イシヤマナツ

絵を描いております。たまに考えの浅い文章を書きます。事実とフィクションは内まぜ。

イシヤマナツ

絵を描いております。たまに考えの浅い文章を書きます。事実とフィクションは内まぜ。

最近の記事

それは妹というよりもうひとつの魂だ

私にはひとり、妹がいる。 いつも絵のモデルになっているあの子だ。 3つ歳の差があり、父譲りのくるくる柔らかな栗色癖毛で、 鼻が高くて、ぱっちり二重で、彼女の風貌がとても羨ましかった。 そして稀に見るワガママで頑固者だった。TPO問わずやりたくないことは泣いても叫んでもかじりついても絶対にやらない。母を怒らせ、父を困らせた。 幼少時は私の後を追ってきて、私の言うことなら時々は聞く、本当に可愛い妹だった。 彼女が毎日つく可愛い嘘も、やたらと達者な屁理屈も、乗ってやった。 時々

    • 子どもだった私へ送るアンサー

      また向こう隣の男の子がこちらを見てニヤニヤ笑っている。彼のお友達とこれみよがしに大きなリアクションまでつけて、私を変な声と馬鹿にしている。聴こえてないから何を言っても平気だと。 半径1m外の会話が聴き取れなくても、なにかよくないことを言われているのを人はとてもよく察することができる。私はそっちの方などまるで見えてないかのようにじっと視線を前に固定する。でも無理。いくら視線を前にやっても、彼らは視界に入っている。周囲がよく見えてしまうのだ。まるでサバンナでライオンに怯える草食

      • 「ラブレターを読む」

        以下は、イベント「ラブレターを読む」で朗読されるため匿名で書いて応募した文章です。 好評を受け2回目にも読まれましたので記念に載せておこうと思います。 〇●〇●〇●〇 こんばんは。 付き合ってください。 伊坂幸太郎の「透明ポーラーベア」という短編を知っていますか。私はそれが大好きで、何故かというとそこに登場する主人公の姉が失恋する度に遠くへ旅に出るという体質だからです。 私も実を言うとなかなかの根無し草で、生まれてから同じ地に5年以上とどまったことがありません。最初は

        • はじめに

          何かについて語るというのは難しい。基本的に内向的な人間なので私が熱心に何かを語ろうとする時だいたいその矢印は自分の内側に向かっている。昔はあんなに語れたじゃないか、読みたての市川拓司を頭に置いて、心に移り行くよしなしことをそこはかとなくかきつくれた、いやあんなものは多感なティーンズの何か特別なものを作りたいという欲に塗れたできそこない構文にすぎないや。 私は絵を描くが絵で解放されたと思ったのは自分がさも救われてますといった画風のものを描き出した時だ。文で解放されるなら同じよう

        それは妹というよりもうひとつの魂だ