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だよね、「ドーナツ」ってやつは①

先日、この記事に出会った。

揚げたての手作りドーナツの、やわらかな甘さとあたたかさから伝わる、
お母様との幸せな時間。
「ドーナツ」にまつわるカミーノさんの思い出。私の涙腺も刺激された。

だよね、「ドーナツ」ってやつは、カミーノさん。
涙腺キュンな思い出、綴りたくなっちゃった、私も。

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①Krispy Kreme Doughnuts
私が暮らす国の代表的なドーナツチェーンの一つ。
以前暮らしていた街から少し離れたところに、店はあった。
パック詰めされた同店のドーナツは、グローサリーで簡単に手に入る。
それでも敢えて店まで車を走らせたものだった。(運転大キライなのに💦)
理由は。幼なかった家族達が、とても喜んだから。

店内は、ドーナツが作られていくのが目の前で見れるつくりになっていた。
私の家族は、その過程を見るのが大好きだった。
ドウが流れていくのに歓声を上げ、黄金色に揚げられた視界いっぱいの
ドーナツを小さな指で指さし、言葉が追い付かないまま感嘆をもらす。
大勢のドーナツよりも、そんな様子の家族を、私はいつも見ていた。

店内で出来立てドーナツを食べることができるようになっていたのに、
そこでドーナツを食べたことはなかった。
私の家族は皆、食物アレルギー持ち。食べることができなかったからだ。
自分の体に合わないものを避ける、本能的行動からなのだろう、
家族達からドーナツを食べたいと言われたことは、一度もなかった。

ドーナツショーを見せてもらったお礼に、私が好きなドーナツを買う。
Original GlazedとGlazed Blueberry Cakeを、1個ずつ。
車に戻ると、家族達から口々にねだられる。「食べてみて」と。
全身を舌にして、私は一人、出来立てドーナツをひとつ手にする。
そして、食感やどんな味か、その美味しさを話すのだ。

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ある日、同店でドーナツを買ったところ、大きめの袋を渡された。
「あの、2個いただくはずですが。お間違えでは?」と言うと
そっと、こういわれた。「皆さんで、楽しんでください。」

その夜、まだ残っていたドーナツを口にした。
美味しい。でも、何かが違う。
車中で食べる、あのドーナツと同じなのに。やはり違う。

厚意のドーナツを見つめて、思い当たった。
これまで私は、一人でドーナツを食べているのでなかったんだ。
皆で、その美味しさを楽しんでいたのだと。

Glazedされた生地の甘さを、いつもよりゆっくり、味わった。

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②Duck Donuts
ドーナツチェーンの一つ、”Duck Donuts”
ここも店内、キッチンがガラス張りになっていて、
自動製造機からドーナツができる過程がみえるようになっている。
店名にちなんで、アヒルグッズが至る所にあり、楽しい。
さらにもう一つの特徴は、会計をしてから、目の前でドーナツをデコレーションしてくれること。それも、溢れんばかりの量を載せてくれる。
当然、受け取りまで時間はかがるが、その価値はある。
自分が注文したドーナツが出来ていく過程までが、美味しいからだ。

ある日、店に行くと、
新人バイトとその教育係を務める店員のペアが接客していた。
私の前に、客二人。その後ろに私は並んだ。

一番目のお客さんの注文を、新人くんがたどたどしく取っていた。
新人くんは、かなり緊張している。
この客の注文が多かったため、何度も何度も聞き返しては、
やっとのことで全部のドーナツの注文を受け終えていた。

その後すぐ手を洗い、Topper(トッピングをつける作業)も務める。
教育係に教えてもらいながら、新人くんは必死でドーナツを飾る。
教育係は優しく辛抱強い口調であるのだが、
新人くんは、かわいそうなくらい心在らず。手元は、むちゃくちゃ。

その様子に一番目の客が苛立ってきたことを察し、教育係は少し離れ、
手際よく新しいフレーバーのコーヒーをその客にサービスした。
教育係がいない僅かな間、新人くんは文字通り、孤軍奮闘していた。
一番目の客が不満げな顔のまま、ドーナツを手に立ち去った後。
新人くんは泣きそうな顔で教育係に耳打ちして、店裏に行こうとした。

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そこに、二番目の客が声をかけた。
「あらっ、ねえ、〇〇くん。(新人くんの名前)
 あなたのおすすめ、どれなの?」
新人くんは、少し元気を取り戻し、
人気があるフレーバーの一つ、Maple Baconについて語り始めた。

このMaple Baconは、カリカリに焼いたベーコンをたっぷり、
メープルシロップベースのコーティングの上にかけたものだ。
生地の美味しさと、トッピングの甘じょっぱさが、たまらない。

二番目の客は新人くんのおすすめ話を聞いて頷き、こう言った。
「わかったわ、〇〇くん。
 あなたの黄金比で仕上げたMaple Baconを1ダース頂戴。」
新人くんは、はりきって会計とTopperをつとめた。
さっきよりもずっと早く12個のドーナツを仕上げ、二番目の客に渡す。
「ありがとう。がんばるのよ。
 皆さん~、おすすめはMaple Baconだって。」
箱を受け取り、チップ入れに紙幣を入れて、二番目の客は立ち去った。

相手の立場に立つ、優しさ。
自分が、そして相手がどんな立場であるかは関係ない。
瞬時に相手に向け、行動で表す優しさは、本物だ。

新人くんが飾ってくれた、ベーコンたっぷりのMaple Baconは、
とても美味しかった。

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