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無縁坂、小さな息子の手を引く母は、かつてアザミ嬢と呼ばれていた?~中島みゆきvsさだまさし~


途に倒れて だれかの名を
呼び続けたことが ありますか

中島みゆき '77「わかれうた」より抜粋

母がまだ若い頃 僕の手を引いて
この坂を上るたび いつも溜息をついた

グレープ '75「無縁坂」より抜粋


こっぴどく自分をフッた恋人に、なりふり構わず道端で泣き叫びながら追いすがる女性もいつしか母となり、幼い息子の手を握りしめ、坂の途中で息切れしつつ、「辛くても振り返らないのよ」と息子に微笑む。
そこはかつて自分が泣きながら倒れた道でもあった…


中島みゆきさんとさだまさしさんのヒット曲をマリアージュするとテイストを損なうことなく、むしろしっくり来るストーリーが出来る。

西日がうっすら差し込む仄暗い放課後の部室で、二つの歌詞を並べてそんな情景にうひゃひゃとほくそ笑んでいたのは18歳の私。

「しらけ鳥 飛んで行く 南の空へ~」
「からす なぜ鳴くの~ からすの勝手でしょ~」

こんな乾いたギャグで育った世代だけれど、むしろそのせいか、私たちにはこの対照的な二人の『湿気具合』が妙にハマった。

別れはいつもついて来る 幸せの後ろをついて来る
それが私のクセなのか いつも目覚めればひとり

中島みゆき '77「わかれうた」より

運がいいとか 悪いとか人は時々 口にするけど
そういうことって 確かにあると あなたを見てて そう思う

グレープ '75「無縁坂」より

「演歌」をフォークアレンジで歌うヒト『みゆき姐さん』
バイオリンが額縁の印象派、言の葉の職人『さだ画伯』

友人に例えるなら、みゆきさんは『夜中に電話をかけて来て「フラれたの」といきなり泣き出す』タイプで、
さださんは一晩寝かせたのち、『便箋3枚使って読ませて痛手を負った心の機微を伝える』タイプじゃない?

「どっちの友達がめんどくさいか」などという要らぬお世話なテーマで、部室常連組のメンバー二人とああだこうだと偉そうに語った。

今思えば、三人とも主語が「友達」で「自分」にならない辺りが青い。
恋人にすがって泣きわめくほどの情動が想像できないことは棚に上げてうんちくばかり垂れ合う。


宝くじを買うときは 当たるはずなどないと言いながら 買います
そのくせ誰かがかつて 一等賞を貰った店で 買うんです
はずれたときは 当たり前だと聞かれる前から笑ってみせます
当たり前だと こんなものさと思っていなけりゃ 泣けてきます

中島みゆき '81「あした天気になれ」より

「演者」としてみると、
みゆきさんは「一人芝居」
さださんは「朗読者」ってカンジがする。

ど直球で強烈なフレーズ炸裂 by みゆき
    VS
情景を細やかに描写してジワらせる by さだ

山の麓 煙はいて列車が走る
凩(こがらし)が 雑木林を転げ落ちて来る
銀色の毛布つけた田圃にぽつり
置き去られて 雪をかぶった案山子がひとり

さだまさし '77「案山子」より

一方で共通点、二人は『湿度』がよく似ている。
味噌と醤油で育った日本人ならたいてい感じる湿気っぽさ。
日なたじゃなくて日陰の湿った匂い。

うらみますうらみます
わたしやさしくなんかないもの
うらみます
いいやつだと思われなくていいもの

中島みゆき '81「うらみ・ます」より

海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷も みんな 逝ってしまいますか

さだまさし '81「防人の詩」より

似て非なる二人。
暗さ、陰鬱さでは勝負つかず。

北の龍と西の虎。

かつて、さださんご本人も「自分が嫉妬した人」でみゆきさんを上げていたことがあった。
感受性・表現力に関して「オレには到底マネできない」と語っていたが、みゆきさんからしたら「そっくりその言葉お返ししますわ~!」だと思う。

味噌と醤油を比べることはできないように。


タクシードライバー苦労人とみえて
あたしの泣き顔 見て見ぬふり
天気予報が 今夜もはずれた話と
野球の話ばかり 何度も 何度も繰り返す

中島みゆき '79「タクシードライバー」より

こんな小春日和の 穏やかな日は
あなたの優しさが 沁みてくる
明日嫁ぐ私に 苦労はしても
笑い話に時が変えるよ 心配いらないと笑った

さだまさし '78「秋桜」より


腰痛を癒すのに「針」にするか「お灸」にするか、
コワいんだけどどっちも効くよね~!

「何だかそんなカンジなんだよね~」と、
たかだか17、8の小娘たちはうなづき合ったのだ。

小生意気な盛り。


でも「あの頃」を思い起こすとき、そこに必ず彼らの歌があって、今もメロディを聞いただけでフレーズが一句間違わず思い出される。

そんな歌が書けるのだから、天才なのは間違いない。


※ちなみに
『湿気臭さ』の無い天才だと、松任谷由実(当時荒井由実)とサザンオールスターズということも当時、私たち軽音部の一部では一致しておりました(笑)

私が初めて買ったレコードは中三のとき
荒井由実の「ひこうき雲」でした。  



この記事はなせじょーじさんにケンカを売るかもしれない記事です。

みゆきさんとさだまさしさん、
正反対のタイプですが、どちらも天才だと思います!!(笑)

私の率直なコメント

僕にとっては、さだまさしさんと中島みゆきさんは、同じカテゴリーです! っていうか、ソックリだと思っていました(今も)😲

なせじょーじさん、   
「まさか⁉」なリコメント!

初期の歌詞の方がわかりやすいかなと思い、あえて初期の曲で紹介してみました。

皆様のご感想もぜひコメント欄でお聞かせくださいませ。


今日はこんなカンジで。
では また~

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