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シーズンオフに追い込むその前に

いつも本メディアをご覧頂きありがとうございます。
相変わらず月イチペースの更新となっておりますが、今月も心を込めて書き綴っていきたいと思います。

さて、11月ということで私が専門にしている陸上競技のトラック&フィールドは概ねシーズンオフを迎える月でした。
一部の選手は11月中旬まで試合に出場しますが、試合数も少なくって来ますので多くの選手が10月をもってシーズンアウトするのがトラック&フィールドの特徴でもあります。

つまり多くの選手にとって11月はシーズンオフの序盤ということが言えます。
どの領域で競技をしているかにもよりますが、このシーズンオフは俗に言う「追い込む」という文化があります。
しかし多くの人が(それは選手のみならず指導者も含まれる)「追い込む」の意味合いを勘違いしているというのが私の見解。

恐らく昨シーズンオフにあたっても同じような記事は掲出しているのですが、1年も経つと私の考えも多少はブラッシュアップされているものなので、本年版ということでご参考までにご覧ください。

トレーニング計画を立案するにあたって最も大切なことは現状の把握です。
現在地が分からないのに地図を渡されても役に立ちませんよね。
陸上選手はその現状把握というのは比較的分かりやすく、結局今シーズンはどんな記録だったのかということを冷静に省みること。

スポーツにおいては結果が全てです。
もちろんその努力の過程が何よりも大切だということもありますが、望んだ結果に繋がらない努力など虚しいだけですからね。
ですから、結果に焦点を当ててみましょう。

今シーズンの結果が望んだものであった人であっても、必ずそこから課題というのが見えてくるはず。
その課題に対して立案するのがトレーニング計画です。

例えば短距離選手の場合で言えば、今年振るわなかったとしたらそれは少々ファジーな言い方をすれば「走るのが遅い」ということ。
「走るのが遅い」のであれば、それは何故かということを紐解いていかなければなりません。

「走るのが遅い」ということは「スピードが出ていない」ということですね。
「スピードが出ていない」原因は色々考えられます。
スムースに加速することが出来ていないのか、そもそもスピードを高める練習ができていなかったのか、いわゆる筋の弾力性が低下していたのか、何かイメージが悪かったのか、精神的なことや競技以外のところに問題があったのか……これは人それぞれです。

しかし「スピードが出ていない」という事実は不変です。だから「走るのが遅い」。これは認めなければなりません。

では速く走れるようにトレーニングしないといけません。
これは当たり前のことです。

なのに、なのにですよ?
「今シーズン振るわなかったので今季はしっかり追い込みます」
といって、300mとかそういう長い距離を走って「追い込む」ことをする人があまりにも多いのです。

全ては目的次第ですから300mという距離を走る練習を頭ごなしに否定しているわけではありません。
300mを走るのであればどういう意識で走るのか、どういう走り方で走るのか、何の為の300mという距離なのかということが明らかにされていなければなりません。

多くの人は言います。
「冬季(シーズンオフ)とはそういうものだ」と。

これを思考停止と呼びます。

走るのが遅いんですよね?
短距離選手ですよね?
300mって長いですよね?
スピード出せますか?
出せる選手なら速く走れてますよね?
速く走れていないんですよね?
そんなことしてる場合ですか?

そもそも身体の状態はどうですか?
走るにふさわしい筋の状態ですか?
動きは大丈夫ですか?
イメージは大丈夫ですか?
スピードを出す方法は分かっていますか?
適切に加速できますか?

その練習であなたの課題は克服できますか?

多くの人はそれでも言います。
「冬季(シーズンオフ)とはそういうものだ」と。

それなら自由におやりなさい。
ってことですね。

これは選手の功績でしかないのですが、昨シーズンオフに私を訪ねて下さった選手で、定期的な指導が出来た選手は全員とは言いませんが概ね7割方ベストタイムを叩き出されました。
しかも全員社会人ですから、お仕事がありながらの競技生活。
本当に素晴らしいことで頭が下がります。
(もちろんまだまだ高みを目指してやっていくで!)

何より素晴らしいのは、少々辛辣に聞こえたかもしれない上記の様な投げかけを真摯に受け止め、取り組みの方向性を工夫されたことです。
一部オンラインで学生選手にもアドバイスをしましたが、チームを巻き込んでシーズンオフのプログラムを「冬季(シーズンオフ)とはそういうものだ」というものから「今年はこうやっていこう」と大胆に舵を切られました。
結果は大学4年生にして高校ぶりのベスト更新。
チームメイトの女子選手も同様にベストを更新され、全日本インカレの標準を突破されました。

考え方が変われば結果は変わります。
逆に言えば「冬季(シーズンオフ)とはそういうものだ」みたいな思考停止のままでは何をやっても上手くいかない可能性は高いものです。

具体的にどんな練習をするのがよいのかという点については、是非過去の記事をご覧ください。
一部有料ですが机上の空論は一切なく、私が実際に選手に対して指導している内容が記載されています。

既にシーズンオフのトレーニングを積んでおられるチームや選手の方がほとんどだと思いますが、まだ12月の末なので方向転換は間に合います。
思考停止のプログラミングに陥っているかもしれないという方は、思い切った舵取りを!

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