【本紹介】おうち性教育はじめます



日常急に訪れる、次のような瞬間。

・子どもとテレビを観ていてベッドシーンが流れたとき
・子どもが自分の性器をさわる癖があるとき
・赤ちゃんはどうやってできるの?と聞かれたとき
・子どもがう●こ、ち●こ等と連発するとき
・大きくなっても、異性の親とお風呂に入りたいと言ってくる

なんて説明しよう、どうやって止めさせようと悩まれた保護者は多いだろう。
この本はその1つ1つに対して、○○と言ってあげましょう、と具体的なアドバイスが書かれてあり、まずはその実用性に驚いた。
そして性教育=月経・射精や避妊のイメージから、性教育=自己肯定感の育成へと変えてくれる素敵な本だ。
情報量が多い割にはマンガも多いので、スイスイ読めることもオススメポイントの1つである。

学校で行う性教育の限界

学校で行う性教育の強みは、教科書を元に皆が一斉に同じ知識を得られることにある。
だけどその教科書が子どもにとって難しい。

例えば小4では第二次性徴について学ぶのだが、「卵巣/月経/初経」「精巣/射精/精通」といったように、難しい言葉が多すぎる。
中1ではさらに「下垂体」「性腺刺激ホルモン」と漢字変換でもなかなか出てこない名前を学習する。
体の名前や仕組みを覚えること自体は大事なのだが、名称と部位を結びつけることがメインになりがちなのだ。

小4の月経の仕組みは授業ではなく、宿泊行事前の学活にやることが多い。昔はよく女子だけ集められていたけれど、教科書に図解であるので最近は男女一緒に聞いてもらうことが増えてきた。
胸のふくらみやナプキンの手当てについては女子だけ残して行う。そういった機会があるからか授業後、女子は割と質問をくれる。

男子の射精のことは、女子の月経に比較すると資料が少ない。
もし私が子どもだったら、何色のものが出て、どれくらいの頻度で射精があって、射精後の手当てをどうするかくらいは疑問に思うのだが、質問は受けたことがない。
男子だけ集める機会があれば質問が出るだろうか。更に男性教員から話した方が質問をしやすいかもしれない。

教えること自体は私は全く厭わないのだが(むしろ教えたい)、他の教員は割と保守的だ。
それは教員にも性教育に恥じらい等の心理的抵抗があったり、保護者からの反応を気にしてだったりする。
性教育の手引きには、保護者や地域の理解を得て実施することや家庭との連携が謳われている。
私は宿泊行事前の保護者説明会で性に関する話をすることを予告し、実施後は保健便りで内容を伝えている。
しかし仮に説明会で「やめて欲しい」とか、実施後に内容が不適切だと言われたら、どう対応していいのかわからない。
だから教科書以上のことは教えない方が無難なのだ。

日常でできる性教育を広めたい

例えば宿泊行事前にある月経等の話。
例えば中3の卒業前に行う避妊についての話。
どれも唐突で、教える側の都合で機会がつくられる。
そして具体を教えるのは養護教諭や外部講師が中心だったりする。

私は性教育はそんな特別なものだとは思わない。
性の価値観は身近な大人や友達との関わりから作られると考えているからだ。
だから子どもが興味をもったタイミングで、身近な大人が誰でも皆伝えられたら理想的だ。

本書は未来の大人を育成するために創られた本だが、大人自身に対して「性」に対する認知を変えるきっかけになる。
(余談ですが、私も養護教諭になってから性教育について勉強し、自身がもつ性に対するイメージがいかに偏ったものかを認識しました)

そしてこの本をもとに自信をもって性を教えることもできる、一石三鳥の本です。




拝読いただき、ありがとうございました。


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