「あの山の向こうに、父さまの国がある」
二つの国のはざまに生まれた少女、白玲。
新しい居場所と生きる意味を求めて、今、険しい山道へ向かう。
遠い昔、大陸の東の小国で、懸命に生き…
- 運営しているクリエイター
2023年9月の記事一覧
月と陽のあいだに 231
落葉の章ハクシン(12)
ハクシンの乳母の日記がもたらした動揺が一段落したあと、白玲は再び皇帝のそば近くに仕えることとなった。宮を離れた皇后に代わって、その職務をこなしながら、皇帝の御座所に控えて、日々の細かな仕事を見覚える日々だった。
本来ならこの役割は、皇太子とその一人息子であるシュバル皇子が担うべきものだった。しかし、ハクシンに独断で毒杯を与えた皇太子は、皇帝の意に従わなかった者として