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思わず苦笑い 重箱の隅にある重要な世界

少し前のことになりますがある休日の朝、いつもよりか遅めの朝食をとりながら何気なくついてるテレビを眺めていました。出演者のつくり上げる空気感がもとても和やかで、テレビ番組をあまり見ない僕でも苦にならない。毎朝やっている番組なのでしょうね、NHKらしいというか、ガーガーうるさくない とてもいい感じの番組でした。

食事をしながらなので 番組は時々のチラ見程度でしたが、あるコーナーが始まった時、やっぱり職業柄ですかね 思わず見入ってしまいました。
それはといいますと「うちの子供が食事の度にとても落ち着きがなく、椅子の座面に立ち上がったり、足をバタつかせたり、食べ終わるのにもとても時間がかかり困っています。子供が落ち着いてちゃんと食事をしてくれる為の何か良い方法はありませんか?」という番組宛てに届いた視聴者から手紙にお答えをするというコーナーでした。

そのコーナーでは療法士の方が登場し、実際にそのお宅にお邪魔し処方したわけですが、その先生がスタジオでもその内容を説明していました。椅子の背もたれとお子さんの背中との間に隙間ができているから、その隙間にクッションを差し込み椅子と体を一体化させお子さんの体を安定させましょう!とか、フットレスト(足のせ)の位置が遠いのでお子さんの脚が宙ぶらりんで、座面が膝の裏側を圧迫し血流を悪くしているので、フットレスト(足のせ)の上にクッションを置き嵩上げすることで、足裏、踵がしっかりと着くようにしましょう!という提案でした。同じ相談の視聴者がもう一軒ありましたが、どちらのお宅も処方されたことを実行したことで、見事にお子様が落ち着いて食事をするようになりました!
めでたし!めでたし!という内容でした。

コロナによる在宅ワークの影響もあり、私たち日本人もついに椅子の大切さに気づく方が増えてることが実感できるようになってきた今日この頃、流石!NHK!とても良い企画を組んでくれているなぁと思い拝見していました。

トリップ トラップ 1972 🇳🇴

さて、ここからなんです。問題は。。。
このコーナーの終盤です。番組に相談し療法士の先生の提案により見事にお子さんが落ち着きを取り戻した二軒のお宅にテレビカメラが入りました。その瞬間、僕は思わずお茶を吹き出してしまいました。(すみません汚くて)な!なんと、どちらのお宅もお子さんが座っていたのはトリップトラップチェアではないですか。トリップトラップは今回相談されてような問題があらかじめ起きないように、座面の高さ、奥行、フットレスト(足のせ)の高さ全てお子様の体格や成長に合わせ調整を可能にした1972年発表の名品です。
こういった考え方のベビーチェアはそれまではなく、まさに世界初!まさに時代のエポックメイキングでした。

が、しかし…
これが日本のこの業界がつくっているマーケットの現状なんでしょうかね。
絶句しながら、申し訳ないやら,悔しいやら,恥ずかしいやら。。。流通を川に例えたなら河口、つまり流通最後の本当はとても大切な着地点で行われている「価値の伝達」と「価値の評価」の裸の現状を見てしまったようで、とても寂しい気持ちになりました。

いったい誰がどういうふうにこれを販売したのだろうか?

知識がない人が販売したのだろうか?
単なる説明不足に過ぎないのだろうか?

説明を受けたけどお客さんがそれを忘れてしまったのだろうか?

知ってはいるけど面倒に思い椅子の調整を怠っていただけなのだろうか?

似て非なるものではなくメディアでお馴染みの有名ブランド品の本物を販売したというプライドと達成感だけなのだろうか?
メディアでお馴染みの有名ブランド品を所有する喜びだけを買ったのだろうか?
ビックネームを利用したモノの売り買いの現場は未だ変わらずなのだろうか?

売った時、買った時が ゴールで、もしかして使い手は愛用品としての関係性をスタートさせていないのではないだろうか?

売る人も買う人も用途が伴う日用品なのにスタイリングでしかものを見ていないのではいだろうか?

作者ピーター•オプスヴィックは、これを見たらいったいどう思うだろうか?

やはりこの国の家具事情は室内装飾の域から未だ脱せてはいないのだろうか?

価値観は人それぞれだし、いちいちとやかく考えず、見ざる、言わざる、聞かざるに徹すれば良いことなのだろうか?
僕は正義感を振りかざしているだけで、人々からしたら大きなお世話なのだろうか?

これを見てお茶を吐き出すのは、僕だけなのだろうか?

いや、これはきっとやらせにちがいない!
いや、たまたま何かの偶然に違いない。(祈)

先程吹き出してしまったお茶のテーブルを拭きながら、色々と思考を巡らす驚きと苦笑いの僕がいました。

世の中全体からしたらミクロの世界かもしれないですけど、スモールデザインだって本当は大切なんですよ。実際今回はお子さんの健康にだって影響を及ぼしかねない。
先日アップロードした「味わい鍋」のエッセイの中でご紹介した話じゃないですけど、成熟した時代には、これまでの習慣からもう一歩も二歩も進んで能動的な価値通訳力と価値の評価力が必要で、こういったことこそ生活デザインの質向上に直結しているのではないかと思いました。

for Intelligent silent majority

UPLIGHT 2009 🇯🇵

現在くらし座では
私たち日本人の座姿勢の現状を考え
もう一歩踏み込んで
UPLIGHTをご提案しております📖🖋️

くらし座 大村正








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