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田中あき子
2023年8月14日 23:47
流転の章慟哭(6)「赤ちゃんはどこにいるの?」縋るようにしてたずねる白玲に、女官長は目を伏せた。「殿下はオラフに襲われて破水してしまわれたのです。早産にしても、あまりに早すぎました」白玲は息を詰めて、目を見開いた。「医師はできる限りの手を尽くしましたが、赤さまをお助けすることができませんでした。赤さまは姫宮様でした。今は、お父様とご一緒に、月神殿で眠っておられます」 グッと喉を鳴ら
2023年8月13日 23:07
流転の章慟哭(5)「……血溜まりの中に倒れた姫様を見た時、どうしてこんなことをしたのか、自分でもわからなくなりました」 その直後、傍に控えていた近衛士官がオラフの頬を拳で殴りつけた。オラフの口から折れた歯と血があふれた。「医学院で爆発を起こした男は誰だ」 オラフはパクパクと喘ぐように口を開けた。「サージさん……、姫様のことを教えてくれて……逃げる金も都合してくれました。高貴な方の間
2023年8月12日 22:32
流転の章慟哭(4) 白玲を襲った後、オラフは両手を血に染めたまま、呆けたように立ち尽くしていた。駆けつけた近衛士官に取り押さえられ、引っ立てられるときも抵抗しなかった。 一方、白玲の至近距離で爆発を起こした男は、護衛に追われながらも、人混みに紛れて逃げおおせた。 ネイサンと白玲はすぐさま治療室に移された。 短刀の傷が肺に達したネイサンは、大量の出血でもはや手の施しようもなかった。 一
2023年8月11日 22:12
流転の章慟哭(3) その頃、医学院では……。「とても順調です。お子様が大きくなりすぎないように、無理のない範囲でお身体を動かされるとよろしいかと存じます」 主治医の言葉に、白玲とハンナは顔を見合わせて笑った。「お馬車の用意をさせますので、こちらでお待ちくださいませ」 そう言って出て行ったハンナが戻ると、白玲は礼を言って席を立った。 ハンナと護衛に付き添われた白玲が、中庭に面した回