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ねこ専用はんてん

毎年、冬になると取り合いになって結局人間があきらめる。

「うちでは、ねこ様に逆らうことはできない……。ねこは正義であり、ねこが法律である。寒くても、耐えなければならない」

こういった会話が夫とわたしの間で何度も交わされていた。

わが家では、冬になると「はんてん」を愛用している。冬の必須アイテムとして欠かせない。はんてんさえあれば、暖房がなくても温かい。起きながらにして布団の中にいるような安心感。子どものころから愛用しているが、もうずっと手放せない。

夫は、わたしと結婚してから「今の時代にもはんてんを着て暖を取っている人がいるなんて……」と、はじめのうちは笑っていたけれど、一度着たらもうトリコだった。

近所にふとん屋さんがあって、手作りはんてんが売っていたことも、トリコになる一因だったように思う。もっとも、寒冷地域だとはんてん程度では暖を取れないだろうから、温暖湿潤気候にすんでいる恩恵だろうか。

しかし、夫とわたしのそれぞれがはんてんを着用しているのだけれど、ひとつ問題があった。それは、冒頭にも書いた通りねこの存在である。

ねこは暖かいものには目敏くて、ちょっと外出するからと脱いだはんてんの上にさっと移動し、わが物顔で陣取っている。そして、うっとりとした顔つきで毛づくろいをはじめる。

あぁ……。寒い。はんてん着たい……と震えるけれど、ねこをどかすわけにはいかない。ねこ様がその場所を気に入っているのならば、差し出すのが人間の役目である。

ただ、あまりにも目ざとくはんてんの上でくつろぎ始めるので、「これはねこのために一枚はんてんを買ってあげたほうが、みんなが納得するんじゃない?」という話になっていた。

買ってあげよう、買ってあげようといいながら二、三年経過してしまったけれど、今年ようやく買ってあげることができた。

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大満足の寝心地。ふわふわの久留米はんてん。

お腹に顔をうずめても、この時ばかりは怒られない。

もっとも、ねこ自身がはんてんを持ち歩けないため、わたしか夫が脱ぎ捨てたはんてんの上でくつろぐこともある。君のはんてんはソファの上にあるやろ? といっても素知らぬ顔だ。

ねこがお腹を見せて、ぷーすか寝息を立てながら気持ちよさそうにしてくれている姿を見るたびに、はんてんを買ってよかったなと心から思う。

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