揺れ続けるBRICSの行方;脱資源国を図る中東・アフリカ編
皆さん、こんにちは・こんばんは・おはようございます。「見たかな?観たよ!」の中の人、ひろ-macrobiworldです。
今回はBRICSの一角を占める南アフリカと、2024年1月から正式な加盟国となるイラン・エジプト・サウジアラビアの4ヶ国について取り上げて行きます。
今回も長いですので(なんせ4カ国分!)、一気読みがキツイ方は目次を御活用の上、何回かに分けて読んでいただけたら幸いです。
では、早速参りましょう。
南アフリカについて
まずはBRICSの一角である南アフリカからです。
人種差別と戦った南アフリカ
南アフリカはこの地球上で、最も最近までアパルトヘイト(人種差別)が存在した国でした。
そのアパルトヘイトと長きに渡り戦い、勝利を勝ち得たヒーローがネルソン・マンデラです。
20世紀の殆どは英連邦の自治領だった南アフリカ。元々アパルトヘイト(人種差別・隔離政策)はあったのですが、1960年代に入るとそれがますます強化され、宗主国であった英国から人種主義政策に対する非難を受けたため、イギリス連邦から脱退し、立憲君主制から変えて共和国になった…と言うちょっと変わった系歴があります。
そしてアパルトヘイト廃止に伴いイギリス連邦と国連に復帰し、アフリカ統一機構(OAU)に加盟しました。
アパルトヘイト撤廃20年、激変の南アフリカ 南アフリカ全権大使に聞く | グローバル接待の作法 | 東洋経済オンライン
アパルトヘイト撤廃後の南アフリカの経済
アパルトヘイト廃止後も雇用の場ではアパルトヘイト時代の教育格差の影響で、人種間失業率格差がなかなか解消されないでいたようです。
廃止後12年経って教育が一巡した段階でやっと、数値の改善が見られたとのこと。
ただし後述しますが、この問題に関しては完全解決には至っていないのが現状のようです。
産業は様々な農業や工業が活発で、石油は出ないもののダイヤモンドの代表される鉱物資源の豊かな国で、天然鉱物採掘業は以前主要な産業のひとつとなっているそうです。
農産品では、日本ではワインが有名でしょうか。
醸造技術はオランダが伝えたようですが、フランスから亡命したユグノーがワイン造りを始めたそうで、南アフリカのワインの生産技術はフランス仕込みなんですね。
好みにもよると思いますが、南アフリカ産の白ワインはフルーティーな芳香と口当たりの良い飲み易さが特徴ですよね。
生産されるブドウ品種も、白ブドウ(白ワイン用)の方が黒ブドウ(赤ワイン用)よりも多いようです。
ワインは南アフリカにとっても重要な輸出品となっており、アパルトヘイト撤廃後はワイン生産の近代化が図られていたようです。
そうした産業を支える為にも南アフリカは、電力不足を解消する為に2030年までに77,834メガワット(MW)の電力を生産することを目指しており、排出削減目標を達成するために再生可能エネルギー源から新しい容量が大幅に供給される予定とのこと。
南アフリカの名目国内総生産(GDP)は2011年に4,160億米ドルのピークにほぼ3倍になりました。同じ期間に、外貨準備高は30億米ドルから約500億米ドルに増加し、アパルトヘイトが終わってから20年以内に、成長し、かなりの中産階級を持つ多様な経済を生み出しました。
その結果、アフリカ唯一のG20加盟国となっています。
南アフリカが抱える問題
アパルトヘイト撤廃後も依然として続く高い失業率と、その結果招いている治安の悪さは、南アフリカが長年に渡って解決出来ずにいる問題です。
そんな状況にも関わらず、近年はジンバブエからの移民を大量に受け入れて、現地では「雇用が奪われている」と不満が高まっているとのこと。
確かにそんな状況では、せっかく経済が発展しても失業率は改善しそうに無いですし、国民が怒るのも当然ですよね。
ジンバブエからの移民は、特別在留許可を発給された上で南アフリカに長年暮らし、働いてきたそうです。
