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【司法試験/予備試験】独学攻略法④~憲法を効果的に学習する

「学ぶって、楽しすぎる。」-弁護士の岩瀬雄飛です。

本noteでは学ぶことの面白さや学習のノウハウ等を発信するとともに、自分が学んだことの記録を発信しています。

今日のテーマは「憲法の勉強法(初学者)」。

前回までnoteでは、刑法、刑事訴訟法、民法の順に独学での勉強法を紹介した(前回の民法のnoteは以下参照。刑法、刑事訴訟法へも民法のnoteからアクセス可能)。次に学習するのは憲法か会社法になるが、今回は憲法の学習方法について提言したい。


(1)憲法の学習の難しさ

お勧めする各科目の学習順序については、前回の民法の回で詳細に記載したため割愛することにして、今回は憲法の学習の難しさを導入としたい。

①決定版の「テキスト」がない

憲法には決定版の「学習書」はある。いわゆる「芦部憲法」と言われる『憲法』(岩波書店・芦部信喜/高橋和之)である。

本書は網羅的かつ新しい論点も常にアップデートされており、また、憲法の本の中では易しく書かれているので相対的に読みやすい内容となっている(もっとも私としては縦書きなのがネックである)。

しかし、本書というよりは憲法の科目の特性によるところが大きいが、この本を読みこんで司法試験・予備試験で合格する十分な力を養うことは難しい。教養を身に着ける分にはこの上ない良書であるが、司法試験・予備試験のためのテキストとしての使用は難しいというのが私の所感である。

②「教わる」ことも難しい

私が憲法を得意になったのはロースクール2年目のときである。理由は明確で、その際の教授の教え方がうまかったことである。1年目のときの教授も憲法学者としては有名であるものの、教え方は正直あまりうまくなかった。

私は運よく「憲法に精通している」「教え方の上手な」教授に学べたために実力を伸ばせたものの、必ずしもこのような教授や講師に出会えるとは限らない。

また、憲法の答案をセンスで上手に書いている人も多い。そのため、合格者に憲法の答案の書き方や学習方法を聞いても具体的な方法が返ってこないことも少なくない。

(2)短答試験の学習

上記のとおり憲法の学習は難しいものの、他の科目同様、しっかりと学習方法が存在する。憲法の学習中によくある「のれんに腕押し」状態に陥ってしまい挫折することがないよう、どのように学習するかはっきりとイメージしておこう。まずは短答である。

憲法は「人権」と「統治」(※国会や予算等)の2つのパートから成り立っており、短答試験ではやや人権の方が多いものの、統治からも多く出題される。

①人権

まず、「人権」についてである。私のおすすめは『判例百選』(有斐閣)を使って学習することである。

人権の出題はほとんどが判例の内容を問うものである。そのため判例について要旨と解説をまとめた『判例百選』を読み込むことが重要となる。

なお、『判例百選』を読まず、いきなり択一や肢別を解くのはお勧めしない(予備試験の際、私はこれを省略したために点数が伸びなかった。司法試験では判例の知識を定着させたため、9割は正答できた)。憲法の択一は他の科目に比べてひっかけ問題が多いためである。

例えば、Aが正解である場合にA´の肢にひっかかったとする。その際、A´は間違いだと覚えたとしても、次はA⁺の肢にひっかかる。そのため、結局は『判例百選』を読んでAを覚えてしまうことが確実かつ近道なのである。

②統治

「統治」については短答試験では得点源となる重要なパートである。以下の手順で進めれば確実に点数が伸びる。
①六法で条文を読む

②択一六法を読む

③択一(or肢別)を解く

ここで重要なのは②である。私は予備試験では①→③を繰り返したが、統治でほとんど点数がとれなかった。③だけだとどうしても知識の定着が不十分になる。②を省略すると、人権を学習する際の『判例百選』に代わるものがなくなってしまうからである。

なお、統治は『判例百選』よりも情報量が多い『択一六法』(LEC)を使用することをお勧めする。

ここで補足しておくと、人権でも『択一六法』を使うという選択肢はないわけではない。この後紹介する論文の勉強でも『判例百選』は使用するため、(1)では短答と論文で同じ本を使用できるというメリットから『判例百選』をお勧めしたが、『判例百選』だと学習しにくいという人は人権でも『択一六法』を使用することでもよい(ただし、『択一六法』だけでは論文試験の学習には不十分であることには留意されたい)。

(3)論文試験の学習

次に論文であるが、上記のとおり憲法において司法試験・予備試験向きのテキストはないため、『判例百選』(有斐閣)で学習することをお勧めする。

ただし、この論文試験の学習としての『判例百選』の読み方は、短答試験の学習としての『判例百選』の読み方とはやや異なる。以下のnoteでも紹介しているが、近年、論文試験で「関連する判例」言及することが求められている。そのため、判例の論理展開や事実の評価、妥当する範囲を正確に理解することが必要になる。すなわち、短答では知識に重点が置かれているのに対し、論文では理解に重点が置かれているといえ、学習の仕方がやや異なるのである。

もっとも、憲法の答案に「型」があることはまぎれもない事実である。なお、勘違いしてほしくないが、「型」とは論証パターンのことではなく、違憲かどうかの審査は理論的にこの流れになるというものである(実際に判例もこの順番で検討している)。そのため、まずはこの「型」を覚え、『判例百選』においてその「型」を確認するとともに、「型」の中でどのような事実が考慮されているのかを検証し、試験本番では型と事実評価を自分で再現できるようにするのが憲法論文における効果的な学習となる。

肝心な「型」については、学習法ではなく、憲法の中身になるため、別のnoteで記載することにしたい。

終わりに

今回は憲法の学習法について記載したが、本当に学習が進んでいるのか不安になる(し、眠くもなる。)。そのため、1科目に集中する方が効率的ではあるものの、集中力維持の観点から、今まで学習してきた刑事系と民法の復習と並行するか、次に紹介する会社法と並行して学習することをお勧めする。

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