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漫画語り#2 「短編漫画とこんにちは卵子ちゃん」

カマダ(以下、カ)「そろそろ、30分すね……そろそろ始めま……すか」
クドウ(以下、ク)「はい、じゃあ、漫画語りを始めさせていただきます。よろしくお願いしまーす」
カ「お願いしまーす」

客:パチパチ

ク「すみません、ありがとうございまーす。今回結構お客さん来てくださっていまして」
カ「嬉しいですね」
ク「たまたまかもしれないですけれど……」

ク「えーと、今回ちょっと3人でお送りする話になっていたんですけれど、あのですね、約1名ですね、仕事が押していると」
カ「はい」
ク「遅刻するかもしれないと、連絡が来てたんですけれども。見事に間に合ってなかったようです」
カ「笑笑」
ク「もう向かってるんじゃないかな? なので、その方はちょっと最後の方に回させせていただいて。まずは2人でやらせていただこうかな」

ク「まずは自己紹介をば。ワタクシ、whisky WHISKY PUB NOIR(ウイスキーパブノアール)の店主をしております、クドウと申します。よろしくお願いしまーす。じゃあ、どうぞ。」
カ「はい。ボクは卒論に追われながらも、今日、漫画を語りに来てしまった大学生のカマダと申します。よろしくお願いします。」
ク「はい、よろしくお願いしまーす。前回ですね、2人でひたすら漫画をレビューするというイベントをやった時にですね、1時間で終わるだろうというところを、なんと1時間半かかってしまうという」
カ「かかりましたね」
ク「だいぶ時間配分が甘い状態になっていましたので、今回はなるべく1時間を目指してやっていこうと思います」
カ「頑張りましょう」

ク「オーバーしたらごめんなさいという。ちなみにですね、今、ショウイくんの手元ずっと動いていると思うんですけれど、彼は今オムライスを頬張りながらイベントを……」
カ「もうだいぶ食べちゃったんですけれど……」
ク「お向かいの「鳥よし」さんから出前をとるという。これ裏メニューになっています。もしよろしければ、皆さんも鳥よしさんのオムライスをよろしくお願いいたいします」
カ「鳥よしさん、めっちゃ美味しいです」

美味しいオムライスを頬張りながら始まった、好きな漫画やそれに関わる話題についてヌメっと話す企画「漫画語り」の第2回。この記事は2021年12月23日に行われた第2回について今更ながらまとめたものだ。第2回は、クドウ店長、カマダ、そして名前がセンシティブ認定される漫画好き 卵子ちゃんさんを迎えての、3人体制で語った。テーマは短編漫画。作家性が現れるテーマであったと思う。動画はこちらからどうぞ。

会場であるWHISKY PUB NOIR(ウイスキー パブ ノアール)は、弘前市の繁華街鍛冶町にあるお店。国内外のウイスキーを味わうだけれなく、漫画やボードゲームも楽しめる。近隣のお店から出前を取ることができるのも、魅力のひとつだ。店主はツインターボ推しである。

↓ WHISKY PUB NOIRさんの情報はこちらからどうぞ ↓

夏を知らない子供たち/山本和音 byカマダショウイ

さて今回は前回の反省を活かしてサクサクと漫画をレビューしていく、紹介する漫画のひとつ目は「夏を知らない子供たち/山本和音」だ。(動画 4:37〜)

ク「じゃあ年功序列で……」
カ「年功序列で。はい。今回とりあえず、短編漫画ですよね。3巻までに完結している漫画というところで、まぁいっぱい持ってきたんですけれど。一応、紹介するのはまずは1冊ってところで……」

カ「最初に紹介するのはこちらですね。”夏を知らない子供たち”っていう、山本和音さんって方が描いている、山本和音さんの短編集になるんですけれど。11作品入っていて、実は出たのは最近で、本当に今年なんですよね。今年の9月に出た短編集なんですけれど。

 山本和音さん自身が結構書き込みがすごい人で、世界観つくったりするのが上手い人なんですけれど、この人作品知ったのはここからじゃなくて、これの1個前の”星明かりグラフィクス”っていうそれも3巻で完結した短編なんですけれど……」

