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春の陽だまりのような映画

高校生ぶりに地元のブックオフに赴いた。

古本屋とは違った、一回だけ読まれた本たちの香りで充満している。正直あんまり好きじゃない。と思いながら、物色する。


階段の踊り場の棚を通りすがろうとした時、横目に「陽だまりの彼女」を発見して飛びついた。

ブワ!!!!!!と込み上げる懐かしさ。手汗かいた。わ〜〜〜元気してたか…!と、旧友に出会ったような気分で手に取る。元気してた。

110円のラベルシールを貼られて。


褪せない黄色


高校1年生だった時に、映画版の陽だまりの彼女を観たのが最初だった。

主演が上野樹里と松潤で、母が松潤が好きだったから観にいこうと、そういう流れだった。
後に2回観にいくことになる。映画に感動して何度も足を運ぶのも、きちんと原作を買って擦り切れるまで読んだのも、人生で初めてのことだった。


ストーリーは、元々頭が悪くていじめられっ子だった女の子・真緒(上野樹里)と浩介(松潤)が、大人になって再会し恋仲になるという所から始まる。


字面だけでは全くそそられないな…私はラブストーリーが苦手なので、主演が松潤じゃなかったら、母が松潤を好きじゃなかったら、絶〜〜〜っ対に見なかった。絶対だ。 



予告編もいいな。
画面の色遣いが本当に巧みで、タイトルにもある陽だまりが色々な現れ方で出てくる。徹底された暖色の装飾・服飾がきれい。わかりやすく「きれいだ…」と思わせてくれて、映画初心者にやさしいエンターテイメント感がある。

きらきらした、水面の反射のような描写が好きな人に是非見てほしい。


この作品で三木孝浩監督のことを知って好きになった。「アオハライド」「僕は明日、昨日のきみとデートする」なんかの少女漫画系(私が全く見ない系)を多く撮っているけど、MVの方が有名なんじゃないかな?
アジカンのソラニン、ORANGE RANGEのロコローション、アスタリスク、YUIのCHE.R.RY、いきものがかりのYELL。懐かしくて涙出る。こう見ると世代ど真ん中のスター選手だったんですね。



誰もが一度は信じる空想

この作品、内容としては絵本に近い。
ジャンルは「お話」なのだ。

優しさや愛(性愛に限らない)に一貫したテーマを、ギリありえるかありえないかの夢みたいな話で包んでいる。だから好きになれたんだと思う。

ラブストーリーにありがちな、男女のネチャネチャ関係やドロドロコミュニケーションがなくてありがたい。ああいうのを見ると「早く腹割って話せや」としか思えず、全く楽しめない。逆にそういういざこざが好きな人は、退屈に感じるかも。



ぱっと本を見かけるだけでこんなに文が出てくるくらい、私にとって本当に心に残った作品なんです。110円のラベルシールを貼られた所で、浸食されない価値が今も私の中にある。

本や絵や映像、文化に触れると後生大事に思えるものが増える。良いよね。


これは予告編でも言っている通りハッピーエンドなので、暖かい毛布で包まれたような気分になりたい時に見てほしい。見終わったら、物語のテーマソングであるザ・ビーチ・ボーイズの『素敵じゃないか』を聞いてほしい。幸せになれる。


原作はこちら。すぐ読めるよ。



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