けれどもこの様な、反移民感情の高まりから2021年、在留許可の更新を突然取りやめたため移民は不法滞在の状況に陥り、南アフリカ人の自警団からの度々襲撃を受けるなど、深刻なトラブルとなっているようです。
南アフリカ政府も、政策の切り替え方に難があったようですね。
また人権団体によるリポート記事からは南アフリカ政府による移民申請手続きや、本国へ送還する際の扱いに問題があるとの報告がありましたが、失業率が高い国に移民・難民を受け入れられる精神的な余裕は無いのでは…?とも思います。
(そう言う国に移民・難民を受け入れよ、と言うのは酷では無いのか?と思いますが、どうでしょうか。
困っている国や国の人を助けることは勿論大事なことなのですが、自国の足元がおぼつかない状態なのにそれをやれと言うのは、如何にも偏った意見-行き過ぎたリベラルの価値観の典型のように思います。)
突然ーーーとありましたから方針の転換にはせめて移行期間を設け、周知を徹底して不法滞在者を出すのを避けるか、やむを得ず不法滞在状態になってしまった人には費用を補助するなどして可能な人はジンバブエに送還し、それが無理なら他国への移動を推奨するべきだったのでしょう。
外国人労働者が不満のはけ口に 襲撃事件が相次いだ南アフリカから日本が学ぶ教訓:朝日新聞GLOBE+
しかしこうした移民問題は、日本も他人事ではありません。
そう言う意味では、南アフリカも日本同様に行き過ぎたグローバリズムの悪影響を受けている…と言っても良いのかも知れません。
イランについて
次はイランについてです。
イラン・イスラム革命以後は西側諸国に取っては、余り馴染みのない国となって行ってしまいましたが、古代ペルシャ帝国の末裔であることに誇りを持つ人々(1)の国ですから、自分たちの国が西洋に牛耳られているのは我慢ならなかったのかも知れないですね。
ティムール期(朝)時代のペルシャ帝国の最大領土は、現在の国名に直して記すと一部が領土だった国も含めると17ヶ国にも及びます。
いかに彼らがこの史実を自らのアイデンティティとして、心の拠り所にしているか…今の国際社会(特に西側)の中でのイランの扱われ方を考えると、わかる様な気がしませんか。
中世〜欧米の傀儡政権時代
まずは欧米の傀儡政権が出来る前のイランの中世〜近現代史について、ザックリと触れておきましょう。
何故なら今この地域で起きている様々な問題と無関係ではないからです。
ゾロアスター教を国境とする最後のペルシャ人国家サーサーン朝ペルシャ帝国が、イスラーム教徒の征服によって滅び、新たなイスラム教国家であるペルシャ帝国何誕生しますが、ここから900年ほど下ったイスラム教シーア派を国境とするイラン大帝国成立前後の過程は、今の中東の在り方を考える上で、重要なポイントにもなっている様です。
また、いわゆるパーレビ国王が統治していた時代彼らの政権を、今のイランの指導者たちは、日本に置き換えて言うならばGHQの支持を得て成立した(米の傀儡政権である)自民党政権みたいなもの…と言うより、今なら「増税メガネ政権」でしょうか(苦笑)ーーーとして、捉えていた様です。
長くなるのでここでは詳細は控えますが。
そしてそれが、イラン革命に繋がって行った様です。
例えて言うなら、今の日本の参政党さんみたいなものでしょうか。ただし理念や目標が全く違いますから、採ろうとしている手法も全く違いますけどね。(動機と行動は似ていたとしても、本質は全く違いますね。)
つくづく、日本は穏やかで平和な国なんだと実感させられます。
被害者意識がプライドの発露の形を歪ませている?
ただシーア派の雄であるイランの宗教的指導者、彼らの考え方はやはり原理主義的で、過剰な防衛心と被害者意識が、聖典の解釈を歪ませている可能性はあるのではないかと思います。
(世俗派・穏健派はイラン革命以後は分が悪かったようです。)
心理学的な表現を使うならば、それが民族的な「トラウマ」から来ていることは理解出来るんですが、「目には眼を歯には歯を」の思考では、いつまで経っても対立構造から抜け出せないままなのでは無いでしょうか?
