M♡K【毎週ショートショートnote】600文字

【お題:呪いの臭み】
被害者は30代の男だった。
部屋には争った形跡もなく、
凶器も見当たらなかった。
それどころか男には外傷も無かった。
刑事歴30年を超えるベテランの田中警部は
眉間に皺を寄せながら、うなるばかりだった。
「田中警部」
佐々木巡査だった。
「被害者の男は特に病歴もなく、
会社も事件前日まで普段どおり、
ご近所との関係も良好でした」
男はソファに腰掛け、
腕はダラリと垂れて、
うなだれたまま息を引き取っていた。

田中警部は、
被害者の右手の薬指にあった
ゴールドの指輪に目がいった。
近くで見ると、
“M♡K”の刻印
「佐々木巡査、被害者の名前は？」
「はい、スズキ　マナブ。34歳です」
田中警部はすかさず玄関に駆け寄り、
靴箱の上にある写真立てを手に取った。
そこにはスズキと若い女が写っており、
写真の下には
“マナブ♡キョウコ”の文字
「なんだか臭うな」
警部の嗅覚が働いた。
写真立て横の壁にはカレンダーがあり、
田中は月を遡ってめくっていった。
週末や休日にはKの文字。
それが2ヶ月ほど前から、
ちらほらとR。
先月にはRの文字の方が多くなっていた。
「こりゃ呪いの臭みだな」
「なななんですか？警部」
「ウワサには聞いたことがあったが、
30年の刑事人生で初めてだ」
「それって事件ですか」
「事件も事件の大事件！
これまで一度も立証された事がない
迷宮入り必至の事件だよ。
呪いの臭みによる窒息死。
愛のもつれは警察の管轄外。
まったく怖いねぇ」

ーーーおしまいーーー
恋の真っ只中はフローラルな香りも、
もつれてしまうと大変だなぁ😊

たらはかにさんの企画
毎週ショートショートnote
久しぶりの投稿、削りに削って600文字
の制限オーバーですがよろしくお願いします。