見出し画像

Milano de 美術館巡り🎨ブレラ美術館

イタリア第二の都市であるミラノ
18, 19世紀にイギリスやフランス、ドイツからの旅人が「古代」を探しにイタリア半島を訪れたが、そのような「古代」をミラノで見つけることはできない。
フィレンツェ、ローマのような歴史的な都市とは異なり、ミラノは近現代的な都市である。1861年の統一宣言のもと、イタリア半島の諸都市はイタリアという一つの国に統一されたが、19世紀のイタリア史においてミラノという都市は特別な役割を持っている。
ミラノという街の近代性・国家統一運動への関わりは、現在でも街のさまざまな場面で感じることができる。

このシリーズではその一例として、ミラノにある二つの美術館、
ブレラ美術館とポルディ・ペッツォーリ美術館について紹介しようと思う。
この二つの美術館はどちらもフランチェスコ・アイエツの作品を展示している。
フランチェスコ・アイエツは19世紀イタリアを代表するロマン主義画家であり、ブレラアカデミーでは教職を取り、名誉教授にまで上り詰めた権威ある画家である。
アイエツの作品はミラノでこそ数多く展示されているが、他都市では脚光を浴びているとは言えない。

日本では全く知名度のない画家であるが、イタリアにとっては非常に重要な画家であるので、
ミラノを訪れた際には、このような前提知識を持ってアイエツの作品を観ることができたらさらに美術館巡りが楽しめるのではないかと思う。

フランチェスコ・アイエツの自画像 ブレラ美術館

ブレラ美術館

1809年に開館したブレラ美術館は、ナポレオン・ボナパルトが美術品のコレクションのために創設し、学生の教育機関としても利用されていた。コレクションには、ミラノがイタリア王国の首都であった時代に弾圧された教会や修道院から持ち出されたイタリア美術の傑作が含まれていた。
現在では、13世紀から20世紀までのイタリア国内外の芸術作品が展示されている。

ブレラ美術館で観ることのできるアイエツの作品を数点紹介

Il Bacio (The Kiss) (1859)

国旗の色を使うことによって男性がイタリア、女性がフランスを表していると言われているアイエツの代表的な作品。オーストリア勢力に対応するためのイタリア・フランス間の蜜月関係を描いていると言われている。フランス人の父を持つアイエツ自身のアイデンティティも、この二カ国の関係に影響を受けていたであろうことが想像される。

このようなプロパガンダ的な側面以外にも、この絵画が愛されてきた理由がある。アイエツが描く男女の構図はイタリア人にとって愛の象徴として馴染み深いものであるからである。アイエツはロミオとジュリエットを主題とする作品を数点描いており、Il Baci はアイエツオリジナルのロミジュリ変化球とでも言えるだろう。

イタリア定番イタリア定番チョコレート Baci のパッケージ

イタリアのお土産としても馴染み深いチョコレートBaciのパッケージにもアイエツの描く男女の姿が使われていると言われている。
アイエツのIl Baciは多様な視点からの観察が可能な興味深い作品である。

La Malinconia(Melancholy)(1841-2)

Melancholyとは憂鬱・哀愁を意味する。高いクオリティと表象的な価値がこの作品の人気の要因であり、ロマン主義特有の変わらないものへの退屈さを象徴している。
女性の着ているドレスのブルーはIl Baciでの女性のドレスと色合い・光沢感が似ていて、アイエツはこの作品で使ったブルーを参考に描いたのかな、などと想像する。

美しいものの儚さを表していると言われる花
Bersabea al bagno (Bathsheba at Her Bath) (1841-2)

鑑賞者から観て画面一番右の女性が旧約聖書のヒロインの一人、バテシバである。
入浴中のバテシバを主題とした作品であり、この主題はレンブラントなど他の巨匠たちも描いてきた絵画の一場面である。レンブラント同様、ヌードを描くという過激な表現のための口実として、旧約聖書のテーマが用いられている。
バテシバの頭に巻かれたターバン・男性従者の服装は19世紀に盛んに描かれた「オリエント」風なモチーフである。
また、バテシバは19 世紀に人気が高まったファムファタール(男性を破滅に導く女性)としての要素も兼ね備えている。
物語において、バテシバは、その美しさでダビデを夢中にさせ、不倫を隠すために、彼女の夫を戦場で死なせるようにダビデに仕組ませている。
その後生まれたダビデとバテシバの子ソロモンは、母バテシバのおかげで抗争に勝利して父の死後王位につくことができた。
美しさと狡猾さを兼ね備えたファムファタールはバテシバというキャラクターにぴたりとハマる。
この作品は、オリエンタリズム、ファムファタールという19世紀ヨーロッパにおいて流行した要素が、古典的なテーマの中で表現された作品である。

今回取り上げた三つの作品以外にも、ブレラ美術館にはアイエツの作品が沢山展示されています。

次のNoteではポルディ・ペッツォーリ美術館について紹介します。










参照

ブレラ美術館のHP

https://pinacotecabrera.org/en/visit/

バテシバについてhttps://kotobank.jp/word/%E3%83%90%E3%83%86%E3%82%B7%E3%83%90-115324

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?