ポストカードでマーダーミステリーを


はじめに

 この記事は「Board Game Design Advent Calendar 2023」(https://adventar.org/calendars/9405)の25日目の記事として製作されました。ここ数年、マーダーミステリーのゲームデザインについての記事を書いてきましたが、今年はもうちょっと実践寄り、プロダクトデザイン的なお話になります。

 筆者は現在、ゲームマーケットの企画「ゲムチャレ2023」のお題にあわせ、ポストカードを使ってマーダーミステリーをつくろうと試行錯誤しています。その現状報告になります。
 印刷情報は、プリントパック(https://www.printpac.co.jp/)のものを使っています。プリントパックはネット印刷通販では大手で、価格も安定して安く、筆者もよく使っています。価格は2023年12月時点のもので、税込価格になります。
 なお、ネット印刷通販を使ったマーダーミステリー製作の実践例は、以下の記事でも説明しています。その記事ではA4のチラシ印刷を使っていますが、合わせてお読みいただくと参考になるでしょう。

ゲムチャレ2023

 国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」(https://gamemarket.jp/)では、「ゲームマーケット事務局が提案する『お題』に沿ってゲームをつくって、ゲムマに出展してみよう!」という、ゲームマーケットチャレンジ(ゲムチャレ)という企画があります。ゲムチャレ2023(ゲームマーケット2023秋とゲームマーケット2024春)のお題は「ポストカードが主役のゲーム」で、ポストカードサイズ(100×148mm前後)の紙を内容物に使うことが条件になっています。
 詳しいレギュレーションは以下を参照してください。

 ゲムチャレはコンテストのような優劣を争うものではなく、ゲームマーケット事務局からは作品を集めた展示スページが会場の一角に用意される程度のものです。前回のゲムチャレ2022(お題は32枚のカードだけのゲーム)はけして注目度が高いとは言えないものの、少なくない製作者がチャレンジしました。ゲムチャレ2023はすでにゲームマーケット2023秋で開催されていますが、参加作品もそれほど多くなく、盛り上がりにかけています。ゲムチャレ参加が作品のPRにつながるかどうかは意見がわかれるところですが、「チャレンジしてみる」ことの意義はあると思います。
 ゲムチャレ2022も秋よりも春のほうがもりあがりましたし、ゲームマーケット2024春(2024年4月27,28日開催)ではもっと多くの製作者がチャレンジし、話題になることでしょう(希望を込めて)。

ポストカード

●サイズ

 一般的なポストカードは100 ✕148 mm、A6サイズ(105✕148mm)にとても近いサイズです。多くのマーダーミステリーのキャラクターシート(設定書、ハンドアウト)で使われているA5サイズの約半分の大きさです。逆に、多くのマーダーミステリーで情報カード、証拠カードとして使われているポーカーサイズ(63✕88mm)に比べるとかなり大きいサイズです。A5のキャラクターシート1ページ分に比べると文字数は半分になってしまいますが、カードと比べると2.5倍以上の文字数が入ります。

ポストカードのサイズ比較

●厚さ(斤量)

 ポストカードの厚さですが、はがきの重さは2~6g(往復はがきは4~12g)と決められています。最小2gということは、最低でも斤量110g以上が必要です。なお、官製はがきの斤量は180kgと言われています。

  • 斤量 90kg 標準的なチラシ。この厚さでははがきとしては軽すぎる。

  • 斤量110kg 少し厚めのチラシ。はがきとしてはギリOK。

  • 斤量135kg 薄めのはがき。できればこのくらいはほしい。

  • 斤量180kg 官製はがきの厚さ。オススメ。

  • 斤量220kg カードゲームのカードの厚さ。高級感アリ

はがきとしてのオススメは180kgです。これならどこに出しても恥ずかしくないはがきっぽさです。一般的なカードゲームのカードよりは薄くなりますが、マーダーミステリーのキャラクターシートとしては十分でしょう。情報カード・証拠カードとして使うのにも適しています。