(それがイランの存在を、ある意味で面倒臭いものにしている可能性があるように思うのです。)
幾らクルアーン(コーラン)が中心とは言っても、旧約聖書は聖典としてユダヤ教・キリスト教・イスラム教で共有されているのに、何故、和解出来ないのか。何故そのキッカケが作れないのか。
違いばかりに目を向けて(原典の旧約聖書ではなく、それぞれタルムード・新約聖書・クルアーンをメインに信仰している)反発し争っているうちは何も解決出来ないのではないでしょうか?
ここいらが一神教の限界と言うか、欠点なんでしょうね。
BRICS=英米に一矢報いる為の手段?
この辺りの事は…と言うか今のWEFが推し進めているグレート・リセット→新世界秩序の在り方について、私はWikipediaの英語版で紹介されてた部分を読んだだけですけど、ホメイニ師の「イスラム政府」と言う本を読むと多分理解が進むんだろうな…とは思うのです。
ただし注意しないとネガティヴなエネルギーにやられてしまいそうだから、深入りはしない方が良さそうだなとも思うんですが。
仕方のないことではあるのですが、日本にとっての「反日が国是の中韓の在り方(特に朝鮮半島の“恨”の文化)」と同様で、
さわりを読んだだけでも、最初から欧米&ユダヤ批判ありきの姿勢が見えてしまうのです。
そこに問題解決の為に双方理解し合おうとか、もとはユダヤ教もキリスト教もイスラム教も同じ「アブラハムの宗教」なのだから、歩み寄れるところは歩み寄ろう…と言う姿勢に乏しいように感じてしまう部分があるわけです。
ただ当所から思っていた通り、イラン(ペルシャ)を知り、“両側から”世界の現状を把握することは、今の世界の問題点を明らかにし、解決のヒントを得ることに繋がる様な気もしています。
なので、次回はイランについてもう少し掘り下げてみたいと思っています。
いずれにせよイランのBRICS参加理由は、細かいことは抜きにして「米基軸通貨体制の崩壊に寄与できる」=「英米に対して一矢報いるこちが出来る」
それ以上でもなければ、それ以下でも無いような気がしました。
あとはその延長線上で、サウジアラビアの動向の監視と言う意味合いも、もしかしたらあるのかも知れません。
仮にイランがその為に猫を被って大同小異に付いているのだとすれば、将来的に紆余曲折を経たBRICSが組織として安定した後に、イランから何か問題が生じて来る可能性もありそうですね。
エジプトについて
次はエジプトについてです。
中東の話題はどうしても重くなりがちなので、エジプトくらいは(お口直しも兼ねて)文化的な話題にも触れておきましょうか。
エジプトと言えば、クレオパトラとギザの三大ピラミッドに代表される古代エジプト。
日本人は古代エジプト好きの人、多いですよね。
ダンス好きの人ならエジプシャン・ベリーダンスの本場
(ベリーダンスは「エジプトで芽が出て、トルコで花開いた」と言われますが、オールド・スタイルの代表がエジプシャン・スタイルとターキッシュ・スタイルのふたつ。)
として認識されてる方も多いかも知れません。
↑は1954年のハリウッド映画「王家の谷」より、エジプシャン・ベリーダンサーのサミア・ガマールの出演シーン。彼女は他にも幾つかのハリウッド映画に出演しています。1950年代はエジプトのベリーダンス界にとっても黄金期のひとつとなっています。
またベリーダンス独特のこの衣装のスタイルも、実は伝統的なものでは無く、ハリウッドで考え出されたもの。
ですが、現代では現地エジプトのナイトクラブでは、観光客向けにこの様な衣装で踊られることが多い様です。
