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がんばれ、おたんこナース

「おはようございます!」
今朝の私、少々張り切っていたのかもしない。

午前8時45分。京都から滋賀県に車を飛ばしてなんとか予定時刻に到着。
目指す内科クリニックまでは小1時間の距離。途中、事故渋滞にも巻き込まれ、時間がかかってヤキモキした。いつも運転中にYou Tube を聴くのだけど、今朝はそんな心境になれない。なんてったって、10年以上ぶりにナース服を着るのだ。病院で仕事をしていたことが昔すぎて正確な年数も分からない。とにかく急に降ってきたお仕事だった。大学の先輩が滋賀の町で開業している。その医院がナース不足で、急遽私に声がかかった。大学では共に自転車部、寝食をともにして日本内外を一緒にツーリングした先輩の頼みだ。今回、人手不足で困っているという話を私はスルーできなかった。突然決まった仕事、当然不安の塊で乗り込んだ朝だった。

50mくらい離れた駐車場に車を停めて、医院に向かった。
そして出入り口を探した。医院の自動ドア前に来たが扉は閉じたまま。
中のカーテンも閉まっているし、まだドアの電源も入っていないらしい。
その隣にあるインターフォンを押すが、無反応。
自動扉のガラスに大きな貼り紙があった。
『発熱の方はインターフォンを押すか、こちらに電話をください』
職員が使うものではない、そらそうか。

医院は先代の自宅と併設されている。
そういえば自転車部で琵琶湖1周した時に、この家に総勢10人ほどの部員を泊めてもらったなあ。今立っているこの場所で、みんなでガヤガヤ集合写真を撮ったことを思い出した。

と、そんなノスタルジックをしている場合ではない。とりあえず「来ました!」をアピールしなければ。9時までにナース服に着替えて、ナースになる必要がある。

そういえば先輩が手書きの地図を写メして、メールに添付してきた。
(先輩はLINEなんぞ、やるような人ではない)
その地図に「ここから入って」と書いてたことを思い出して、急いでメールを開ける。お、あったあった、あの自動ドアではなく、横に職員用の扉があった。
というか、ここはまさに昔、先輩家族が住んでいた家の玄関。門をくぐり、インターフォンを探したが見当たらない。しょうがなく「ただいまー」という雰囲気でいきなり玄関ドアを開けてみた。ガチャ。。閉まっている。ガチャ、ガチャ。だめだ。ここでもないのか?門を出て周囲を見渡す。
職員らしき人が出勤して来る様子もない。

もう9時直前。これはだめだと思って、先輩に電話をした。
プルルル・・プルルル・・10回ほどコールした時、ついに出た!

私「おはようございます!」

「あ、おはよう!」と先輩の声。
後ろで何かゴーゴー言っている。そうか、近所に住む先輩は自転車で必死にこっちに向かってきてるんだ。結構、細かく慎重な性格だったけど、朝は弱いタイプだったかな。そんなことを思ったか、思ってなかったか。

私「どこから入ればいいですか?」
先輩「え?あ。今日、休診なんだけど。明日やったよな?」
私「……」(想像してください、私の顔)
先輩「今、琵琶湖の横をランニングしてるんやけど」
私「あ、風の音…」

急な話過ぎて、なんの勉強や準備もしてなかった。
そして「もうナースに戻ることはない」とか公言したものの、やっぱり求められて自分が活かせる場所があるのは嬉しかったのかもしれない。
はっきり言って、張り切って来た。

前のめりな私を完全証明できる出来事となった。
いや、前日に間違えて行くような前のめりにはなりたくない。
前のめりとは、積極的にすすんで行動する、そこでありたいのに。もう。

また小1時間、今度は自宅へ車を走らせながら考えた。
そしてXにこの状況と行き場のない切なさをつぶやいた。

「おたんこナース」は小生のことです。(懐かしい〜と言ってくれた@kao ngmさん(永見薫さん)に救われる)でもそれを認めた瞬間、次は「おたんこライター」へ向かうのではないかと急に不安が高まってきた。ドラマのように笑いが取れたら面白いが、こんな人と仕事したいと思うか?となる。自分でも「この鈍くささ」と言えば可愛くアピールしてるかのように感じるけど、「肝心なことが抜け落ちている自分」が心底嫌になる。

そこへ「これ書こう!笑」とコメントしてくれた@osiris76694340さん。いつも日常を素直に素敵に書くさおりすさん。一瞬「そんな〜」と思ったけれど、そうか、こういうのがトピックになるのか、少しキランとなる。

「しおりさんのナース日誌読みたいわぁ」とコメントくれた@ayacolour さん。心から「こんな失敗、世に出したらあかんやつです」と思って返信。ナースとして世間に迷惑かけるかもしれない人物、嫌でしょ泣、と思った。でも、私の日常は、みんなの非日常であるかもしれないし、これもいいトピックが見つかれば、ありなのかもしれないと感じる。あやさん、ありがと!

ガイド、ライター、ナースとか、何でも屋みたいになりつつあるのが心配だけど。
日常にころがる話から書いてみようか。気を楽にして。
「よろしく、よろしくね」(VIVANTのドラム風)

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