チリンチリン……

カ「あ、お疲れ様です」
卵子ちゃん(以下、卵)「お疲れ様です」
ク「お疲れ様ですー。すみません、ちょっとぶった切ってしまったんですけれど、今ちょうど三人目の選手がですね」
カ「選手が笑笑」
ク「到着いたしました」
カ「競っていたんですね我々は。じゃあ、その間はちょっとつなぎますよ」

カ「この人が描いてて、一番最初に読んだのがこっちの星明かりグラフィクスって漫画だったんですけれど、これ読んだ時に、こっちの内容は美術大学生が美術大の中でわちゃわちゃやっていくみたいな感じの話で。こっち(夏を知らない子供たち)は、短編集なんですけど。この人、明らかに短編向きな書き方をするな、というのが上手い人です。壮大なテーマを掲げはするっちゃあするんですけれど、それよりも一話の中でいかに表現していくかというのがめちゃめちゃ上手いなと思っています。

 ちなみに自分としてはですね、11話分入っているんですけれど、一番最後の”恋と夜をかけろ”っていうのが結構好きで。内容としては、本とか学術的な勉強よりも恋愛の方が人生を豊かにするのではないかという話を……」

アンタイトルド/岡崎京子 by卵子ちゃん

今回から参加してくれた卵子ちゃんさんの自己紹介は、偉大な漫画家 岡崎京子先生の紹介とともに語られた。(動画 17:50~) 「漫画を文学に引き上げた」とも評される岡崎京子作品の魅力を、事故を挟んだ短編集「アンタイトルド」から語る。(動画 23:15)

ク「先ほど三人目の選手が到着したんですけれど、まだ自己紹介も何も終わっていないので、自己紹介がてら2番目をお願いしてもいいですか?」
卵「はい。じゃあ、行きますか。卵子ちゃんです」
カ「ひどい笑」
ク「卵子ちゃんが今、ホットワードで。Twitterで”卵子ちゃんさんです”と呟いたらそれがセンシティブワードに笑」
カ「いつもコメントくれている方が、”センシティブです”って笑」
ク「認定されてしまった笑」
卵「自己紹介……弘前でウィッチタイムっていうポップカルチャーのイベントをやったりしているんですけれど、まぁ色々と細々と……」

卵「漫画は好きなんですけれど、やっぱり最近歳を経たせいか1回読んでも内容が残んないんですよね……」
ク「わかる笑」
卵「読んでく端から忘れてしまう。大体覚えているのって昔読んだ漫画で。昔、多感な時期に触れて、今日はですね、次回BANされるともう話す機会がない……ので、これだけは語っておきたいという、僕の一番好きな漫画家についてちょっと話したいなと思うんですけれど、何を隠そう岡崎京子先生なんですけれど……」
卵「僕も(岡崎京子さんの)フォロワーになるんですけれど、リアルタイムにはですねまだ作品を受信できるレベルには達していなかった。高校くらいに、多分その”ヘルタースケルター”が大賞を獲ったところで、ちょうどこの”アンタイトルド”という短編集があるんですけれど、事故を挟んだ時期の作品群なんですけれど、2004年に新装されてこれが最初の岡崎京子作品なんですよ。ぼくにとっての。で、今日はまぁ、これを紹介したいんですけども……」

夜の歌/藤田和日郎 byクドウガクト

クドウさんが紹介するのは”からくりサーカス”に代表される藤田和日郎先生の短編だ。少年誌での長編漫画のイメージが強い藤田和日郎先生だが、短編集や青年誌で連載していた短編からは「藤田和日郎先生のいいところを煮詰めた」ような作品が出されている。(動画 38:29~)

ク「次はぼくですか。今あの、みなさんいっぱい持って来ているの見ていて、今慌てて後ろの本棚からかき集めて来ました。

 ぼくが紹介したい短編の漫画っていうのが、実はあの藤田日郎作品なんですけれど。みなさん多分藤田和日郎作品というと、”からくりサーカス”、”うしおととら”、今連載終わりましたけど、”双亡亭壊すべし”とか、長期連載のイメージ非常にあると思うんですけれど。ただ藤田和日郎先生、短編漫画もお得意な方でして、卵子ちゃんさんわかると思うんですけれど、あの1990年代中期頃って小学館のサンデーって矢鱈目鱈短編の漫画出してたのってわかります? 例えば”ゴーストスイーパー美神”の作者さんとか、”パトレイバー”のゆうきまさみ先生とか藤田和日郎先生もそうなんですけれど、そこら辺の小学館のサンデーで活躍してらっしゃった漫画家さんってすごい短編の漫画出してるんですよ。