下の動画はナイトクラブでは無く、エジプトの女性シンガー「ルビイ」のデビュー作Enta Aref Leih" ("Do You Know Why?") 2003年.のミュージック・ビデオですが、セクシー過ぎるということで、当時アラブの地上波で放映禁止になったと言う曰く付きのもの。
ですが、アラブの男子学生を虜にして大ヒットしたらしいです。因みにルビイさんは今でも健在で、(流石にベリーダンスの衣装は着ていないけど)相変わらずこんな感じのセクシーなミュージック・ビデオを出しているみたいです。
このビデオの撮影地はアレキサンドリアでは無くカイロらしいのですが、曲調にはあの地中海風の独特な旋律や開放的で明るい雰囲気がありますね。
ビデオが撮影されたのが「アラブの春」が起きる前だった事もあり、街中は観光客(?)らしき西洋人の姿も見られます。
アラブの春とその後
アフリカ大陸の北東に位置し、アフリカ大陸の玄関口とも言えるエジプト・ナイル川河口のデルタ地帯にあるカイロや、地中海に面したアレキサンドリアはそれこそ古代エジプトの昔から地中海沿岸の諸国との貿易の要衝でした。
その後、アラブの春でエジプト革命が起きてムバラク政権が崩壊した直後の2012〜13年に投票所に並ぶ女性の姿は、まだバラエティーに富んだ格好をしています。
エジプトの全人口の約1割がキリスト教徒と言うことで、単純計算で10人に1人はヘジャブ等を被っていない女性がいてもおかしくは無いのですが、2020年代の現状は(ネット上に挙げられている写真を観ると)もっと少なく感じますね。
観光客と間違えて、カメラを向ける人が少ないのでしょうか?
エジプト革命の後ムスリム同胞団による新政権による政策や新憲法などで、女性の地位は悪化。世相自体もアラブの冬を迎える事となりました。
その後政権が変わり、憲法も改正されたとのことですが女性の人権侵害状況や地位の低さは相変わらずな様です。
アラブの春で革命によって倒されたムバラク政権は長期政権だった為、エジプト国内に不満が溜まっていたと言われています。
が、革命後の経済状態そのものは実はアラブの冬と言われるくらい、低迷し悪化していました。ムルシー政権に対する不満も高まり、リベラル派とイスラム派が対立。
翌年2013年7月には早くもクーデターが起き、ムスリム同胞団のムルシー大統領は失脚しています。
このムスリム同胞団は、最近イスラエルを攻撃したハマスの前身に当たるそうです。(2)
因みにハマスをテロ組織として認定していないのは、エジプト・イラン・中国・ブラジル・シリア・カタール・トルコ・ノルウェー・ロシアの9ヵ国。
エジプト革命後に彼らがエジプトでした事と、エジプト国民の反応を見れば、(それだけでも)彼らの政策方針が好ましいものでは無かったことが分かりますね。(3)
未だ回復途上にあるエジプト
エジプトの経済は、名目GDPに関してナイジェリアと南アフリカに次いでアフリカで3番目に大きく、2023年時点で世界ランキングで41位だそうです。
しかし政情の影響を受け易く、汚職も蔓延り、富の再配分が上手く行かず、全人口の約3割が貧困に甘んじているとのこと。
国民一人当たりのGDPも中東や北アフリカ諸国の中では最低水準であり、経済発展が国民生活の向上に上手く結びついていない様です。(この辺りは、今の日本とも重なる部分がありそう。)
産業も無いわけではないのですが、スエズ運河収入と観光産業収入、更には在外労働者からの送金の3大外貨収入の依存が大きく、エジプト政府は、それらの手段に安易に頼っている上に、
と言った状況を考えると、エジプトのBRICS参加動機には食料安全保障の問題がありそうですね。
ただ価格競争に負けて後塵を拝しているとはいえ広大な綿花農場を持っている上に、それなりの食料自給率はあるそうだから、ただ単に国内の産業構造のバランスが悪いだけなんじゃないかしら?