●往復ハガキと圧着ハガキ

 ポストカードには、通常の100✕148mmのものだけでなく、往復ハガキや圧着ハガキがあります。この両方とも、ゲムチャレ2023のレギュレーションで使うことが許されています。

往復ハガキと圧着ハガキ

往復ハガキ
 通常サイズの2倍、200✕148mmを二つ折りにした往復ハガキは、マーダーミステリーに向いています。まず、単純にサイズが2倍になることで2倍の文字量を入れることができます。ポストカードの1面のみをキャラクターシートにするには情報量が足りない場合でも、往復ハガキならなんとかなるかもしれません。
 また、マーダーミステリーのキャラクターシートには「秘密」が書かれており、これは配布時に見られてはいけません。往復ハガキのようにキャラクターシートが2つ折りになっていれば安心です。

圧着ハガキ
 往復ハガキのように2面以上あるものを、糊やフィルムで面同士をくっつけたものが圧着ハガキです。往復ハガキの形状を内側で圧着したものがV折圧着ハガキですが、往復ハガキよりも機密性が高くなります。
 また、L折やZ折の圧着ハガキなら、使える面がさらに多くなります。文字数を増やせますし、ゲーム中に追加情報として圧着部分をめくらせるというギミックも使えるでしょう(追加のキャラクターシートを配るかわりに)。
 ただ、問題点が2つあります。1つは通常のポストカードにくらべて、紙が薄いことです。圧着されているときにはしっかりしているのですが、めくってしまうとかなりペラペラです。そして最大の問題はコストです。通常のポストカードに比べると印刷代が3倍近くかかってしまいます。1枚だけならともかく、複数枚使う場合は覚悟が必要です。

●紙の種類

 紙の種類は、大きくわけて、表面の光沢のありなしで、

  • 光沢紙(コート紙)

  • 半光沢紙(マットコート紙)

  • 普通紙(上質紙)

の3つがあります。
 光沢紙は見た目がよく、よく使われていますが、おすすめは半光沢紙です。文字情報が多いマーダーミステリーは光沢をおさえたほうが読みやすく、高級感があります。カードゲームのごく普通のカード(表面がニス加工だけのもの)とよく似ています。
 もう1つ選択肢があるとしたら普通紙です。これは一般的なコピー紙のような表面で光沢はありません。その分、鉛筆でもボールペンでも比較的記入がしやすいです。何かを書き込まないといけない場合は、普通紙一択です。

●カラー/モノクロ
 実はカラーかモノクロかは、そこまで価格差が出ません。プリントパックではがき印刷、マットコート紙180kg100部の場合、

  • 両面モノクロ 1010円

  • 両面カラー  1190円

になります。しかもモノクロの場合、よりハイセンスなグラフィックデザインを要求されます。「モノクロームでノワールな世界観を表現したい」というハイセンスなこだわりがなければカラーを選択したほうがよいでしょう。

●コスト

 ネット印刷通販の特徴として、大量に注文されるもの(=ニーズのあるもの)は安くなるというものがあります。A4サイズのチラシや名刺などはその最たる例です。そして、ポストカード印刷も人気商品で、かつ加工も少ないため価格が低く抑えられています。
 ですので、アナログゲームの部材として、ポストカードは高いコストパフォーマンスを発揮します。カード(特に角丸のもの)に比べ、小ロットでも低価格で製作できるので、うまく使いましょう。
 例えば、通常のポストカード(マットコート180kg、両面カラー)は、100部で納期7営業日の場合、1190円になります。1枚あたり約12円。仮にポストカードを16枚使うマーダーミステリーだとしたら、印刷原価は1部あたり約190円になります。これはかなりの低コストと言えると思います。

ポストカードを使ったフォーマット

 では、実際にポストカードでマーダーミステリーを作る際の様式を考えてみましょう。ポストカードには、

  • 紙の設定書よりも小さくカードよりも大きい

  • 紙の設定書に比べて入る文字数が少ない

  • カードのように山札を作れる

という特徴があり、これらの短所と長所を考慮しなければなりません。そして、既存のマーダーミステリーの様式をポストカードに落とし込むのか、ポストカードならではの様式にしていくのか、様々な様式が考えられるでしょう。とりあえず考えられるのは次の3つの様式です。

