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『ざ・総括。』自動車業界におけるBEV最新情報

しばらくBEVは停滞か?


BEV(バッテリー電気自動車)市場はどうなるだろうか…というテーマで座談会を行ったのは2カ月前だった。すでに販売失速の兆候はあったが、3月以降はBEVの販売が目立って鈍ってきた。しかし、英・ローモーションのように「電動車」の販売台数を調査している会社はPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)とBEVの合計を「EV販売台数」と称して発表するようになり、BEV不調を隠そうとしている。タイで中国製BEVが売れている件も「関税がゼロになった」ことを日本のメディアの多くは伝えていない。そこで今回の座談会は、いまの自動車業界におけるBEV最新情報を集めてみた。

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
通=自動車業界の事情通
F=某商社の商社マン
A=某外資系調査・コンサルティング会社で調査分析と市場予測を担当

日本の原発はどうなる?

エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) このところBEVの不調を隠そうとするような動きが多い。IEA(国際エネルギー機関)は2024年の「世界EV販売見通し」を1700万台と発表したが、その中でBEVは何台なのかを明確にしていない。英国の調査会社ローモーションは、2023年の販売推計を1450万台と発表したことは2カ月前の座談会で話が出たが、そのうちBEVは1030万台で残り420万台がPHEVだった。太平洋戦争中の日本の大本営発表のように、事実を覆い隠した発表と報道が目立つ。BEVを取り巻く事情が本当はどうなのかを語って欲しい。今回もゲストは、某外資系調査・コンサルティング会社で調査分析と市場予測を担当しているAさんと、この評価会議には過去に3度出席してもらった某総合商社の商社マンFさんのおふたりだ。で、ベテラン実験ドライバーTさんはいま仕事で日本を離れているので本日はお休み。
自動車業界の事情通(以下=通) そのIEAは2024年版の「グローバルEVアウトルック」という小冊子を発行した。ネットでだれでも入手できる。そこには「EV=BEV+PHEV」と書いてあるが、そのうちBEVが何台売れたのか、具体的な販売台数が抜けている。
某商社の商社マン(以下=F) 以前ローモーションはBEVとPHEVの内訳を発表していましたが、今年に入ってからは簡単にはわからないようにしてます。意図的なものを感じます。BEVだとかCO2低減というテーマの周辺で投資をしたり債券を買ったりして利益をあげてきたひとたちにとって、BEVの減速は困るわけです。
元部品メーカーのエンジニア(以下=部) ACEA(欧州自動車工業会)の統計発表だと、今年3月のEU(欧州連合)とEFTA(欧州自由貿易圏)と英国の合計でBEVは前年同月比11%減です。1〜3月では前年同期比3.5%増とプラスを保っていますが、4月の統計が出たらおそらく1〜4月で前年同期比マイナスではないでしょうか。その一方でPHEVは1〜3月累計で10.4%プラスです。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) ACEAは昨年秋以降、EU委員会とEU議会への反撃を強めている。4月末には「EUが目指すCO2削減目標を達成するにはBEV/PHEVのための充電スポットが少なくとも現在の8倍必要」「インフラ整備がBEV販売台数に追いついていない」と提言した。個人的にはEUが「カーボンニュートラル車以外は販売禁止」の開始年にしている2035年には新車乗用車の30%程度はBEVになると思っている。ただし、それによって電力事情がどうなるかは、また別の話だ。
某外資系調査・コンサルティング会社で調査分析と市場予測を担当(以下=A) 経産省(経済産業省)は今年度、ECV(外部充電車=BEVとPHEV)の充電設備に遠隔操作機能を入れる検討を始めました。ECVが普及すると、たとえば夏と冬の夕方から午後11時ごろまでは電力不足に陥る危険性が高まるからです。だれでもいつでもどこででも充電できる現状を放置したくないわけです。オフィス、店舗、工場、家庭に電力を供給する系統電源はとにかく守る。ECVへの充電は「電力が余っていたらOK」にしたいわけです。

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