工業面でも資源は無いけどそれなりに工業化は進んでおり、IT産業も活発になっているそうなので、経済面でのポテンシャルは高そうです。
実際アフリカでは屈指の経済規模であり、BRICsの次に経済発展が期待できるとされているNEXT11の一国にも数えられているとのことなので、エジプト国内の構造上の問題が解決されれば飛躍的に伸びる要素はありそうですね。
サウジアラビアについて
最後はサウジアラビアについてです。
サウジアラビアは4カ国中、唯一の絶対王政の国
でもあります。
税金がない国という誤解
サウジアラビアは世界屈指の産油国で大金持ちだらけのイメージがあります。
そう言うイメージも加わってか、サウジアラビアには税金が無いと言われていますが、税金が無いのでは無く、サウジアラビア人と外国人では扱いが違うそうです。
外国人(主に外資企業やその従業員)には所得税と人頭税がかかるとのこと。
サウジアラビア人の場合には所得税はかかりませんが収入の2.5%の喜捨(寄付)税がかかるとのこと。
ですが、他の税金がかかっていないことを考えると、サウジアラビア人であれば、サウジアラビアでの税負担はタダ同然に軽い、とは言えるのかも知れません。
近代化とナショナリズムが混在する国
イスラム教スンニ派ーーーで、宗教的価値観に拘束された閉ざされたイメージが強いですが、実は石油産業のお陰で、グローバリゼーションはかなり進んでいた様です。
サウダーゼーションは企業の雇用する労働者が、全体の30%以上サウジアラビア人が占めることを求める法律で、ここで私たち日本人は「ええっ⁈」と衝撃を受けるのでは無いでしょうか?
「30%以上って、じゃあサウジアラビアでは企業が雇用している労働者は殆どが外国人ってこと?」と。
推計によればサウジアラビアの労働力の約80%は外国人労働者(2017年)なのだそうです。
石油産出国であるサウジアラビアでは、国民の収入は、事実上エネルギー関連の国営企業から支払われる給与で賄われているケースが多い様なのですが、この状態がいつまでも続くわけはなく、従ってサウジアラビア政府としてはサウジアラビア人の雇用を拡大する政策を取っているらしい。
・サウジアラビア人の雇用が少ない理由としては(宗教上の理由で)女性の社会進出が進んでいないこと。
・(宗教的な影響で)十分な教育が受けられていないこと。また受けていたとしてもスキルが少ないこと。
などが挙げられているそうです。
こうしたことには対策が取られており、例えばサルマン皇太子が首相に就任後は、女性に対して禁じられていたことを一部解禁(自転車に乗る事など)し、制限を緩める政策が採られているようです。
経済分野で浮き彫りになる政教一致の弊害
こうした問題は宗教的価値観に起するものです。
例えば
つまり石油が将来的に(枯渇するからでは無く)、SDGSによって産業として衰退の可能性がある為、サウジアラビアとしては産業構造を変えたいわけですが、イスラム教に則った教育がそれを行うにあたって障害になっている部分があると言うことらしいのです。
宗教上の在り方と現実社会の折り合いを模索するサルマン皇太子(首相兼任)
先述した通り、サルマン皇太子はサウジアラビアの将来を見越して、経済発展や産業構造の改革にとって障害となる宗教上の制約や禁忌を一部取っ払ったり制限を緩めるような政策を打ち出してはいます。
それは主に女性の社会進出を助ける…と言う側面から少しずつ条件を緩和する政策を打ち出しているようですが、前述のようにシャリーア法(5)の影響もあって、それは充分とは言えないようです。
が、こうしたサウジアラビアの姿勢は(原理主義的な価値観を持つ)イラン政府から観ると、裏切り行為と映るかも知れません。
それは「価値観の違い」から来るものなのですが、サウジアラビアが自国の利益を守ることを考えるなら、サウジアラビアにとってのイランは口うるさくて面倒で厄介な親類…と言った感じの相手なのかも知れませんね。
それでも最近はサウジアラビアとイランは関係改善の方向に向かっていたと言います。
またサウジアラビアがイスラエルに接近しているのも、そうした将来的ビジョンの影響が大きいでしょう。
おまけ;ハマスのイスラエル攻撃の影響
ですが、イスラエルに接近を図るには時期が悪かったですね。
パレスチナに対して強硬な姿勢を取ってきた事で有名な極右のネタニヤフ氏が首相の座に返り咲いたことで、「何かやらかすのではないか?」と懸念する声があったのですが、
やはり…と言うか、ハマスによるイスラエル攻撃を招き、その懸念は現実のものとなってしまいました。
その為、サウジアラビアは動きが取れなくなっている様です。
割れるアラブ諸国の反応 イスラエル、サウジの正常化に暗雲 ハマス攻撃(時事通信) - Yahoo!ニュース
このハマスの攻撃については
と言う報道が現地ではされており、この戦争はパレスチナvs イスラエルでは無く
ハマスvsイスラエルのネタニエフ政権の戦争で、そこに両者の無辜の市民が巻き込まれてしまっている…と言うのが真相のようです。
ですから少なくともハマス側の攻撃の理由はシンプルなようです。
どちらかと言えばハマスを挑発しまくったネタニヤフ政権側の方に、何らかの思惑があったのでは無いでしょうか?