  • 既存の様式をポストカードで

  • ポストカードの山札を利用した様式

既存の様式をポストカードで

 まず、一番単純なのは、現在のマーダーミステリーの様式をポストカードに落とし込むことです。具体的には、キャラクターシート(設定書、ハンドアウト)をポストカードにすることです。
 よくあるマーダーミステリーでは、キャラクターシートはA5サイズやB5サイズの冊子形式になっています(店舗公演などではA4サイズのファイルに入っていることも多いでしょう)。短くまとまったものなら、紙を2つ折にした4ページのものもあります。これをポストカードにするのです。
 しかし、簡単ではありません。ポストカードに入る文章量は少ないのです。単純に文字のサイズが同じなら、1ページあたりA5の半分、A4の1/4しか文字が入りません。ポストカードなら大きなサイズの冊子にくらべて小さい文字サイズでも読めますが、それでも限界があります。
 さらに問題なのはページ数です。普通のポストカードではオモテとウラの2ページしか使えません。しかも他のプレイヤーに見られないようにすることを考えると、実際に使うのは1ページ分のみです(往復はがきなら2ページ分を使うことができます)。
 しかし、これらを解決する手がないわけではありません。

1.キャラクターシートを複数枚にする

 一番単純な解決策は、枚数を増やすことです。1枚で足りないなら2枚、2枚でたりないなら3枚にすればよいのです。この手法は、「マーダーミステリーミニ」シリーズの秋口ぎぐる氏作品で使われています。

 これらの作品では、各キャラクターの情報は、3枚程度のカードにまとめられており、そのカードが設定書のかわりになっています。カードの大きさもよくあるカードの2倍以上の大きさでポストカードに近いサイズです。ポストカードでマーダーミステリーを作る際には参考になります。
 通常のポストカードなら、秘密の情報は相手に見えないようにオモテ面に書き、ウラ面は見られてもよい情報を入れる必要があります。ゲームの準備時にまちがってオモテ面を見ないように、梱包には工夫が必要です(どちらがオモテでどちらがウラかを示すカードを目隠しに入れておくなど)。
 「ポストカードでは文字量が少ないので枚数を多くする」というのは製作者都合の様式ですが、これをうまくゲームデザインに活かしていければ最高です。たとえば、

  • 全員記憶喪失で、最初は1枚しかキャラクターシートを持っていないけど、ゲームが進行するにしたがって2枚目、3枚目を得る

  • ゲームの展開によって次に得るキャラクターシートが変化する

  • あるタイミングでキャラクターシートのうち1枚を強制公開する

  • 3枚のうち1枚は偽りの刷り込まれた記憶である

などです。弱点である部分を魅力あるギミックにかえていくのが、ゲームデザインでもあります。

2.QRコードを利用する

 ポストカードに入る文章量が少ないなら、文章はインターネット上に置き、そこへのURLをQRコードで貼り付けてしまうという力わざです。雑誌「GMウォーロック」掲載のマーダーミステリーでも使われている手法です。たいていの人はスマホを持っているので、プレイ中にポストカードに貼られたQRコードをスマホで読み取り、インターネット上のテキストデータにアクセスすればキャラクター情報を読み取れます。利点は、

  • 印刷面の大きさを気にせず、いくらでも文章量を入れられる

  • QRコードを読み取らないと読めないので秘匿性が高い

ことです。
 URLをQRコードにするのは簡単です。URLをQRコードにする無料サービスがありますので、「QRコード作成」で検索してみるとよいでしょう。 URLを入力すればQRコードの画像データに変換できますので、それを印刷用データに貼り付ければよいだけです。

 究極的には、キャラクターシートやカード、ルールブックやエンディングなどをダウンロードして閲覧できるサイトを作り、そこへのURLをQRコードにして貼り付ければ、ポストカード1枚だけで完結させることも可能です。まあ、そこまでいくともはやアナログゲームなのかどうかあやしいですね。

