を失うこととは繋がらない。

では、ソーシャル領域は?

そんな時代において、今でもソーシャルと呼ばれる領域だけは、どこか「儲けること」そのものをきらい、未だやりがいや思いやりによって成り立っている。

でも、本当にそれでいいのだろうか。

少なくとも、良いことをしている人たちの生活は、その「良さ」に応じて生活の豊さまでも担保される社会であって欲しい、と僕は思う。
なぜならその方が「良いことをすることに積極的な社会」になる、と信じているからだ。

ビジネスに関わっている人の多くが世代を超えて「個々人の豊かさ」に近づいているように、ソーシャルに関わっている人の多くがもっとビジネスに近寄っても良い時代になっているのではないだろうか。

これからの時代の「すごい人」

きっと、これからの時代における「すごい人」というものは「好きなように生きて、好きなことで働いて、好きなものを好きだと言い、少しだけ世の中に良いことが出来る人」なんだと思う。

そこにはお金のあるなしで優劣を決めることもなく、貧しいと感じる状況を転換しなければいけない世界もない。

そんなものさしがなくても、自分の心に正直に、好きなことと良いことが重なり合うところを見つけられる人、が「すごい人」になっていくのだろう。

時代の変化は否定ではない

時代の価値観の変化を肯定することは、なにも過去の価値観を否定するものではない。むしろ「脱皮」に近いような気がする。

モーレツ会社員がたくさんいた時代があって、今の豊かさがある。
癒しやモチベーションをお金やステイタスにしなければ乗り越えられなかった時代がある。
貧しさを肯定しなければ、救えなかったことがある。

それらの過去を否定し、新たな価値で覆い隠すことではなく、これまでの価値観の上に「もう少し良くできるタイミングがきたよね」ということなのだろう。

いつか現代の価値観も、脱皮するときが来るだろう。
その時に、「あの時代の人たちが踏ん張ったから、今こんな主張が出来るようになった」と言われるように。

次回は「SDGsとソーシャルベンチャー」について。乞うご期待です。

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