 そのひとつが、実はもう一冊別の名前であるんですけれど、”夜の歌”っていう漫画なんですけれど。これはですね1995年発行の漫画なんですけれど、内容はですね、全6話……6話ではないんですけれど、話は5コ入ってます。全ての漫画が一話読んだだけで一冊の半分くらい読んだんじゃないのくらいの情報量です。全て気持ちよくオチてます。全ての話を気持ちよくオトすことができるのってやっぱり、とても力がある漫画家さんにしかできないと思うんですよ、藤田和日郎先生自体も、昔の漫画、代表作でいうと”うしおととら”、ずっと少年漫画を週刊少年サンデーで描いてるっていうのは実力がないとできないと思うんですよ。だからぼくはすごく尊敬している漫画家なんですけれど。

 実はこの”夜の歌”なんですけれど、みなさんよくご存知の”からくりサーカス”とすごい繋がりのある漫画で、この”夜の歌”第一作目、一番最初の話が”からくりの君”って漫画なんですね。で、”からくりの君”ってカラクリ人形を使って話を進めるという……カラクリ人形がストーリーに関わってくるんですけれど、それってからくりサーカス”も一緒なんですよ。で、その次の話で”拳の歌”って話があるんですけれど、それって中国拳法の話なんですよ……」

他にもこんな漫画を語りました

ここでは紹介しきれないが全部で9作品を語った。紹介作品は以下の通りだ。

04:37 夏を知らない子供たち/山本和音
09:43 22-26/藤本タツキ・17-21/藤本タツキ
19:38 岡崎京子作品群
24:00 チワワちゃん/岡崎京子
35:13 アンタイトルド/岡崎京子
38:29 夜の歌/藤田和日郎
43:50 黒博物館シリーズ/藤田和日郎
45:20 邪眼は月輪に飛ぶ/藤田和日郎

短編の魅力

長編には長編の、短編には短編の魅力がある。では、短編の魅力とはなんだろうか。今回の漫画語りを通して「短編には作家性が強く表れる」という仮説に辿り着いた。漫画好きの諸先輩方には、そりゃそうだろうと思われるかもしれないが、あえて書きたい。

短編は一部の超天才漫画家を除けば、必ずしも一度は描くものだ。そこには試行錯誤や、新しいアイデアが詰まっている。そして、短いページ数でそれを表現することはかなりの能力が要るに違いない。

今回の漫画語りで語られた藤田和日郎短編集”夜の歌”は、次回作に繋がっているとしか思えない作品があった。岡崎京子先生は掲載媒体が多かったという背景もありながら、それぞれで社会問題に一石投じるような作品からは才能と努力が滲み出ている。

出版社はもちろん商売であるので、本が売れなければ成立しないのは周知の事実だろう。ファンの多い人気作は長く続くし、そうでなければ志半ばで連載終了という苦渋の決断をする必要もある。人気作も長期になるほど、ファンからの期待が集まり純粋に作品として作り続けることも難しくなる。中弛みを指摘されることもしばしばだ。

その上で世に出された短編には、きっとそこでしか表現できないものがある。漫画家にとってやりたいように描けるフィールドが短編なのではないか。

短編集などはコレクターアイテムのように思われることもある。しかし、そこにはあの人気作品を新しく楽しむためのツールが詰まっているかもしれない。長期連載を終えた漫画家が、次にどんな作品を創り出すのだろう……編集者しか見ることのできない作家のラフスケッチを覗けるのが短編集だ。

短くて読みやすい。そんなカジュアルな楽しみ方ができるのも短編集のいいところだ。ぜひ、人気作品の導入に短編から入ってみるのはいかがだろか? そして、読んだ暁には、我々と語りませんか。いや、語らせてください。

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