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ぬか床をあきらめた。

人にはどうしても向き不向きがある。できることと、できないことがある。

がんばればできるよ、というのは簡単だけれど、身体が受け付けないことは、やっぱり向いていないんだと自覚した。

わたしにとっては「ぬか床」がまさにそうだった。

昨年、無印良品から発売されていた「発酵ぬかどこ」という製品がとても気になった。

ぬか漬けは乳酸発酵で、身体にいい。毎日の食卓に提供できればいいなあとぼんやりと考えていた。夫の実家が家庭菜園をしているので、遊びにいくたびに、たくさん野菜をもらえることも、ぬか漬けをはじめてみようかと、考えるきっかけでもあった。

夫に「ぬか漬け、つくったら食べる?」と聞くと「自分でやるのはめんどくさそうだけど、作ってくれるなら、食べる」という。

ぬか床は毎日かき混ぜなくっちゃいけないとか、少しばかりめんどくさそうな気もしたけれど、「ちょっとやってみよう!」と挑戦することにした。

無印良品では品切れになっていたので、「みたけ食品」から販売されているぬか床を購入することに決めた。

毎日かき混ぜなくてもいいし、ぬかどこを育てなくても、そのまま使えることも購入の後押しになった。


そうして、我が家にもぬか床がやってきた。深くてしっかりとぬか床がはいるホーローの容器も購入ずみだったので、開封して、容器に移せば、もう野菜をつけることができるのだ。

なあんだ。思ったよりも、簡単じゃないか。いろいろ悩んでいたけれど、買ってみてよかった。

そうして、わたしの「ぬか漬けライフ」がはじまる……はずだった。

しかし、わたしは肝心なことを忘れていた。

わたしは、あまり漬物が好きじゃない。なぜかというと、しょっぱいからだ。白米と一緒に食べれば問題ないのだろうけれど、白米も普段から、あまり口にしない。根っからのパン好きだった。

白米を口にしないといってもお寿司はすきだし、いろいろ矛盾していることはわかっている。けれども、「ぬか漬けだけ」を食べるには、どうしてもしょっぱくて、一切れか二切れしか食べられなかった。しょっぱいものを口にすると、そのあとずうっと、口のなかが気持ち悪くなってしまう。お水やお茶を飲んでも、なかなか元には戻らない。

ぬか床がこなれてくれば、しょっぱい感じもしなくなるはずだ。色々調べていると、ほとんどの本にもぬか床のパッケージの後ろにも書かれている。

なじんでくるまでの間、ぬか漬けをつけては、夫にどんどん出していった。しかし、夫がひとりで食べるには量が多すぎたり、そもそも家でご飯を食べない日も多くて、ぬか漬けは冷蔵庫で待機することが多くなってしまった。

何も漬けない日は、かき混ぜるだけはかき混ぜて、休ませても良い。長期間漬けないなら、冷凍保存すればいい。それはわかっていたけれど、どうしようか迷っている間に、日にちばかりが過ぎていった。

そうして、なにも漬けず、かき混ぜることもしなくなった。ついにはぬか床を腐らせてしまった。かき混ぜないと乳酸菌ではない細菌が増えてしまうため、食中毒の原因になる。

そうして、わたしのぬか床ライフは幕を閉じた。

わたしには、ぬか床は向いていなかった。ぬか漬けを好んで食べることもできなかった。ただ、それだけのことなのに、ちょっとした挫折感すらあった。

ただ、一度経験してみたことで「わたしはぬか床、育てなくていいわ」という決心がついたし、毎日ぬか漬けを食べること自体、すこし苦痛だった。

たかがぬか床、されどぬか床。なんでも経験してみないと、わからないものだ。経験したことで「あ、これは向いていないんだな」と分かってよかった。




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