スポーツなのか体育なのか?
アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。
難しい専門書等を読む前段階の学びや、指導者としての考え方を主に発信しています。
今回は、運動指導の現場において混同されがちな、「スポーツ」と「体育」という二つの概念についてお話します。
スポーツとは?
スポーツとは何か?という問いに一言で答えるのは非常に難しいですが、話を分かりやすくするためにとても簡単な表現をすると、「一定のルールに従って勝敗を競う身体運動」ということになるでしょう。
しかし勝敗を競うことが目的ではなく、「スポーツそのものを楽しむ」という場合もあるので、勝敗など関係のないスポーツと言うのも存在するでしょう。
勝敗のあるなしに関わらず、一定のルールが存在するということは間違いないと言えそうです。
そして、それがボールやその他ツールを使うものだろうと、陸上だろうと水上だろうと、どちらかと言えば非日常的な身体運動であると言えます。
私は陸上競技の短距離が専門ですが、普通に考えて現代社会においてあんなスピードで走る必要はありません。(危ないし……笑)
競泳ならそもそもプールが非日常ですし、テニスもゴルフも野球もサッカーもどんなスポーツも、日常的ではありません。
こう考えると、プロとしてスポーツに関わるとしても、趣味でスポーツを楽しむにしても、スポーツと言うのは非常に特殊な活動であると言えます。
体育とは?
体育とは、身体教育のことであり先述のスポーツとは明確に区分されます。
身体に関する教育を指す言葉として用いられますから、スポーツの様な特殊な状況に関することではなく、身体をどう扱うのかとか、身体はどうなっているのかとか、身体を強くするためにはどうしたらよいのかとか、そういったことを学ぶものです。
身体をフルに使うスポーツをする為にも、体育が大切です。
自分の身体が上手に扱える人というのが、アスリートとしてスポーツの場面で活躍できる人ですよね。
しかし、一般的にはアスリートの様なレベルで自分の身体を扱う必要はありませんし、日常生活において勝敗と言う概念は必要ありません。
体育は確かにスポーツへ繋がるものではありますが、必ずしも繋げねばならないのかと言えばそうではありません。
繋げたい人だけが繋げればいいのです。
体育嫌いの理由
このメディアを読んでいる人の多くは、体育の授業が好きだったという人が多いと思いますが、体育には苦手意識を持つ人は多いものです。
体育嫌いの理由は、スポーツと体育の混同が原因のひとつではないかと考えられています。
体育の授業で身体の使い方を教わった記憶より、みんなで色んなスポーツを体験したという記憶の方が強く残っているのではないでしょうか。
そして例えばバスケットボールはドリブルしながら走らないといけないとか、サッカーはキーパー以外手を使ってはいけないとか、野球は攻守に分かれるとか、そういったことを学んでいくわけですが、ボールやバットをどう扱うかよりも、自分の身体をそもそもどう扱うのかということの方が大切なのは、冷静に考えれば分かる話です。
もともとスポーツが得意な人は勝手に上達するでしょうが、苦手な人はそういった事が出来ないのですから、どんどん嫌いになっていくのも納得です。
しかも出来るとか出来ないとかは、例えば数学の授業なら黙っていたり答案用紙を隠したりしてしまえばバレませんが、体育は完全にバレるわけです。
語弊を恐れずに言えば晒し者になってしまうわけですね。
私は数学が苦手でしたが、テストで頓珍漢な回答をしているのが晒されたら数学の先生を呪うでしょうし、もっともっと嫌いになっていたことでしょう。
体育嫌いの人の気持ちを汲み取って
相手の気持ちになって指導をするというのは当たり前のことですが、もし体育嫌いの方の指導をすることになったら、スポーツと体育と言うのは異なる概念である点を、相手と共有しましょう。
例えば「運動不足を解消したいという理由でジムに入会したけれど、実は体育が苦手だった」という方には、ジムで行う身体運動には勝敗という概念は存在せず、他者と比較する必要もなく、自分なりに手順を踏んで成長していけばよいということを説明するとよいでしょう。
特に昨今ではパーソナルトレーニングというものが一般的になってきましたが、世間で思われているそれは「めっちゃ筋トレさせられるところ」「追い込まれるところ」というイメージがあるようです。
それはスポーツと体育を誤って混同している、専門家のフリをした素人による不適切な指導です。
体育嫌いの人がそんな指導を受けたら、また運動することが嫌いになるでしょうし、自己肯定感も低くなってしまいますから注意が必要です。
指導の目的が、スポーツなのか、体育(身体教育)なのかで、手段が異なりますから、指導者としては気を付けたいところですね。
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