小余綾 麻季

小余綾 麻季です。 こゆるぎ まき と読みます。 詩と小説を載せています。たまにつぶや…

小余綾 麻季

小余綾 麻季です。 こゆるぎ まき と読みます。 詩と小説を載せています。たまにつぶやきも。 ともかく、ヨロシクです!

マガジン

  • 小余綾麻季の「どうでもいい」日常

    大事だと思っていたことをほうっておけると、どうでもいいと思っていたことが浮上して、本当はそっちが大切なんだって思えるようになる。 本当の自分の住処は、そこにあるよね。

  • つぶやき

    つぶやきです(笑)

  • 小余綾麻季の「短編集」

    短編小説。

  • 如月詩集

    物語の断片のようなもの。夢の切れ端のようなもの。

  • 如月 小さな物語集

    如月kisaraの短編集をまとめています。 役に立つ何かはなく、ちょっといい話でもない。 ただ、読後にほわ~んと安堵するようなものを書いています。

最近の記事

「行くぞ」

午後は雨が降る予定だった 予定? 予報じゃなくて? そう、 天気予報では雨だったけれど それを、自分の予定に組み入れたのは「私」 予め報せてくれるが「予報」 予め定めてしまうのは「予定」 そうやって、誰かの言葉を自分の定めにしてしまう 実際には、予報は外れることもある 予定にしなければ、もっと自由に動けただろうに さあ、今からでも遅くない 出かけよう 予定表は白紙にして

    • 一人だけれど一人じゃない

      秋分の日の翌日、からりと晴れた休日の午後。 固定電話が鳴る。 どうせセールスの電話だろう、急いで出る必要もない。 私はゆっくり廊下を歩く。 先日、右足の小指を箪笥に勢いよくぶつけ、歩くとまだ痛いのだ。 受話器をとり、「はい」とだけ応える。 若い女の声で 「わたくし、○○株式会社の△△と申します。 そちらは奥様でいらっしゃいますか?」 相当の早口である。 私は○○と△△の部分がうまく聞き取れない。 「もう一度おっしゃっていただけますか? よく聞こえなかったもので。」 「奥

      • 天井のシミ

        寝室の天井に、50cm四方ほどの焦げ茶色のシミがある。 それは、圭一が寝るベッドの上、ちょうど枕の上あたりについている。 蝙蝠が羽を広げて笑っているように見える、かなり不気味なシミだった。 蝙蝠だから「羽」ではなくて「翼」なのか? 正しくはどう呼ぶのかわからないが、ともかく、圭一はそれを 蝙蝠の羽だと捉えたのだ。 圭一がこの家に越してきたとき、そこにベッドを置くなんて考えられなかった。その部屋を寝室にするなんて思いつきもしなかった。 あんなものを見ながら就寝したら、悪夢にう

        • 「読書好きの子どもをどうやって育てるか」とは何の関係もない話

          私が生まれた家には本が一冊もありませんでした。 絵本やマンガ、週刊誌の類もなし。 唯一読めるものといったら テレビ欄のためにとっていた夕刊(地方紙)だけでした。 物心ついた頃、私はその夕刊を広げ、 「の」の文字を〇で囲って遊んでいました。 あの丸っこい文字がかわいくて、 「の」を見つけて〇をつけるのは楽しい遊びでした。 それを見た母が、「この子は字に興味があるんだ。字を習わせてあげなきゃ。」と、私を習字教室に連れて行きました。 上手に字が書けるようになるのが目的ではなく、文字

        マガジン

        • 小余綾麻季の「どうでもいい」日常
          5本
        • つぶやき
          3本
        • 小余綾麻季の「短編集」
          3本
        • 如月詩集
          44本
        • 如月 小さな物語集
          6本
        • 如月小説・物語集
          6本

        記事

          女たちよ

          女たちよ その胎内に どんな未来を孕むのか   未来とは 未だやって来たことのない   全く新しい 宇宙のことだ   延長線の時間軸上にある 未来のことではなくて 女たちよ その豊穣な土に 宿す命は  まだ まどろみの中にある   母体が切実に持った希望   それが   そのまま 注ぎ込まれるのだから 女たちよ 注意深くあれ かしこくあれ ほがらかであれ そして、なにより 寛容であれ   産み落とされた 新たな宇宙が   あなたを 慕うように   あなたを 愛してや

          サ変動詞「す」

          サ変動詞「す」は どんな名詞の足にもなって 多くの、外来の言葉を 動詞化してきた 古くは、漢語の名詞を動詞化して、すっかり日本語として歩かせたし 今では、英語を始めとする 数々のヨーロッパの言語を動詞化し どこの国の言語でも、それが名詞でありさえすれば そこに足をつけるのは お手のもの サ行四段との見分けは 簡単 未だ然らずの形には 「せ」を使う(口語では「し」) サ変動詞は どこから来たのか どちらが先と言うものでもないだろうが 助動詞「す」の存在が 浮かび上がる

          サ変動詞「す」

          見えない、聞こえない場所

          「あなた」や「私」の 物語のなかに 普遍性は かくれていて   一般論の中に 普遍性はない それは 素晴らしい映画や小説には、個人を引き込むチカラがあるのに ためになるはずの説法が、ときに退屈なあくびをさそうのに 似ている 社会生活を送るうえで 必要かつ大切な常識も それらを取りまとめているものが、実は得体の知れない「世間」であり ちょうど 平均点などという点数が この世のどこにも実在しないように 「世間」もまた、目安でしかないことを 肝に命ずべきかもしれない 見える風

