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波を読む力を身につけたい

先日、何気なくテレビをつけたらサーフィンの世界大会が放送されていた。

その日は海の日だったし、この日に合わせて放送しているんだろうなと思い、テレビ画面をぼんやりと見ていた。

わたしはこれまで海の近くに住んできたものの、サーフィンをやってみようと思ったことはない。ちらっとくらいはやってみたい気もあったけれど、とにかく運動神経が悪い。泳ぐのは好きなので、何もサーフィンをやらなくっても良くて、シュノーケルをつけて、ただ海に浮かんでいるだけでもいいかなというのが本音だった。

周囲には「サーフィン楽しい」という人も少し入るけれど「じゃあ、一緒にやってみましょう」とはならなかった。また、海辺に行って実際にサーフィンをしているところを見学してみよう、ということもなかった。

「サーフィン=波に乗る」という安易な公式だけがわたしのなかにあった。


テレビで放送されていたサーフィンの世界大会は2019年の5月にインドネシア・バリで開催されていたWCT2019の第3戦「Corona Bali Protected」という試合。試合結果としては日本人の五十嵐カノア選手が優勝を果たしていた。

波の動きを見ているだけでも気持ちよかったので、サーフィンの大会をずっとテレビで流していた。もっともサーフィン自体についてはどのような基準で採点されているのかも知らないので、「うわーすごい」「すごいすごいすごい」というくらいしか言葉は出てこないのだけれど。

ただ、ずっと見ていると、わたしがこれまで考えていた「サーフィン=波に乗る」というのはちょっと違うなと感じるところがあった。もちろん、波に乗るスポーツなのだけれど、まず波の動きを読み取ることが重要なポイントのように思えた。

いい波に乗ると、得点が高くなるのだけれど、次に起こる波がいい波かどうかを瞬時に判断しなくちゃいけない。

ひとつの波には一人の選手しかチャレンジできないので、どの波に乗るかは選ばなくちゃいけない。また制限時間もあってその時間内に「良い波」がきてくれないと、どんなに力のある選手でも波に乗ることすらできない。

世界トップレベルのサーファーの技だから、本当に軽々と波の上で動き回っているように見えた。けれど、波が起こっている先端にいないと、波は生じたらすぐに壊れていってしまうので、「波に乗る」ということすらできない。波頭というか、波が起こり始める場所にサーフボードがないと、波に飲み込まれてしまって体勢が崩れてしまう。

競技としてのサーフィンは、単純に波の上にいる時間が長ければ勝ち、というような単純なルールではなさそうだった。「チューブ」と呼ばれている筒状の横に長く続く波の中にすいーっと入り込んでおこなう技は、サーフィンをあまり知らないわたしでも聞いたことがある。けれど、この技をすれば最高得点かというと、そうでもないみたい。得点のつけ方は、最後まで見ても全然わからなかった。

なんでもいいから波に乗る、というのではなくて、「乗る波を選ぶ力」が重要なんだと知ることができた。永遠につづく波は存在しない。波は作られたそばから、消えていくものだ。趣味としてのサーフィンなら、何回波に乗っても構わないだろうけれど、試合となると波に乗れるチャンスは限られている。

「波に乗る」という言葉は、サーフィンだけで使われる言葉ではない。

広辞苑 第七版には以下のように説明されている。

波に乗る  周囲の動きや自分の勢いを利用して行動する。勢いに乗る。

勢いに乗って行動するときに、その勢いはどんなものか、すぐに体勢が崩れてしまう小さな波じゃないか。波の勢いが強すぎると飲み込まれてしまってそこで立つことすらできないなど、「波」そのものを見極める力を身につけることが大切なんだなと強く感じた。

まあでも、こむずかしいことは抜きにして、サーフィンの試合は見ていて楽しかった。涼しげだし、夏におすすめです。



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