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心の底から落ち着く場所

時間も距離も、離れて暮らしていると、実家はもう私にとって、心の底から落ち着ける場所じゃないんだな、と帰省するたびに感じます。

大学生のころから一人暮らしをしているので、親元を離れて暮らしてから20年近くになります。(途中何年か、病気になり実家に戻ったりもしていますが)

けれど、大学生のころや、就職して働いていたころは、実家に帰ると「落ち着くなあ」と思っていました。高校生の時に暮らしていた雰囲気とは、なにも変わっていない、と。

ですが、少しずつ、違和感を感じていたのも事実でした。電化製品が少しずつ変わっていったり、父が定年退職をしてずっと家にいたり。

二、三日の帰省でも、実家での「役割」が与えられます。本当に単純なことで、朝ごはんに食べるりんごの皮をむいたり、新聞を取りに行ったり。そんなレベルのことです。

ですが、一緒に暮らしていたときとは色々と変わっています。母はりんごを皮ごと食べるから皮を剥かなくていい、とか、父は入れ歯を作る途中だからりんごはミキサーにかけて、スムージーにして飲むとか。

「分からんやろうから、置いといて」

このひとことを言われてしまうと、ちくりと胸が痛みます。何かを手伝おうとしても、私が知らないやり方だから、やらなくていいよ。説明したところで、今日明日だけしかいないんだから。

あなた、この家の住人じゃないでしょう? と言われてしまったような気持ちになるんです。

暮らしの中で自分の役割があるかないかで、自分の居場所を見つけたり、疎外感を感じるのかもしれません。

ゆっくりと羽根を伸ばした旅行でも、自宅に帰ると「やっぱり自分の家がいちばん落ち着くわ」って言ったりしますからね。

私にとって、実家は安心できる休息場所であることには変わりないのですが、こころの底から落ち着く場所は、今暮らしている家なんだろうなと思います。

実家が心の底から落ち着く場所じゃない、と感じるのは少し寂しい気もします。けれど、自分の居場所を新しく作れたんだと思うと、ちょっとだけ、誇らしい気持ちにもなります。

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