最近、一段と
寒くなったねークリスマスももうすぐだね、街がキラキラだねえ〜という季節に毎年やってくるのが、私の誕生日だ。
12月14日。
忠臣蔵を知る人は四十七士の討ち入りの日か!と盛り上がってくれるかもしれないが、子どものころは24日と勘違いしていて自分の誕生日はクリスマスなのだと思っていた。
今みたいに、たくさんお菓子屋さんがあっていつでもかわいいお誕生日ケーキが買えるわけではなかったので、クリスマスが近い私はクリスマスケーキ、雛祭りが近い弟は菱形の雛祭りケーキをお誕生日会に食べていた。今思うと弟のほうが不憫である。
誕生日が近づいてくるとわくわくしつつ、寒くなったなあもう年末か、となるのにも既に飽きて、なんだよもうそんな時期かよ、がここ最近の正直な感想である。
だいたい、この時期はたいてい忙しい。
年賀状やらクリスマスやら最近ではブラックフライデーやら、やたらと何かを買わねば揃えねば、みたいな気持ちになっている。とてもじゃないが40も間近の自分の誕生日など気にしていられない。
ちなみに今年の誕生日はたまたま被ってしまった小2長男と年少末っ子の個人面談をハシゴする予定てある。
時間が経つのが早すぎるーとぼやいていたら、還暦オーバーの同僚に「やりたいことやっとかないと、気がついたらご臨終のベッドよ!」と言われ、いやほんとその通りです、と思った。このままでは気がついたら空の上にいそうだ。そのくらい早い。
季節がいつからこんなに早く回るようになったのか、その瞬間を実は覚えている。いや季節はいつでも平等に流れていたはずなので、要はいつからこんなに自分の体感速度が上がったのか、ということなのだが。
たしか二十歳のころの大晦日だった。
紅白を見つつ合間でお風呂に入って、洗面所で身体を拭いていたらリビングから「年越しそばできたよー」と母の声が聞こえた。その瞬間に、あれっ大晦日?まだ10月くらいじゃなかったっけ、と感じたのだ。
あれが、始まり。
そこから20年近く生きてきたが、そのスピードはどんどん上がり、もうそろそろ一周してちょうどよくなるんじゃないかな…とかくだらないことを思いつつ、今年もまたこの季節を迎える。
最近は「極夜行」ですっかり角幡さんの探検にハマってしまい、隙を見ては著作を読み耽る毎日である。
どの本も探検記としておもしろいのはもちろん、史実を解説しつつ自分の探検を通して新しい解釈を見つけたりしている。その飽くなき探究心は本当にすごい。
そのなかでも、やはり「極夜行」はひとつ頭が出ているというか、とにかく完成度が高い。もう一回じっくり読みたい。
この、もう一回読みたい、が昔は簡単にできた。
それこそホームズシリーズのように、何度も読んだ本もある。なのに、いつのころからかそれができなくなってしまった。
それはきっと、この流れる時間の速さと無関係ではないだろうと思う。光のように流れる時間のなかで、まだ読んでいない本を優先して私はもう一度この本を開けるときがくるのだろうか、とつい思ってしまうのだ。
それはとても残念でありながら、まだ知らない本との出会いを後押しされているような、複雑な気持ちになる。
流れに負けない、というあがきと、流れに身を任せる心地よさを知り始めた人生。
まだまだ楽しそうじゃん?
と寒空を見上げる、2021年冬の初めである。
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