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あのひとことを、言えるようになりたい。

「変更するつもりありませんので、失礼します」
職場に毎日かかってくる、営業の電話。わたしはあまり、うまく対応できずにいる。

一応断るための言い回しを考えてはいるものの、仕事に集中していると、頭の切り替えができなくて、とっさに対応できない。

「最新のWi-Fiについて、ご紹介させていただきたく……」などと言われると「最新のWi-Fiってどういうことだろう? 今使ってるWi-Fiと何か技術的に違うのかな?」と思うけれど、多分料金プランの変更の話で、技術の面での「最新」ではないのだろう。時間があればじっくり質問してみたかったけれど「紹介していただかなくても結構です」といって、電話を切ってしまった。

「営業のお電話はお断りしていますので」と言って、電話を切ろうとしても「営業の電話じゃ、ありません!」と切り返してこられる。「じゃあ何の電話ですか?」と聞いたら「ご提案です」と。提案だけ聞いたら、ふーん、じゃあ失礼しますと電話を切って良いのだろうか? そこから「営業」の話にきりかわるのだろうか? 側で見ていた社長にくすくすと笑われてしまうような、滑稽なやり取りをしてしまう。

電話のやりとりで、やたらとエネルギーを使ってしまい、グッタリする。こんなとき、「お母さんなら、なんて言うかな?」と思う。

私の母は、営業の人への断り方がとても上手だった。新聞購読の断り方は「夫が会社で、おたくの新聞読んでてねぇ。家では違うのを読むからって。ごめんなさいね」と、やんわり追い返していた。新興宗教への勧誘も「夫の実家がお寺さんで、信心していますので。そちらの教えは、また他の人に話してあげてください」などと言って断わっていた。
父は勤め先で、確かに新聞を読む日もあったし、お寺に勤めている親族もいた。かなり遠縁だったけれど。

「向こうも仕事やから、必死やと思うけどね。いらんもんは、いらんやろ。でも、『そんなん、いるか!』って、頭ごなしに断られたら嫌な気持ちになるやろうし。断るにしても、言い方があるやろ」
母の実家は商売をしていて、子どものころからお店の手伝いを毎日していた。そこで、たくさん怒られたり、断られたりして「自分ならどんな風に言うか」を考えたのだという。

「子どもやからって、ばかにされたりもしたけどな。でも『この人には、なんて言うたらいいかな?』って考えながらやってたわ」と、楽しそうに思い出していた。

営業の電話は、正直言ってちょっと迷惑だなぁと思う。いまどき電話で営業して契約につながることって少ないんじゃないだろうか。だけど、電話口の人もそれが仕事なのだろうし、一件でもアポが取れれば、という感じなのだろう。
私はもう少し、母を見習ってうまくあしらえるようなりたい。少なくとも、電話を切ったあとにグッタリしない程度には。

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