『どくろ杯』『ねむれ巴里』『マレー蘭印紀行』 金子光晴
発端
冒頭の「発端」の節で金子光晴が書くように「四十年もむかしのことで(…)おぼつかないことも多いが、それだけにまた、じぶんの人前に出せない所行を他人のことのように、照れかくしなくさらりと語れるという利得」があるのが、本作『どくろ杯』である。
三三歳の金子光晴が一九二八年に上海へ渡り、それからマレー半島を縦断、ピナン島、スマトラ島を経由して欧州へ渡った五年に亘る旅行を扱っている。これは『ねむれ巴里』『西ひがし』と共に、晩年に書かれた自伝三部作となっている。
まず最初に強調