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Across the Pluriverse|越境する

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興味を唆られる研究や書籍についての記事を分野横断的に蒐集。単純に面白かった内容も含め、考えさせられることや応援したい研究の貯水池。
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#研究

【よどみの探究:第3回】「周囲が求めていること」に合わないがゆえに言いづらい研究の関心があるのでは?

「この前聞いた岡本さんの話、大変そうとは思ってたけどそれ以上に何かありそうなんだよな……」 ある金曜の夜、抱志の「振り返り」は突然やってきた。そして「振り返り」の中身を記録すべくノートPCを開く。 抱志が思い出したのは、先週末に大学院時代に隣の研究室で同学年だった友人である岡本龍人と会ったときのことである。彼は大学院の修士課程を終えて企業に就職したものの、3年ほど勤めた後で退職して博士課程に学生として「舞い戻ってきた」という経歴を持つ。そしてAIの研究で博士課程を修了し、現在

「光合成をやめた植物」と多様な生態系の在り方。末次健司氏インタビュー。

「光合成をやめた植物」と聞いて、きっと驚かれると思う。どうやって生きているの?それは植物なの?この不思議な「菌従属栄養植物」の研究をされている神戸大学大学院理学研究科教授 末次健司氏にお話をお聞きした。 -末次さんは、なぜ菌従属栄養植物などの「光合成をやめた植物」を研究されるようになったんですか? 末次:奈良出身で、子供の頃から自然の中で遊ぶのが好きでした。当時から哺乳類のような大きな動物ではなく、植物や昆虫のように手にとって観察できる、比較的小さな生き物に惹かれていたん

日本語を勉強する外国人であり、また日本語教育を探求する研究者として学んだこと

このメールを受け取ったとき、すごく嬉しかった。 修士課程を修了するために2年間の深い学びと努力を重ねた後、初めて筆頭著者として論文が受理されたことは、自分が学者としての一歩を踏み出したという感覚を強く感じさせた。 この論文の出版にあたり、これまでの研究の道筋について考えを巡らせることにした。結局、18歳で高校を卒業し、脳神経外科医になろうと考えていた当時の私の目標は、明らかに時間とともに変わってきた。 本記事では、この道のりについて考察し、この研究がどのように生まれ、今

【インクルージョン】意外とよくわかっていない、「インクルージョン」とは何か?

ここまで、インクルーシブ・リーダーシップ(IL)に関する主要論文を投稿してきましたが、今回は、IL研究の元となっている、「インクルージョン」に関して見ていきます。 インクルージョンとは何か、を理解するために個人的におすすめなのが、こちらの書籍です。学術書ながら、とてもわかりやすい良書です。過去の研究を紐解き、インクルージョンをここまで明瞭に解説した書籍を他に知りません。超おすすめです。 インクルージョンとは? そもそも、「インクルージョン」とは何か?と聞かれて、どう説明

朝ドラ「らんまん」と健全な科学

朝ドラの「らんまん」を見ています。 先日の放送で研究倫理についてちょっと気になることがあったので書いてみました。ちなみにこの記事は7月28日時点での展開をもとに8月2日の夜に書きました。それでも一部7月31日〜8月2日の展開も入っています。 何があったのかまずドラマ内の出来事をざっくりと時系列で整理します。 (承前)万太郎は小学校も出てないが,植物の知識の高さや,土佐の標本を自作していたことなどから東大植物学研究室への出入りを田邊教授に許されていた。 万太郎が面白そう