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まいにちとわたしのこと

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頑張れって言ったら、不機嫌になりそうな君

「いいよね、好きなことを仕事にしていて。私なんか好きでも何でもないつまらない仕事をずっと続けていて毎日が死ぬほど退屈だよ」

と、昔ある業種の人に愚痴ったことがある。その人は十代の頃に夢見た職業に就いて、爆発的に成功したわけではなかったけど食うに困らない程度だったと思う(傍から見て)

私も昔は夢はあったし、自分の好きな仕事に就いたこともあったけど、その仕事がこの先まったく金にならない事実が分かっ

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猫舌改造計画

猫舌改造計画

「猫舌だよね」と最初に言ってきたのは夫だと思う。「思う」というのは、その前に誰かに何度か言われた記憶があるけど、その人物を思い出そうとすると顔は目や鼻がなくのっぺらぼうだし、性別も名前も年齢も人格も記憶の彼方にあって思い出せない。だから今、私の記憶にある人物の中で一番最初に言ってきたのは夫、ということになっている。

夫は夫なので毎日一緒に暮らしてるし、出会ってからの年数を数えると頻繁に顔を合わせ

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壁に自由を、扉に警告を

壁に自由を、扉に警告を

会社帰りにアレルギーの薬をもらいに病院に寄った。その病院は住宅街の中にあって、狭い路地を通りながら何度も角を曲がって辿り着く。その通り道に築三十年ぐらいの古い民家があった。トタン屋根の古い家を囲むように、簡素で文様もない昭和的なブロック塀に囲われている。そのブロック塀には子供がチョークで描いた絵が全面にびっしり描かれていた。足元の歩道には大きな白い丸の羅列。けんけんぱをやった跡。

私が子供の頃で

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夏休みと模倣

たまに自分が誰かの模倣をしてるのではないかと思う。生きていく上で少なからず誰に影響を受るのは当たり前だけど、自分の選んだ物や作品は他の誰かが好きな物であって、本当に自分が好きなのかと考えると、時たま疑問を感じてしまう。
そして誰かの模倣をしている私を、また他の誰かが模倣し、コピーされ続けた感性の先にはどんな人格を持つ人間が待っているのだろう。つまらない人間なのだろうか、それとも模倣で固められた感性

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紫陽花のアタマ

紫陽花のアタマ

今年はコロナ禍のせいで例年より季節を感じることができなかった。桜はいつの間にか新緑に変わり、今はもう紫陽花が咲いている。梅雨の季節に咲く花のせいだろうか、紫陽花は瑞々しいイメージを与えてくれる。赤紫の花は雨だれを弾きドロップ状の球体を形を崩すことなく添えている。だから炎天下に咲いている姿を見ると途端に息苦しくなった。灼熱の太陽に照らされ蒸発してるように思えるそれは、日の光に喜びを感じているように思

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