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好きすぎて、こわいもの。

「こどものころに戻りたいですか?」

という質問が、会話のなかでふと出てくることがある。

こどものころと言っても、幼稚園のころ、小学生、中学生など様々な場面があるため一概に戻りたい、とも言えない人が多いだろう。

私自身は、現在36歳だけれど、全然戻りたいとは思わない。「もしも、あの時、あっちの道を選んでいたら……?」と、思うこともあることはあるけれど、どちらの道を選んでいてもそれなりに大変だろうなぁ、と考える。また、単純に振り返ってみても、こどものころは、こどもなりに色々と悩んだり困ったりしていたので、また同じ悩みを抱えるもの嫌だなあと思う。

しかし、「私が今、こどもだったら良かったのになあ」と思わせられるできごとが、ひとつ、あるのだ。

それは、こども科学電話相談室というラジオ番組だ。

NHKラジオ第一放送で主に夏休みにおこなわれているものだ。

こども達が日々のなかで「なんでだろう?」と思う、科学的な疑問に対して、先生が答えてくれる、というものだ。

ラジオで、電話を通してこども達が質問し、映像も何も見せることができないままで、言葉だけで「わかった!」と理解してもらわなければならない。本当に難しいミッションだと思うけれど、それに対して「うーん、どういったらいいかな?」など、頭を悩ませながらも、こどもたちの質問であり好奇心を満たすための解答を丁寧に先生達がこたえてくれる。

私がこどものころにも、もしかしたらこういった取り組みはされていたのかもしれないけれど、残念ながら私はチャンスに恵まれなかった。

「なんでこんな風になってんの?」と、父や母に聞いても「知らんわ、図書館言って調べておいで」と、自分で調べるように促されていた。もちろん、今となっては「調べる」ことに対して面倒くさいと思わず、知らないことは調べればいいんだというスタンスになっているため、ありがたいことだと思う。けれど、こどものときは「図書館にいっても、何を調べたらわかるのかがわからない」というレベルだったため、断念してしまったこともある。(今となってはそのことすら覚えていないのだけれども)

こどもが疑問に感じたことは、好奇心でもあり、興味の対象として広がっていく。わからないことに、きちんと答えてくれる人がいて、一緒に「おもしろいね、よく見つけたね」と言ってくれたら、もっともっと知りたいと思うだろう。この「子ども科学電話相談」という企画は本当にいい取り組みだと思うし、率直に羨ましいなとおもう。こどものころに感じた好奇心は大人になっても無くならないことも多いし、たとえ趣味のレベルだとしても一生の親友のように付き合っていける物事だって多い。私にはこどもはいないけれど、友人や親戚のこども達に「これって、なんで?」と聞かれることがあれば、真摯に対応したいと心にきめている。

この番組に登場される先生方は、こどもの質問だから、とあなどることなく、「今でもそれは研究中なんですよ」と、きちんと答えている。そして、こども達の興味を失わせないようにと、本当におもしろくて、個性的なのである。

こども達が不思議に思う対象のひとつに「昆虫」がある。私自身は昆虫は苦手な部類だ。けれど、子ども科学電話相談でこども達の質問に答えている先生の本があまりにもおもしろそうで、つい購入してしまった。

丸山宗利先生の「昆虫こわい」という幻冬舎新書から発売されている本だ。全ページカラーなので、昆虫の写真はわんさか出てくる。ページをめくる手も震えるほどだ。けれど、丸山先生の昆虫に対する想いが凄まじく、写真が怖いから読まない、とうのはもったいないなと思うほどだ。基本的には海外での昆虫採集の話なのだけれど、昆虫採集に至るまでの経緯や、新種の昆虫を発見したり、これまでに発見例の少ない昆虫にであったときの踊り出さんばかりの嬉しそうな様子など、つい、顔がにやけてしまうほどにおもしろい。

たかが昆虫採集でしょ? とあなどってはいけない。本当に命がけだし、刺されると命の危険性がある昆虫だってたくさんいるのだ。その中でも目的の昆虫を発見したときには、鉱山のなかから小さな宝石を見つけ出したかのような喜びがあるのだろう。そして、現に昆虫のなかには宝石にも匹敵するような美しい種類のものもある。

丸山先生はこどものころから昆虫が好きだった、と話されている。小さいときからずっと好きで追いかけているものが仕事になるなんて、羨ましいと思う。自分にはそこまで熱意を持って接してきたものはないからだ。けれど、一度興味を持ってたものに対して、あらゆる面からアプローチをしたり、それこそ調べたり、考えたりするのは大人になった今からでも、いくらでもできるのだ。好奇心を持ち続けながら、物事に取り組む姿勢があれば、いくらでも道は広がっていくのだと思う。

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