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日本の子どもは大変だーバリ島の村で思ったこと

バリ島の田舎の村に暮らして思ったことの一つに、

「日本の子どもって、生きるだけで大変だよなあ」ということがあります。



まず、日本語がものすごく難しい。

ひらがなカタカナだけで100以上、更に何万の漢字という文字を覚えなければなりません。


例えば、一時期ネットで話題になった、こんなフレーズがあります。


「3月1日は日曜日で祝日、晴れの日でした」


これ、日本語を学ぶ外国人には超がつく難問だそうです。

なぜならここに登場する「日」という字の読み方が全て違うのです。(試しにもう一度読んでみてください。その「難しさ」が日常会話レベルであることに驚くはずです。)


バリで私は高校生の女の子と「バリ語と日本語の教えあいっこ」をしていたのですが、

私がバリ語の慣れない発音と敬語体系に苦戦して「難しーい!」と言うと、彼女はいつも「日本語はもっと難しいよ」と笑いました。

彼女のノートには「耳、耳、耳・・・」とたくさんの「耳」の書き方を練習した跡がありました。
縦棒と横棒が突き抜けたり突き抜けなかったりするのが覚えにくいそうです。



また、日本の子どもは食べるのも一苦労です。

その最たるは、箸でしょう。

利き手が右の私は、左手で箸を扱うことができません。

小さい頃、練習用の箸で格闘しながら、もう投げ出したくなった記憶があります。


一方、バリでは基本的に手で食べます。

パサパサしたご飯を、指で器用にまとめて、口に運ぶのです。

実は、上手に口で食べるのは簡単ではないのですが、
子どもたちも手づかみで真似しながら食べています。



他にも、例えば彼らはハンカチやティッシュを持ち歩きません。

手を洗ったあとはどうするかって?

こすり落とすように水気をきったあとは、服でふくだけです。

当然服は汚れるのですが、洗うので気にしません。

大人がそうなのですから、子どもはもっとテキトウです。

それで怒られはしません。



また、家の周りくらいなら、裸足で外を歩いても大丈夫です。

裸足で駆け回る子どもをよく見ます。

もちろん床は汚れますが、タイルやコンクリートむき出しの床は定期的に水洗いされきれいになります。



外出中、おしっこをガマンできずに漏らしてしまっても、そんなに問題ではありません。

一応トイレトレーニングのため、叱られるのですが、
インドネシアではもとからポイ捨て文化ということもあってか、そんなに厳しくいわれません。

大人でも草むらで用を足すおじさんをよく見かけます。



勉強だってそうです。

最近は都市部に公文の教室などが進出していて、学校の後に塾に通う子どもも増えてきているそうですが、

もともとの風土としては、勉強すること・させることにあまり熱心ではありません。

学校から帰ってきたら、子どもたちはだいたい昼寝して遊んでおしゃべりして過ごします。



そして、

バリ人は老若男女、みんな子どもが大好き。


兄弟たちはよく面倒をみますし、家族や親せきだけでなく

たまたま通りがかっただけの赤の他人も

赤ちゃんを見かけると必ず話しかけ、ちょっかいを出し、笑いかけます。



公共の場で赤ちゃんが泣いたとしても、

誰一人として顔をしかめません。

むしろ喜んで赤ちゃんを取り囲み、笑わせようとあやします。

泣く赤ちゃんを前にお母さんが焦るところを見たことがありません。



もっとも、

私はこの複雑で奥深い日本語が大好きですし、

箸も慣れると便利だし、

ポイ捨てなど、直すべきと思う彼らの習慣も多々あります。


しかし、日本人から見るとかなり「テキトウ」な育て方をされているバリの子どもも
日本人と変わりなくすくすく育っているさまを見ると、

わたしたちももう少し肩の力を抜いてもいいのかもしれない、と気づかされました。


冒頭で、「日本の子どもは大変」と書きました。

ですが、一番大変なのは

子どもにこうさせなきゃいけない、あれをできなければ、という、

お母さんやお父さんの方なのかもしれません。



電車の中で泣き出す赤ちゃん、焦るお母さん、舌打ちするオジサン・・・

そんな場面を日本で見たり聞いたりするたび、

バリのあの

誰もが子どもに対してテキトウで寛容な空気を思い出します。

それは、お母さん・お父さんに寛容な空気でもあるのでしょう。

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