 QRコードを使う場合の注意点をあげておきます。

  • テキストをインターネット上に置かないといけません。そのために多少の知識が必要です。手軽にやるには、WixやGoogleドライブがおすすめです。

  • 1枚のポストカードに複数のQRコードを載せると、カメラで認識するのが面倒になることがあります。適切に離して配置します。

  • QRコードが極端に小さかったり、URLが長いと印刷の精度によっては読み込めないときがあります。実際に家庭用プリンターなどで印刷してみてQRコードが読み取れるかどうか確認しましょう。

  • キャラクターシート、カードなど、いくつも情報があると、スマホの画面では切り替えが難しく、プレイ中に混乱してしまいます。1人のプレイヤーが読み取るURLはできれば5つ以内にしておくのが無難です。

 最後に。QRコードはURLだけでなく、素のテキストもQRコードにできます。この場合、インターネットに繋がらない環境でもテキストを読み込めます。印刷の精度や掲載時のサイズにもよりますが、200文字くらいのテキストなら普通に読み込めます(実際には、全角の漢字やカナなら最大1,817文字入りますがかなり大きなサイズになってしまいます)。ネット環境に左右されず遊んでもらいたい場合には、使ってみるとよいでしょう。

これでだいたい200文字くらいのテキストです

3.短い文章で作る

 文章量が多く入れられないのなら、文章を短くすればいい。言うは易し行うは難しですね。 とはいえ、必要な情報を短い文章で過不足なく伝えることは、製作側として大切なスキルと言えるでしょう。
 ポストカードとはいえ、8ポイントの文字サイズ(雑誌などでは標準的な文字サイズです)で、無理なくレイアウトして29文字×29行が入ります。文字数でいえば841文字、400文字詰めの原稿用紙で2枚分です。往復はがきの様式なら2倍入るので400文字詰めの原稿用紙で4枚分の文字が入ります。X(旧Twitter)のポスト(1ポスト140文字)なら12ポスト分です。なんか入るような気がしてきませんか?
 実際、名作「九頭竜館の殺人」の設定書は、見開き2ページに情報がまとまっており、文字数もその程度です。短くまとめるのは長い文章を書くよりもスキルが必要とは言われますが、挑戦してみてはどうでしょうか?

ポストカードの山札を利用した様式

 最後に、ポストカードをカードの山札のようにして順番にひいていくというものです。このようなタイプには、「Gamer Over!」や「サイレンが鳴り止む前に」などがあります。

 この様式では、内容物のカードをあらかじめ決められた順番になっている山札を、ゲームの進行にあわせて1枚ずつひいていきます。たとえば、ポストカード15枚のゲームを作るとしたらこんな感じになります。

 1枚目オモテ:表紙(このカードから順番にめくってください)
    ウラ :事件の発端
 2枚目オモテ:ルール1
    ウラ :ルール2(3~5枚目を並べてキャラクターを選ぶ)
 3枚目オモテ:キャラクターAのプロフィール(公開情報)
    ウラ :キャラクターAの個別情報1(秘匿)
 4枚目オモテ:キャラクターBのプロフィール(公開情報)
    ウラ :キャラクターBの個別情報2(秘匿)
 5枚目オモテ:キャラクターCのプロフィール(公開情報)
    ウラ :キャラクターCの個別情報3(秘匿)
 6枚目オモテ:前半議論フェイズの指示。全員公開の手がかり。
        (「10分議論したらウラ面を読む」の指示)
    ウラ :前半議論終了後の指示。
        (7~9枚目を並べて自分のキャラクターを選ぶ)
 7枚目オモテ:キャラクターAの追加情報(公開情報)
    ウラ :キャラクターAの個別情報2(秘匿)
 8枚目オモテ:キャラクターBの追加情報(公開情報)
    ウラ :キャラクターBの個別情報2(秘匿)
 9枚目オモテ:キャラクターCの追加情報(公開情報)
    ウラ :キャラクターCの個別情報2(秘匿)
10枚目オモテ:後半議論フェイズの指示。全員公開の手がかり。
        (「10分議論したらウラ面を読む」の指示)
    ウラ :投票フェイズの指示。
        (投票後11~14枚目のどれかを読む)
11枚目オモテ:エンディングA(Aが最多得票)の表紙
    ウラ :エンディングAの文章
12枚目オモテ:エンディングB(Bが最多得票)の表紙
    ウラ :エンディングBの文章
13枚目オモテ:エンディングC(Cが最多得票)の表紙
    ウラ :エンディングCの文章
13枚目オモテ:エンディングD(全員が1票ずつ)の表紙
    ウラ :エンディングDの文章
14枚目オモテ:事件の真相の表紙
    ウラ :事件の真相
15枚目オモテ:あとがき。奥付
    ウラ :こちらはウラ面です。見ないようにしてください

