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いただきもの経済とお返し文化が自給率の向上を加速する仮説【つくり手であること】

諸説ご意見あると思うので簡単に断言できませんが、個人の経験上、田舎暮らしにおける食の豊かさは否めないものがあります。

何回引越そうともかたくなに街暮らししかしてこなかった人生から、山間部に越したこの4年間ほど食べ物に恵まれてることはなかったからです。

自給率についても色んなご意見があって然るべしなのですが、わたし個人は、低いより高い方がいいけど100%を目指すこともない、という主義です。自給率100%は最強だと思うけど、100%を達成してしまったら孤独になりそうで、できればおすそ分けしあえる方がいい。
自給率が低いよりも高い方がいいと思うのは、たくさんあれば誰かにあげることもできるし、逆にいただきものをした時のお返し分くらいあると良いといつも思うのです(つまり現状できてない笑)

我が家は、実母たちがつくった野菜やお米をいただくことも少なくありません。たまに自分の中の厳しさが顔を出して、「いい大人になったのに郵送費とエネルギー掛けて親に食べ物もらうのどうなのよ?」と言ってきますが、その度にもっと奥底にある自分が登場して、「いやいや、あまり一緒に過ごさなかった親子の新しいコミュニケーションだから」と言ってくれます。

70代に入った母があと何年、田畑を楽しむかは分かりませんが、50代から農家となった彼女の野菜を可能な限り自分の体で消化したい、と高校時代に親元を離れた私は思うのです。

柚子たわわ

冒頭の写真は、先日いただいた柚子。その量なんと、バケツ2杯に満杯というダイナミックさで、自宅の前に届けられているのを見て一人で声出して笑いました。

これはもちろん勝手に届けてくれたのではなく、私が一人で畑作業をしていたらお隣のお母さんが「やなぎさわさーん、柚子もらってくれるー??」と声を掛けてくれたのでした。

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お隣のお庭には立派な柚子の木があって、毎年こぶりの可愛い柚子がたくさんついてます。この地域はかつて柚子で町興しを図ったことがあったそうで、柚子の木がある御宅が多いため「誰ももらってくれないのよ(笑)」と、毎年よろこんでいただく私に聞かせてくれます。

嬉しい嬉しい、と大声でお礼を叫ぶと「じゃあ駐車場のところに置いておくわねー」とウチまで届けてくれていたのが、バケツ二杯だったというわけです。

ざっと見ても100個は余裕であるな...と思ってその日のうちに欲しいというお友達に送ったりして、それでも我が家で楽しむには十分な量。こんなにお店で買うとしたら大変です。

柚子を買うのは大変、といえば、先日こんなツイートをしました。

この写真。想像するに、運搬中に傷がついたり潰れたりしないためだと思うのですが、国内の小売り業界ではこうした生鮮食品に消費するプラスチック量が多く、海洋汚染を思うと胸が痛みます。
お隣でたわわに実った木からバケツ越しにいただく柚子を皮まで大事に食べることに慣れた身としては、柑橘ひとつ一つにプラケースを使うなんて、正気の沙汰じゃない気すらしてきます。

この国の先人たちは、冬至に柚子湯に入ると風邪ひかない、と柚子湯の文化を作り上げました。おそらくたくさんあったから、香りのいい果実を放り入れて寒い季節のお風呂タイムを楽しんだんだろうな、なんて想像して、先人たちのセンスに脱帽する大好きな文化です。
でも、爽やかな香り立つ情緒あるお風呂文化も、まさかお店で買ってきた柑橘ではなかなか実行しづらいでしょう。できることならなんとかして、田舎で取りきれない柚子が都市生活者にも行き渡るような、冬至のフリー柚子システムが始まることを願ってやみません。

皮も大活躍する手づくり柚子あれこれ

先日は、greenz.jpの「いかしあうつながりのレシピ」連載にて、柚子を絞ってつくる自家製ポン酢を紹介しました。(記事の中でも書いていますが)たとえ全量分の果汁が足りなくても、1個でも生の柚子を絞り入れることで、風味も香りもグンと上がるのでオススメです。

また、これは記事に書く余裕がありませんでした、いつも柚子の皮も大切にしています。

干してできあがったタプタプの干し柿を開き、内側に柚子の皮を巻き込んだ季節のお気に入りのおやつ。これをカットすると、茶色に黄色の渦まき模様が入ったかわいいお茶受けができます。ちょっとめでたい気持ちになるせいか、不思議といつもお正月に食べたくなるので、だいたいこの時期に作ったいくつかは冷凍庫で寝かせて保存したりします。

お正月のなますもこの柚子皮を刻み入れたり、いなり寿司の酢飯に混ぜたり、白ごまと一緒におむすびにするのも大好物。私にとって冬の訪れを伝えてくれるのは、断然柚子の存在です。


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