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ドライブ・マイ・カー

いやぁ、西島さんもつくづくついてない。

ある日、仕事から帰ると家族が失踪していたり、

(ご飯が、ご飯が炊いてあったんです・・・)

そしてまた別のある日。帰ったら話があると言われて、やだなぁ、帰りたくないなぁと遅めに家に帰ったら妻が倒れててそのまま帰らぬ人となってしまったり。

はい、本家米国アカデミー賞ノミネートで話題の『ドライブ・マイ・カー』観てきましたよと。

ご飯が炊いてあったまでのくだりは本作とはまったく関係ないです、スマン。

(そこ書く必要、あった、なかった、どっち?)


さて(笑)。

村上春樹原作の短編集『女のいない男たち』に収められているタイトル作に同短編集の別の作品の要素を入れ込んであるそうだ。

観終わって原作も読んでみようかな、と思ったら、その短編集全部読めってことか。

本作の原作はおろか、そもそも村上春樹作品はまったく読んだことがない。


妻の死後から2年後が主な舞台になる。広島の演劇祭に招かれた舞台演出家、俳優の家福(西島秀俊)。滞在期間中は専用のドライバーを付けられることになっている。

そこで紹介されたドライバーがみさき(三浦透子)。

自分の車だから、あくまで自分で運転することにこだわるがテストドライブを経て、それでもまだ渋々任せることになる。

ロシアの作家アントン・チェーホフの4大戯曲の一つ『ワーニャ伯父さん』をもとにストーリーは展開してゆく。

役者オーディションから上演までを通して、またそれ以前も家福は車中でこの『ワーニャ伯父さん』のセリフが入ったテープを聞くのだが、その中で印象に残るセリフがある。

長い長い昼と夜をどこまでも生きていきましょう。そしてその時が来たらおとなしく死んでいきましょう。

あちらの世界では神様に辛かった、苦しかった、泣いたことを告げましょう、と続くんだが、当然車中でみさきもいっしょに聞いているわけで、次第に自らのこれまでの境遇を語りはじめ、家福に心ひらいてゆく。

このセリフは劇中ではワーニャの姪ソーニャ、車中のテープでは亡き妻が語っている。

そして、ワーニャ役の高槻の事件を期に上演か中止かの判断をするまでの2日間を使ってみさきの故郷、北海道上十二滝村へ陸送で向かう。

母親を殺した(見殺しにした)というみさき。妻の死は自分のせいだという家福。
みさきの生家跡地で家福ははじめて、これまで目を背けてきた自分の妻に対する真の意味の感情に直面する。

家福はみさきとの関係性によって救われるという再生ストーリー。それは劇中のワーニャとソーニャのように。

家福だけではなく、みさきもまたしかり。


映画を観てから原作、それから『ワーニャ伯父さん』まで読んだという方もいるようで、だけど、僕にはそこまでの体力がまだないから、今後ストリーミングやパッケージで観る時までには、少なくとも原作は読んでおこう。


当初韓国ロケが予定されていたそうだが、このヴァイラス禍、広島に変更されたそうだ。

個人的には広島で正解。

三浦透子さんがよかった。秀作です。



画像©️『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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