【司法試験/予備試験】独学攻略法①~最初に取り組むべき科目・取組み方
「学ぶって、楽しすぎる。」-弁護士の岩瀬雄飛です。
本noteでは学ぶことの面白さや学習のノウハウ等を発信するとともに、自分が学んだことの記録を発信しています。
今日のテーマは「司法試験/予備試験の独学を思い立ったらまず始めること」。
なお、前回noteで記載した反省を踏まえ、「どのように」だけではなく、「何から」「何を使って」「どのくらいの期間」等細かく記載することにした(前回noteは以下参照)。
①はじめにゴールを確認する
今回、私が提示する独学で司法試験に合格するロードマップは以下のとおりである。
1年後:予備試験 短答試験合格
2年後:予備試験 合格
3年後:司法試験 合格
すなわち、2024年6月1日から始めた場合、2027年7月に行われる司法試験に合格するスケジュールである。これは実際に私が未修者の状態からはじめて達成したロードマップであるため、十分再現性があるものであると思われる(ただし、私はロースクールに通いながらであるため、純粋な独学ではない)。
なお、「予備試験1年で合格」と宣伝する予備校も散見されるが、残念ながらこれは現実的ではない。世の中にはこれを達成できる人もいるのかもしれないが、多くの人はそのような天才ではないし、特に社会人は働きながら、子育てしながら等の学習になるため、学習に全ての時間やエネルギーを投資できるわけでもない。
しかし、勉強をはじめ、成果が確認できないとモチベーションの維持につながらないのも事実である。そのため、まずは高いハードルではあるものの実現可能な「1年後に予備試験合格」を目標にしよう。
②まずは刑法から取り組む
「1年後に予備試験合格」すると決めたら、そのモチベーションのまま、まずは刑法に取り組むことを強くお勧めする。予備試験の短答試験科目は、①憲法、②民法、③刑法、④民事訴訟法、⑤刑事訴訟法、⑥商法(会社法)、⑦行政法、⑧一般教養科目)あるが、この中で刑法は最も取り組みやすい(なお、一般教養科目は対策しなくてよい)。
その理由として、ニュース等である程度刑法に触れていることが挙げられる。例えば、「殺人罪」と聞いた際、「人を殺した罪」だということはすぐにイメージできるだろう。
刑法の「殺人罪」と同じレベルの基本用語として、憲法では「表現の自由」、民法では「対抗要件」が挙げられる。しかし、「殺人罪」と比べると「表現の自由」や「対抗要件」はなじみがないと思われる。
何も知らないスワヒリ語を学習するよりも、dogやpenを知っている英語の方がはるかに学習しやすい。同様に、刑法の方が憲法や民法よりも学習に取り組むハードルが低い。
また、刑法は学習量が少なくて済むことも最初に取り組むべき理由のひとつである。例えば、私が通っていたロースクール未修者コース1年目の前期のカリキュラムは憲法1.5コマ/週、民法4.5コマ/週、刑法1コマ/週であった。
多くの人が「なんとなく重要そう」という理由で憲法や民法から学習をはじめ、予備校もこれらの科目からスタートすることが多い。しかし、学習をスタートした段階で重要なことは、上述のとおり、「成果を確認してモチベーションを維持すること」である。そのためには1科目でもマスターしたという成功体験を早めにつくることが重要であろう。
ダイエットや筋トレの継続が難しい理由は、成果がすぐに確認できないことにある。抽象的な憲法や学習量が多い民法も、学習の成果が実感しにくい科目である。そのため、具体的かつ学習量が相対的に少ない刑法にまずは取り組むことをお勧めしたい。
③刑法を「何を使って」「どのように」「どれくらい」勉強すべきか
何を使って
刑法学習の基本戦略は「基本書を1章読む→その章の短答試験を解く→基本書を読み直す」である。
まず基本書を読む。私が使用していたのはロースクールが指定した「青本」と呼ばれる『刑法』(山口厚著/有斐閣)である。これは刑法の決定版であり、私も司法試験に合格するまで最後まで使用していた。ちなみに、著者の山口厚氏は東京大学名誉教授、最高裁判事等を歴任し、司法試験委員会委員長も務めた有名な方である。
私自身は刑法で使用したことはないが、すべての科目を同じシリーズで揃えるということであればLEGAL QUEST(有斐閣)をお勧めする。別途noteを作成予定であるが、会社法・民事訴訟法・刑事訴訟法は私もLEGAL QUESTを使っており、基本書はこれだけで十分と考えている。
基本書選びに時間を割きたくないということであれば、すべてLEGAL QUESTを使うことも合理性がある。なお、有斐閣のHPにおいてはLEGAL QUESTについて「法科大学院をめざす人に求められる水準」と紹介されているが、レベルは法科大学院で学ぶ内容と同等かそれ以上であり、司法試験合格には十分な教材である。
どのように
しかし、基本書をダラダラと読むわけではない。それは「読書」である。受験生が行うべきは「学習」である。「①各章ごとに読んで、内容を理解する→②短答試験を解く→③基本書を読み直す」を章ごとに繰り返すことで確固たる知識がつく。
①について、まずは読んで、内容を理解することである。最初の序章は後回しにして、「構成要件」の章から読むことをお勧めしたい。構成要件だけでも刑法学習の10分の1は終わったといっても過言ではないが、「青本」では40頁程度にまとまっているのも魅力である(私の手元にある「青本」は第2版であるため最新版では若干異なる可能性はある。)。
②について、短答試験のテキストはどこの出版社のものを使用しても大差はない。自分はWセミナーのものを使用していたが、他の出版社のものでも問題ないし、肢別(選択肢ごとにバラバラにしてあり〇×を回答するもの)でもOKである。
③について、多くの学習者がここを飛ばしてしまうが、知識を定着するためには必要なプロセスである。①の段階と違うのは、②を経ているため、「どのような点が短答試験で問われるのか」に意識しつつ読むことができる点にある。
これは「カクテルパーティ効果」を利用した学習になる。飲み会等のうるさい場であっても、隣のテーブルで自分の名前が話題に出ると気づくことができる現象である。①では意識していなかった部分(できなかった部分)が、③では意識できるようになり、より試験にフィットした読み方ができるようになる。
どれくらい
1日目に①と②を行い、2日目に③を行うといった進め方を、まずは1か月継続してほしい。その頃には勉強クセもついており、「刑法だけなら受かりそう」「他の科目も早く学習したい」と思えていることだろう。
他方で、途中で学習を止めてしまった場合は、独学ではなく予備校やロースクールを利用するか、諦めるかのどちらかになろう。しかし、ここまでの出費は刑法の基本書と短答試験のテキストのみであるから大きな出費ではない。
終わりに
多くの読者が司法試験・予備試験に興味を持ち、合格を勝ち取っていただけると幸いである。また、私自身、公認会計士(又はUSCPA)合格を目指す受験生であるから、同じ受験生として一緒に頑張りたい。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?