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間詰ちひろ
2019年9月30日 08:00
海の家で食べたばかりの焼きそばが、もうなつかしい。できたての焼きそばは、かつおぶしのダンスステージ。湯気を浴びて、ひらひらゆらゆらと踊っている様子を見て、同じように腕を動かしてはしゃいでいた。「ひとりでひとつ食べれるもん!」と威勢良くかき氷を食べはじめたのに。途中で飽きてしまったのか、けっきょく氷のかけらが浮かぶ砂糖水を僕が飲み干した。べえっと舌を出すと、緑色に染まっていて「宇宙人みたいだ
2019年8月8日 08:00
「あ、ソフトクリームだって! 食べたいなぁ」売店のポスターを見かけると、姉は幼い子供のようにぱたぱたっとビーチサンダルの音を鳴らして駆け寄っていった。ビーチサンダルから跳ね上がる砂が足に絡みついている。「おねえちゃん、夕飯食べられなくなるよ? 宿の夕飯、グレードアップしたからキンメダイの煮付けになるって、楽しみにしてたじゃん」「たっぷり泳いだし、大丈夫だよ」姉は自信たっぷりに頷いて、うー
2019年7月11日 08:00
「それ、押し花?」読まなくなった本を片づけてほしいと母に頼まれ、久しぶりに帰省した。ほんの少しの時間があれば、いつでもページをめくっていた母の姿を、わたしはそっと思い出す。歳と共に目が悪くなっていった母は、本を読まなくなってどのくらい経つだろう。欲しい本があれば、好きなだけあげるという母の言葉に甘えて、本棚から何冊かを選ぶ。母のにおいが残ってる本をぺらぺらとめくっていると、一枚の紙が