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肩甲骨を動かし過ぎると危険ですよ・・

私の記憶が確かなら、
肩甲骨を動かすと良いと言い始めたのは褐色脂肪細胞が話題になった30年ほど前だった。

褐色脂肪細胞とは、熱を作り出す脂肪細胞でエネルギーをたくさん消費するためダイエットには夢のような細胞とされた。
この褐色脂肪細胞が背中の肩甲骨付近に多く存在することから、肩甲骨を動かすことで消費カロリーが大きくなると話題になった。

しかし、大人になると減少することが分かり、話題はすぐに終息した。


近年では、寒さによって活性化する細胞であって、運動によって活性化する細胞ではないことが分かっている。

つまり、運動をしても褐色脂肪細胞の効果は期待できず、もし活性化させたいのなら水温10℃程度の冷たい水に入ることで活性化されるようだ。

また、肩甲骨周辺には大きい筋肉があるという人もいるが、実際、肩甲骨に付着している筋肉に大きな筋肉はない。強いて言うならば僧帽筋であるが、肩凝りになるほど使われているのに、特別な運動効果を期待するには無理がある。


ということで、なぜ肩甲骨を動かすと運動効果が上がるのか、パフォーマンスが上がるのか、説明できる要素は全くないのである。

にもかかわらず、肩甲骨を一生懸命動かしている人を見ると、私にはリスクの大きさしか目に入ってこない。



肩甲骨は後ろから見て上・下・内・外に動くが、運動で意識的に肩甲骨を動かしている人を見ると、上と内・外の3方向しか動かしていない。

肩甲骨を下に動かしていないのである。

肩甲骨を上に動かすと、肩をすくめる動きになる。肩をすくめると分かるが、肩を真上に上げたつもりでも肩が前に巻くような動きも同時に入ってくるので、肩甲骨を上げると外にも広がる。これは背中を丸める動きである。

肩甲骨を外に開くようにすると、背中を丸めることになる。同時にほんの少しだが、肩をすくめる動きが入ってしまう。

肩甲骨を内(中心)に寄せるように動かすと、顔が前に出る。つまり、縦方向に背骨が丸くなる。

運動で肩甲骨を動かそうとしている人の動きを解析すると、基本的にこれら3つの動きしかしていないのである。すべて、姿勢を悪くする動きになってしまう。

加えて、肩甲骨を動かすことで姿勢が良くなるという人もいる。
この目的で行う人は日常生活で姿勢が悪いことを自覚している人だ。
そんな人が良かれと思って肩甲骨を動かしても、運動の本質はいつもの悪い姿勢を強調するか、違った悪さを取り入れるかの二択である。

逆効果である。

★もしも、肩甲骨を動かそうと考えるのであれば、肩甲骨を下に下げることを意識するべきである。

これをできるようにするには、お尻をクイッと上げてアゴを引いた姿勢ができなければ不可能である。

実はこの状態はウエイトトレーニングなど重い負荷をかけるときの基本姿勢であり、運動の準備姿勢でもある。実際にやってみてもらえばわかるが、いつも姿勢の悪い人がやると腰から背中の筋肉が痛いくらいに使われるため、この姿勢をとるだけでかなり厳しい筋トレになるだろう。

この基本姿勢が取れて、肩甲骨を真下に下げることができるようになったなら、肩甲骨を動かすことを勧める。


最後に、最近肩甲骨を動かすことが良いことと言う人のほとんどは、水泳の経験者から広がっているように感じる。

重力の影響が少ない水中で、効率よく水をかくためには肩甲骨を動かして多くの筋肉を使うことが重要である。

しかし、私たち人間は重力の影響が大きい陸上で生きている。
立っているだけで体重の重さがかかってくる空間で生活している。
その場合、できるだけ骨に重さを任せて筋肉は重さを受け止めないようにする必要がある。

肩甲骨を無駄に動かすと姿勢が崩れ、骨を上手に使えなくなる。

すると、立っているときに腕を筋肉で持っていなければならなくなる。
片腕で5㎏以上ある腕を首から肩周辺の筋肉が持ち続けながら、肩を回す運動をすることになれば、疲労困憊になるのは想像がつくはずである。

できることなら、腕は鎖骨でつるしておけば骨が重さを受け止めてくれる。

その為に、姿勢が崩れないことが重要で、無駄に肩甲骨を動かすことが姿勢を崩してしまうリスクになってしまうのである。

こんな考え方も理解してほしいものである。

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