          見えない、聞こえない場所

          女性性

          女らしさは あまたの男性の 目を惹きつけるために あるのだろうか 心を魅惑するために あるのだろうか 女性性と女らしさが結びつくとき その、ほんのわずかな隙間に  呪が忍び込む 女性性は、本来 その身に生命をはらみ、はぐくむ力・・・ それは おそらく、男女の性別に関わらず また、この地球上 生きとし生けるもの、全てが潜在的に持っている エナジーの素 なぜなら 地球そのものが 女性性の原点だから 呪縛を解き放ち 原点に還ろう たったひと粒の、愛おしい卵子へと 小さく

          祈り

          それは ほんの些細な日常の光景に織り込まれ 普段、目にしているのに 見えなくさせられ わたしたちの行いや声がけの中に ひっそりと身を隠し 自己主張もせず、ただ有り続ける 例えばそれは 赤子をあやす母の声に 畑を耕す農夫の汗に スーパーやコンビニでレジうつ指に 宿っている 普段通りに毎日を過ごす、あらゆる人々の行いの奥で じっと 息をひそめるようにして 待っている 特定の宗教の 礼拝のポーズやマントラに どれほどの威力があるというのだろう 今コノ時モ、タエマナク宗教戦争ガ

          ある婆さんの話

          そうさね、あれは、私が尋常小学校を出て すぐに奉公した先でのことだね。 私は貧しい漁村の漁師の子供でね。 ああ、戦前の話だよ。戦争はまだまだ先の話さ。 尋常小学校?・・・ ああ、あの頃は、尋常小学校が義務教育ってやつでね 高等小学校は、誰でも行けるってもんじゃなかったんだよ。 年齢で言うと、今の小学校が尋常小学校、 中学校が高等小学校ってとこだな。 私の年代のずっと後には国民学校初等科とかっていってたな。 ともかく、私は十四のときに、初めて家を出て都会へ行ったんだ。

          ある婆さんの話

          名作でつなぐ支離滅裂なオマージュ

          ある日の暮れ方のことである。 一人の下人が羅生門の下で雨やみを待っていた。 雨の音に混じって、どこからともなく声がする。 「危ないところだった。」 と繰り返し呟くのが聞こえた。 恐懼の内にも、彼はとっさに思い当って、叫んだ。 「その声は、我が友、李徴子ではないか。」 ところが、草むらから現れた声の主は、 きっぱりと、こう言い切った。 「吾輩は猫である。名前はまだない。」 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。 兎角に人の世は住みにくい。 人の

          名作でつなぐ支離滅裂なオマージュ

          オババの処方箋

          こりゃあ、正しい病(タダシイビョウ)だねえ 正義症候群ってやつをこじらせると そうなっていくもんさ でも、大丈夫 病ってもんは、シコリでつっかえてた所を 通して流すために 起きてくる自然現象だから うん? わかりにくいってかい? いいんだよ わからなくっても 大丈夫 世の中は 間違いだらけだって、何かの拍子に気付いたんだろ 誰かに教えてもらったのかもしれないねえ どっかの情報ってやつに 触れたんだろうよ その結果 間違いを責める気持ちが 出てきたんだな 悪いことを

          オババの処方箋

          今昔似非物語

          今は昔、自称神様といふ男ありけり。 民草に吾を崇め奉らせむとて、言の葉なるものをば考案しけり。 (面倒くさいので、以下現代語訳) 自称神様は(これも面倒くさいので、以下「自称」は省略)、 人間達に「言葉」を与え、物語を作らせることにしました。 人間は、神様の思惑通りに「言葉」を受け取りましたが、 それを使って物語を作ることができる人間は、少数でした。 しかし、それもまた、神様の思惑通りだったのです。 物語を作る人は、それぞれが自分の作った物語の主人公となり、 その他

          未来を夢見て過ごした「昭和」。 結局そんな夢なんてなかった、と 現実を生きたけれど その現実が、現実という名の夢だった「平成」。 現実を夢としてどう生きようか? と思考する「令和」。 それらの夢の集大成が現実。

          スーイッシュを探す旅 第4話

          ≪ エピローグ ≫ 私が森を抜けたとき、空は晴れ上がり、 西に傾きかけた太陽が、晩秋の木々を輝かせていました。 そのきらめきの中に、カラスの羽音が聞こえました。 夢に導かれて幻の花スーイッシュを探し、 この森に入ったのは今朝早くのこと。 落ち葉を踏む自分の足音が、妙に新鮮に聞こえました。 何時間くらい森の中を歩いていたでしょう。 途中のことはよく覚えていません。 気が付けば、森の出口に立っていたのでした。 そんなに長くいたつもりはないのに、 太陽の位置からして、かなりの時

          スーイッシュを探す旅 第4話

          スーイッシュを探す旅 第3話

          ≪時の淵≫ ー 魔女 ー ハイエルがまず馬車を降りた。 その後に7人が続く。 数学者、植物学者、考古学者、まじない師、占星術師、黒髪の少女 最後にカード占い師が降り立った。 一人一人に手を差し伸べながら、ハイエルは 「ようこそ、時間の淵の入り口へ。」 と、にこやかに言った。 そして、おもむろに振り向いたとき、あっ!と声をあげた。 「なんだい、その驚きようは。」 ハイエルの後ろに立っていたのは、御者のテオではなく 杖を持った一人の老女であった。 「まさか、わたしの

          スーイッシュを探す旅 第3話