ですが敵を殲滅してその土地を支配しよう…の敵を殲滅して…と言う意識はネガティブな意識なので、(と言うか、戦争というものはそもそもそう言うものかも知れませんが、)これは最終的には「人を呪わば穴二つ」の結果を招くことになりと思います。
戦争には本当の意味での勝者はいません。
形の上での勝利はあったとしても、双方の国民や国土にダメージが与えられるのですから。しかも犠牲になるのは大抵の場合、何の罪も無い一般の人々の命や暮らしです。
これほど大きな愚行は無いですね。
アブラハムの宗教は一神教なので、例外なく「異教の神は悪魔」だと言っていますが、
異教の神が悪魔なのでは無く、
その様に無辜の市民を犠牲にして残忍な愚行が出来てしまう輩、その者こそが悪魔でしょう。
異教徒や異教の神を悪魔呼ばわりして、わざわざ争いの種を作る様な愚行は、いい加減やめてほしいですけどね。
ところでハマスはイランから支援を受けていると言われていますから、来年1月からイランとサウジアラビアこの両国が正式加盟国となるBRICS、果たしてうまく機能して行くのでしょうか?(4)
今後のサウジアラビアの対応が注目されるところです。(早速、イスラム協力機構で緊急会合を呼びかけた様ではありますが。)
参考までに、今年9月の国連でのサウジアラビア外相のスピーチを、少し長いですがここに紹介して、今回のシリーズは終わりにしたいと思います。(以下、下記リンク記事の機械翻訳になります。)
今回はこれで終わりです。
最後までお付き合い頂きました皆様には、大変ありがとうございました。
このアカウントでは政経占い(原則として有料)と、時事ネタのエッセイ(無料)をお届けしています。
今回イランについて調べてみて、その歴史が予想以上に現代の世界の在り方を考える上で重要な要素を持っている国であることが分かり興味が湧いたので、次回は、イランの歴史や現状について掘り下げてみる予定です。
イスラムに対しては少々思うところがありますが、それを最も先鋭的に現実化させてしまったのが革命後のイランだと感じています。
今回はそのことに触れられなかったので、次回はその辺についても書いてみようかと思っています。
良かったら、また次回も会いにきて下さいね。
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【脚注】
(1)イラン人を知る人によると(面倒臭いぐらい)プライドが高い人種だそうです。でも、それだけに行動が分かりやすい(反応の現れ方はシンプルで「目には眼を歯には歯を」を地で行く)のだとか。
(2)ハマスは当初はガザの「ムスリム同胞団」の分派として宗教慈善団体としてスタートした。
(3)パレスチナ人の詩人によれば、ハマスには(イスラム以外の)歴史や伝統的な文化を破壊してきたアフガニスタンのタリバン的要素がある、と言っている。
(4)ただしイランはハマスがイスラエルを攻撃することは知らなかった…と言う報道も出ています。寝耳に水だったようだと。
(5)サウジアラビアの法律はワッハーブ法と言う とシャリーア法というクルアーンを基にしたイスラム法の2階建構造になっていて、外国人には商慣習も含めて分かりにくい仕組みになっているらしい。
【本文中リンク以外の参考資料】
https://news.yahoo.co.jp/articles/0edf4003ed249a1686762206671a8f9cdaff71eb
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https://jp.wsj.com/articles/u-s-to-shift-millions-in-military-aid-from-egypt-to-taiwan-baebe493