 この手法は、ゲームの進行と「山札を順番にひく」をリンクさせたもので、インターフェイスとしてとても優秀です。カードなどでもできますが、通常のポーカーサイズのカードにくらべると文字量を多くできるポストカードとはより相性がよいと言えます。
 前述したとおり、マットコート180kg、両面カラー、100部、納期7営業日のポストカード印刷は1190円で、1枚あたり約12円。15枚だと印刷原価は180円です。これをテープ付きOPP袋に入れても製造原価は200円しません。非常にコストパフォーマンスのよい商品と言えるでしょう。

ポストカードマダミスの実践例

 さて、ポストカードを使ったマーダーミステリーの可能性を探ってきましたが、実践例を見てみましょう。
 実際に筆者は、ポストカードでパッケージ版のマーダーミステリーのを作ろうと考えています。本当はゲームマーケット2023秋に出したかったのですが、多忙のために出すことができませんでした。ゲームマーケット2024春では出すつもりで構想中です。
 また、ゲムチャレ2023に参加するだけでなく、チャック横丁(外箱がないゲームをチャック袋などに入れて販売するブース)での出展を予定しています。そのため、外装には箱を使えません。

●往復はがき印刷

 まず、印刷は往復はがきを使うことにしました。やはり、ふつうのポストカードでは文章量が少なく、秘匿性が重要なマーダーミステリーでは二つ折のスタイルにしたかったためです。
 印刷仕様は、使い慣れているマットコート紙、厚さはポストカードでは標準の180kg、両面とも4色印刷です。厚さ135kgまでは普通に二つ折にすると折り目がきれいにならない場合があります。ですが、180kg以上なら、一度スジ入れ加工をして折り加工をするので折り目がきれいになります。部数は、チャック横丁では販売部数に100部の上限があるので、100部にします。
 さて、往復はがき(マットコート180kg、両面4C、100部、納期7日)の価格は2650円です。しかし、実は裏技があります。大判DM(厚紙フライヤー)でA5サイズ、マットコート180kg、両面4C、100部、納期7日にすると印刷代は1430円。A5サイズは148×210mmですが、これを148×200mmのA5変形サイズで裁断してもらい(変形でも追加料金はかかりません)、2つ折加工をしてもらいます。2つ折加工は100部なら660円なので、合計2090円。普通に往復はがきを印刷するより20%以上安くなるのです。ということで、100部刷って2090円。1部あたり21円ということになります。

●マーダーミステリーとしての様式

 ポストカードの山札を利用した様式も考えたのですが、結局一般的なマーダーミステリーの様式にすることにしました。つまり、1人が1冊ずつキャラクターシートを持ってプレイするタイプです。この様式は作り慣れていますし、ユーザーも遊び慣れています。
 情報カード、証拠カードのようなカードは使わないことにしました。ポストカードサイズのキャラクターシートだけでは情報量的に不安がありますが、カードをつけると「ポストカード」ゲームというコンセプトがぶれてしまいそうだからです。
 結局、ゲームマーケット2023春で無料配布した「ゲームマーケット2023春殺人事件」と同じ様式になりましたが、私の中ではこれが一番スタンダードな形です。

