エリーゼのための小説明
日本の、小さな片田舎の、さらに小さな
とある地方自治体の出納課で
私は働いている。
毎日帳簿をつけるのが私の仕事である。
この仕事を長くやっていると
文字と数字の羅列から、
どんな問題が発生してどう解決したのか、
までが透けて見えることもある。
それを見る限り
いろいろ細かいトラブルや課題はあるにせよ
民たちは、おおむね平和に暮らしているようだ。
ある日、ふだん通りに帳簿をつけているとき、
私の脳裏に
古いヨーロッパの、春の野原が
幾度となく過ぎることがあった。
なんだろう