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シウマイ弁当的読書

崎陽軒のシウマイ弁当が好きだ。
どこのお店のものもまんべんなく、という訳ではないのだけれど。時間がないなかでお弁当をひとつ選ばなきゃいけないときには、決まってシウマイ弁当を選んでしまう。
この弁当の良さは、いろんなものがギュッと詰まっていることだ。メインのシウマイ、付け合わせのタケノコ、デザートのあんずまでハズレの要素がない。私にとって難をひとつあげるならば、米の量が多すぎる、くらいだろうか。

私は「シウマイ弁当的な読書」と名付けているものがある。それはアンソロジーを読むことだ。
アンソロジーとは、異なる作者による詩文などを集めたものをいう。
アンソロジーが好きな理由には、いくつかある。「それは、邪道じゃない?」と眉をひそめられてしまいそうだけれど、一番の理由は「いろいろな作家を知ることができる」から。
私は、わりと本を読んで生きてきた、と思っていたけれど、そんなことは全くなかった。井の中の蛙だったんだと、この一年くらいで深く考えるようになった。
私は、特定の小説やエッセイばかりを繰り返して読んでいただけだった。そのため、あんまりいろいろな作家さんの作品を読んでいないのだった。そんな私にぴったりなのがアンソロジーだった。あるひとつのテーマをもとに、さまざまな切り口の文章が収められている。短編小説やエッセイが主なので、読み飽きることもない。「この作家さん、めちゃくちゃおもしろい!」といった、新たな出会いもたくさんある。

いま、一番気に入っているアンソロジーは、「〆切本」。
タイトルがもう、すばらしい。
〆切に向かい、死にものぐるいになる文豪と呼ばれる人たちや、漫画家たち。
すばらしい! と絶賛される作品を描き残している人たちの、〆切と繰り広げる凄まじい戦い。
かなり切迫した状況のものから、そんな逃げ方アリですか? と、思わず笑ってしまうものまで。〆切に対して作家自身があらゆる角度から向き合った内容がギッシリだ。1ページ目から順番に読まなくても、特に問題はない。
作家にとって、〆切は命よりも大事だと聞いたことがある。実際に、小説を書いて何かに応募してみよう! と思っていると、〆切ばかりが気になってソワソワと落ち着かなくなる。
だけど、この「〆切本」というアンソロジーを読むと、ふつふつと力が沸いてくる。
こんな、世界的な文豪ですら、〆切にヤキモキしているんだから。もっともっと、私はやれるはずだ! と。
美味しいシウマイ弁当を食べた後のように、しっかりと心を満たし、よぉし! 午後も頑張って書くぞー! と気合の入るアンソロジーだ。ただ、あらゆる〆切に向けてのアプローチにお腹いっぱいになって、「なぁんだ。〆切までまだまだあるし、ちょっとお昼しよーっと」と、ならないようにだけ注意したい。

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