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精神に障害がある人の配偶者・パートナーの支援を考える会代表、家族の立場。支援者として、…

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精神に障害がある人の配偶者・パートナーの支援を考える会代表、家族の立場。支援者として、作業療法士経験20年越え。特定機能病院でキャリアをスタートし教育職を経て、現在精神科病院で疾患別リハビリテーションの業務に従事。家族と支援者、2つの立場から発信します。

マガジン

  • 精神科病院における疾患別リハビリテーションの実践方法

    令和2年度の診療報酬改定で、精神科病院においても疾患別リハビリテーションの算定ができるようになりました。一方で、精神科病院で働く「からだのリハビリ」の専門家はまだまだ少数です。方法論も確立しているとは言えません。筆者持つノウハウを、不定期で更新していきます。

最近の記事

精神科病院における「からだのリハビリ」で押さえておくべき血液検査所見

 精神科病院では、一般病院等に比べ身体所見の精査はどうしても薄くなりがちです。そんな中でも臨床検査の所見は、対象となる人の全身状態を知る1つの手掛かりとなります。  理学療法士や作業療法士には、検査所見を読むのがあまり得意ではないという人が多くいます。でも、うまく活用すれば、臨床上とても役に立ちます。たくさんの検査値を完璧に覚える必要はありません。たいてい、正常値域は結果の脇に併記してあります。定期的にチェックしていれば自然と覚えられるので、意識して押さえておけると良いです。

    • 統合失調症の”症状”と運動器リハビリテーション

       統合失調症は、大きく分けて「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つの症状が現れます。本稿では、症状と運動器リハビリテーションの関係について整理していきます。 陽性症状と運動器リハビリテーション1.幻覚や妄想の受傷機転への影響  統合失調症では、「妄想」「幻覚」「思考障害」などの陽性症状が認められることがあります。  患者さんとお話をしていると、「FBIに監視されている」とか、「命を狙われている」などの被害妄想に基づくであろう訴えをよく耳にします。  周りに誰もいな

      • 統合失調症の”経過”と運動器リハビリテーション

         精神科病院における疾患別リハビリテーションの処方では、統合失調症の患者さんに対する運動器リハビリテーションが比較的多くを占めます。  精神科病院は、歩行などの移動能力やトイレ、お風呂などの身辺動作が自立していることを想定した環境設定がされていることがほとんどです。廊下やトイレ、お風呂に手すりが設置されていない病棟をよく見かけます。  一方で、近年は入院患者さんの高齢化が進んできており、臨床現場では加齢性変化に伴う関節疾患や筋力低下によって、転倒事故が発生する頻度が増えている

        • 精神科病院における運動器リハビリテーション

           精神科病院では、リハビリテーションの一環として精神科作業療法が実施されています。一方で精神科作業療法の対象者は、処方期間が3年を越える人が最も多く、次いで10年以上となっており、平均年齢では60歳代が最も多く、次いで50歳代となっています(一般社団法人 日本作業療法士協会 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに寄与する作業療法のあり方 検討委員会報告書)。  長い入院生活の中で精神科作業療法による支援が行われていますが、転倒による骨折などの急性発症した運動器疾患や、加齢

        精神科病院における「からだのリハビリ」で押さえておくべき血液検査所見

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        • 精神科病院における疾患別リハビリテーションの実践方法
          7本

        記事

          精神科病院で働く理学療法士や作業療法士が抑えておくべき精神機能の評価 ~試験に出ないけれど臨床で活用するGAF~

           令和2年度の診療報酬改定で、精神科病院においても疾患別リハビリテーションの算定ができるようになりました。精神疾患を持っている人に対する「からだのリハビリ」に診療報酬がつくようになったのです。  一方で、「からだのリハビリ」の専門家である理学療法士や、一部の作業療法士の中には、精神機能の評価があまり得意でないという人もいます。  本記事では、最低限抑えておくべき精神機能の評価について記述します。 1.精神科病院で働く理学療法士や作業療法士  令和4年医療施設(動態)調査に

          精神科病院で働く理学療法士や作業療法士が抑えておくべき精神機能の評価 ~試験に出ないけれど臨床で活用するGAF~

          精神科病院での「からだのリハビリ」で期待される効果

           私は精神疾患を持つ妻と生活をしている家族の立場ですが、2021年の春先に経験した入院で、精神科病院で身体合併症へのケアが十分に機能していないことを強く実感しました。  そこで一念発起、作業療法士の国家資格を活かして、2023年の春から精神科病院で身体合併症に対するリハビリテーションに従事することにしました。  本記事では、新しい部署の立ち上げに際して、他職種に行ったプレゼンテーションの内容を紹介していきます。 1.「からだのリハビリ」に期待される効果  精神科病院で

          精神科病院での「からだのリハビリ」で期待される効果

          精神科病院で生じた身体合併症に対して、家族が感じる思い

           私は精神疾患を抱えた妻と一緒に生活をしています。妻は時々調子を崩し、入院が必要になることもあります。コロナ禍の2021年春、3か月間の入院を経験しました。精神症状に対しては手厚い支援を受け、無事に退院することができたのですが、入院中に生じた肩の痛みについてはフォローが十分にされていませんでした。  精神科病院では、近年、身体合併症を抱える患者さんが増えてきており、取り組みが迫られています。しかし実際の治療現場では、身体疾患に対しては躊躇してしまう傾向があるようです。  

          精神科病院で生じた身体合併症に対して、家族が感じる思い