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アレック・ボールドウィン、過失致死罪で起訴される

2021年10月21日、米俳優アレック・ボールドウィンが出演する映画「Rust」の撮影中に小道具の銃から誤って発射し、撮影監督ハリーナ・ハッチンズさんが亡くなり、ジョエル・ソウザ監督が負傷しました。

この事故は、今も当時も謎が多く、報道を混乱させ、そのため多くの人に正確な情報が伝わっていない可能性があります。

そんな状態のまま1年後、ボールドウィン氏は遺族側と和解に至ったのですが、その後もすんなり解決とはいなかったようです。時事通信の記事によれば、ボールドウィン氏はこの事故で今年(2024年)1月19日、過失致死罪で起訴されたとのことです。


◆今も残る3つの謎

この事故には3つの謎があります。

最初の謎は、果たして撮影現場に実弾があったのか、それともなかったのか? ということです。

アメリカでは実銃での撮影は考えられますが、実弾は撮影現場に持ち込んではならないという安全ガイドラインがあります。つまり、映画撮影の現場に実弾がある可能性は(アメリカと言えど)ないはずなのです。

万が一実弾が持ち込まれたとしても、映画撮影で使われる空砲は特別に設計されており、実弾とは見た目が異なります。プロのスタッフが空砲と実弾を混同することは考えにくいです。

◆では空砲で事故が起きたのか?

次の謎は、もし実弾でないとしたら、なぜ空砲で事故が起きたのかということです。

じつは過去にも実銃と空砲による事故が発生しており、その危険性は広く知られています。

例えば、1984年の『カバー・アップ』の事故では銃口から高温ガスが噴出して、空砲でロシアンルーレット遊びをしていた俳優ジョン=エリック・ヘキサムが死亡しました。空砲だからと言って、銃口から何も出てこないわけではないのです。

◆ブランドン・リーの事故を知らない世代が管理責任者だった

1993年の『クロウ/飛翔伝説』の事故では俳優ブランドン・リーが、噴射ガスのエネルギーで飛ばされた空砲のカケラに当たり亡くなりました。

ブランドン・リーは大スターのブルース・リーの長男であり、この悲劇が世界に与えたショックは大きいものがありました。

これらの事故により、映画撮影現場の安全対策が強化され、ガイドラインが策定されました。

◆映画テレビ製作者連盟ガイドラインとは

そのガイドラインの概要は以下の通りです。

・認定資格者が常に立ち会う
・撮影前後に銃器をチェック
・銃器は毎日メンテする
・使用時以外は、小道具係が安全に保管
・装填した銃を人に向けない
・空砲を撃つときは、近くにいる人全員が防護服を着用
・カメラに向け発射する場合は防弾ガラスを立てる
・俳優に武器を渡せるのは認定資格者かその監督下にある人だけ

今回の事故ではこの一部が守られていない可能性があります。

また、映画業界の若手スタッフには昔の事故の教訓が伝えられていなかった可能性も考えられます。

たとえば本作の銃器管理責任者ハンナ・グティエレス・リードは経験2作目の24歳女性でした。

◆事故が頻発していた撮影現場

最後の謎は、同じ撮影現場で、過去に小道具の銃が2回も誤射事故を起こしていたというものです。

これに呆れた複数のスタッフが、コロナ対策および銃の検査不備を理由に、抗議して職場を離れています。

低予算映画だったのがその一因ともいわれますが、総じて危機管理が甘かった可能性が浮かび上がります。

◆まとめ

この事故の調査と分析を通じて思いましたが、映画業界の一部で過去の教訓が忘れられ、危機管理が不十分になっていた事は間違いないと思います。

だからこそ、再発防止策を緊急に検討すべきだと、私は事件当時もメディアで指摘しました。特に安全ガイドラインの徹底、経験豊富な銃器専門家の立ち会いが重要です。

なお、事件から1年後にボールドウィン氏と遺族が和解した件についての解説は、noteでも当時書きました。興味のある方はご覧ください。

アレック・ボールドウィン、銃誤射事故で遺族と和解
https://note.com/maedayuichi/n/n54bc7b6c956f

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