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夫婦円満の秘訣は、戦国時代にあり。

「え、なにこれ?」

その歌をはじめて知ったときの、率直な感想だ。Twitterで「おもしろい」とRTされてきたその動画を何の気なしにクリックしてみたのだ。本当に、軽いショックを受けた、といってもいいぐらいの衝撃だった。

「びじゅチューン!」という番組を、ごぞんじだろうか?

Eテレで火曜日午後7:50から放送されている、歌番組だ。子ども向けの「みんなのうた」的なものです、と言いたいところだけれど、ちょっと自信はない。番組のコンセプトとしては、

「びじゅチューン!」世界の「美術」を歌とアニメで紹介する番組です。むずかしい説明なし。美術作品をテーマにしたオリジナルの曲が、ユニークなアニメとともにヘビロテされます。

そう、その通り。様々な美術作品をモチーフとした、その作品からは想像もできないストーリーがくり広げられているのだ。

私がはじめてみた歌は「噴火する背中」というものだった。

これは、夜遅くに帰宅したパパが、台所に立っているママの後ろ姿を見て「アッ!!」となるところから歌は始まる。

お母さんが羽織っているのは「陣羽織」戦国時代に、豊臣秀吉が身に付けていた「富士御神火文黒黄羅紗陣羽織(ふじごしんかもんくろきらしゃじんばおり)」*現在は大阪城に保管されていて一般公開はされていないようです。歌のタイトルにある通り、背中に噴火する火山の絵がかわいくデザインされてあるのだ。戦国時代の衣装係の人、むっちゃセンスいいなーと、思わずにはいられない。

その「噴火している様子」が、ママの心中「噴火=怒ってる」を表現しているのでは? とパパがガクブルしながら推察する歌なのだ。我が家の将軍様がお怒りだぁ……と。

そのイラストレーションと、気の抜けた様子の歌声はなぜか強い中毒性があって、何度も何度も繰り返し見てしまった。

しかし、この「背中で怒りを表現する」というのは、わりと夫婦円満に役立つんじゃなかろうか? とも思うのだ。夫婦の暮らしに提案しているむちゃくちゃ下世話なアイテムに「YES・NOまくら」というものがある。朝日放送のご長寿番組である「新婚さんいらっしゃい!」で以前プレゼントされていたものだ。この「YES・NOまくら」については、子供のころは意味が分かっていなかったけれど、成長するにつれ「なんと生々しいアイテムだ!」と衝撃を受けたこともあった。いや、夫婦なんだから、問題ないのだろうけれど、いろいろと。

「YES・NOまくら」については、ちょっと横に置いとくとして。この「富士御神火文黒黄羅紗陣羽織」は、ものすごく役立つアイテムになるのでは? と思う。「わたし、今イライラしているから察してよね!」と女性の方は思うことが多いかもしれない。ちょっとしたことを「察して」欲しい。しかし、男性はあんまり「察する」というのは難しいんじゃないかと思う。そして、不用意な発言を重ねてしまい、大きなケンカへと発展してしまうのだ。

……ちなみにこれは、私自身の経験に基づいたことなので「ただ単に、お前がややこしいだけだろ」と思われるかもしれない。けれど、多分女性でも男性でも「はっきり言わなきゃ分かんないよ!」ってことと、「私の気持ち察してよ!」という経験はあるんじゃないかと思う。

なんでもないようなことだったのに、大げんか勃発! それだけは避けたいですよね! そんなときに! はい! 今回ご紹介するのはこちら! 「富士御神火文黒黄羅紗陣羽織」つい、通販番組のようなノリになってしまったが。「この羽織を羽織っているときは、やや好戦的な気持ちで怒っています」というアピールにつながるのではなかろうか? 一応戦のときに羽織るものなので「好戦的」としている。「もともと何かにイラついています」という明確なアピールこそ、不用意なケンカを避けてくれるんじゃないかな? と考えてしまう。

もちろん、この歌とアニメの作者はそんなことを考えたかどうかは分からない。「びじゅチューン!」で放送されているうたの作詞・作曲・アニメ・歌のすべては映像作家の井上涼さんによるものだ。全部こなしてしまうなんて、ちょっとズルいほどの才能だ。

わたしは「噴火する背中」が一番のお気に入りなのだけれど、他にも素晴らしくおもしろい作品がたくさんある。「見返りすぎてほぼドリル」という、ひどいタイトルの作品が、わたしのお気に入り第二位だ。

見返り美人」という菱川師宣が描いた名作を、なんでそんな風になるのか、分からないほどだ。見返りすぎてほぼドリルになるなんて。ちょっと設定に無理があるんじゃないだろうか? と思うけれど、まあ、見ていただきたい。

高名な美術作品をこんな風にもてあそぶなんてけしからん、という人もいるかもしれない。けれど美術作品そのものに興味が湧くきっかけになると思う。「この歌にでてくる作品の実物はどんなものだろう?」と思わずにはいられないのだ。「びじゅチューン!」公式ページにご紹介したふたつの歌はアップされているので、ぜひ一度この不思議な世界にはまってみてはいかがだろうか? そして、「美術って、難しく考えなくていいんだ」と身近に感じてほしいと思う。






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