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月と陽のあいだに

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「あの山の向こうに、父さまの国がある」 二つの国のはざまに生まれた少女、白玲。 新しい居場所と生きる意味を求めて、今、険しい山道へ向かう。 遠い昔、大陸の東の小国で、懸命に生き…
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#手紙

月と陽のあいだに 〜番外編 懐かしい出来事〜

月と陽のあいだに 〜番外編 懐かしい出来事〜

郵便社(3) 美しい帆船の絵柄の証紙ができると、白玲はさっそく皇衙の仲間たちにチラシを配って郵便社を売り込んだ。領事からは「本業をおろそかにするな」と、また小言をもらった。
「その郵便社は信用できるのか?」
 先輩官吏に言われて、白玲は「荷受け先はルーン水運です」と胸を張って答えた。ヤズド殿のところなら安心だなと、すぐに納得してもらえる。地道に信用を築いてきたヤズドに、白玲は改めて敬意を抱いた。

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月と陽のあいだに 〜番外編 懐かしい出来事〜

月と陽のあいだに 〜番外編 懐かしい出来事〜

郵便社(1) 白玲がカナンへ戻っても、キタイの航海士たちとの交流は続いた。
 ぜひ会いたいと言っていたオッサムを紹介したり、宿舎へ招いて手料理をふるまったりした。互いに気心が知れると、二人は気持ちの良い男たちだった。白玲たちの求めに応じて、故郷の風景や人々の絵を描いてくれたり、約束通りキタイ語を教えてくれたりした。

 戸惑ったのは、白玲が習い覚えたキタイ語と、航海士たちの使うキタイ語が微妙に違う

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