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田中あき子
2023年8月17日 23:04
流転の章慟哭(8) 火葬台の周りを守る禁軍の兵士の目を避けて、明かりが届かない闇の中をぐるりと回る。天幕から見えないところまで来ると、白玲は炎に向かって全力で走った。 あと少し、あと一足で愛しい人のところへ行ける。 そう思った時、白玲の体は強い力で引き戻された。「放しなさい、無礼者。私を放して。好きにさせて」叫びながらもがく白玲を、力強い腕が抱え込む。顔を覆っていた薄絹が外れて、風に
2023年8月16日 23:59
流転の章慟哭(7) 葬儀の日、ネイサンの棺の中には、姫宮の小さな棺が入れられた。父君と一緒に、迷わず死者の国まで行けるように、と。 月神殿の聖殿で行われた葬儀の最後、鎮魂の祈りが終わると、皇帝旗と禁軍旗の掛けられた棺は、親しい友人たちの手で葬送の馬車に乗せられた。 月神殿から火葬の野へ向けて、葬列が長い橋を渡っていく。 皇帝は月神殿の露台から葬列を見送った。夫に殉じることを願う白玲を、
2023年8月14日 23:47
流転の章慟哭(6)「赤ちゃんはどこにいるの?」縋るようにしてたずねる白玲に、女官長は目を伏せた。「殿下はオラフに襲われて破水してしまわれたのです。早産にしても、あまりに早すぎました」白玲は息を詰めて、目を見開いた。「医師はできる限りの手を尽くしましたが、赤さまをお助けすることができませんでした。赤さまは姫宮様でした。今は、お父様とご一緒に、月神殿で眠っておられます」 グッと喉を鳴ら