●内容物

 マーダーミステリーとしてはスタンダードな最小構成になったので、

  • プレイヤー人数分のキャラクターシート

  • ルールブック

  • エンディングブック

がすべてのコンポーネントになります。
 プレイヤー4人用で、すべて往復はがき印刷でやると、印刷代は1部21円、シートは6つ必要なので、1部あたり126円になります。これでも十分安いのですが、もう少し製造原価を下げるなら、

  • ルールブックを往復はがきではなくポストカードにする

  • プレイヤー4人用ではなく3人用にする

という手もあります。これならポストカード1枚(単価12円)と往復はがき4枚(単価21円)なので、単価96円になります。そんなに安くなっていない気もします。3人用は4人用にくらべて作るのが難しいこともあるので、これはちょっと考えないといけないですね。

●レイアウト

 ポストカードサイズは(マーダーミステリーとしては)特殊なので、あらかじめどのくらい文字が入るか、レイアウトを組みます。
 参考になるのは「マーダーミステリーミニ」シリーズです。「マーダーミステリーミニ」シリーズは「ミニ」を名乗るだけあり、設定書のサイズもミニサイズ。143×92mmなので、148×100mmのポストカードサイズにかなり近いサイズです。文字サイズなどの書式などもこれを参考にして決めます。

 結果として、1ページあたり、本文は30文字×30行。予想以上の文章量が入ります。これは本文文字サイズを8ポイントですが、7ポイントまではギリいけます(専門誌などの雑誌は7ポイントのものも)。7ポイントなら34文字×34行、いざとなればここまでいけます。

●OPP袋

 チャック横丁での出展になりますが、チャック袋(いわゆるジップロック)は使うつもりはありません。チャック袋は、中身を頻繁に出し入れするゲームには便利ですが、マーダーミステリーは何度も出し入れすることは少ないです(もしかしたら一度も出してもらえないかも……)。
 OPP袋は、

  • チャック袋に比べて袋の透明度が高く商品がきれいに見える

  • チャック部分がなくデコボコしないので、商品管理が楽

  • 商品を袋詰めしやすい

  • チャック袋に比べて単価が安い

と利点が多く、最近はチャック袋よりテープ付きOPP袋を使っています。
 AmazonでA6サイズのテープ付きOPP袋を検索すると、100袋入りが210円+配送料160円、合計370円で売っています。1部あたり4円くらいです。
 印刷代(4人用の場合)が126円なので合計で130円。いい感じです。

文章量にあわせたゲームデザイン

 商品の見た目が見えてきたので、内容を構想していきます。
 1ページ30文字×30行で、2ページなので1800文字。400字詰め原稿用紙で4枚半。「少なすぎて作れない!」というほどではないですが、やはり文字数がカセになる気がします。カードも使いませんし、全体の情報量はどうしても少なくなってしまうでしょう。
 となると、「情報量が少ない」ことを前提に、それでもおもしろいゲームデザインにしなければなりません。ここで素晴らしいトリックや謎が用意できればいいのですが、残念ながら筆者はそういうタイプでもありません。

  • 情報量にあわせると、どうしてもプレイ時間は短くなる

  • プレイ時間は10~15分の議論が1回。すべて入れても20~30分

  • プレイ時間が短いなら、とんでもなく難しいか、簡単に解けて読後感がよいショートショートのようなものがよいかも

  • いっそ意地悪クイズのような「こんなのマダミスじゃない!」っていうのもアリかも

  • 時間が短いなら許してくれるかも

  • とはいえ、商品としては一定の満足度がほしい

  • ショートショート集のように、短編がいくつかあるのはどうか?

という感じですすめています。1本だけなら石を投げられそうなひどいマーダーミステリーでも、何本か集めれば味わいも出てくるかもしれない、という甘い考えです。
 さて、これがちゃんと形になるかどうか、ゲームマーケット2024春を楽しみにしてください。

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