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米国不動産管理業の最新テクノロジー【iRenters】とは

不動産管理業界にも新しいビジネスモデルが展開されているアメリカ社会。アメリカならではの不動産管理業の問題を解決するために様々なテック企業が登場している。i-Buyer、i-Fouderはいずれも売却、購入といったフェーズでテクノロジーを活用しているが、契約引き渡しを円滑にするi-Closerや賃貸物件として管理をしていくためのi-Renterといったジャンルもある。これらのテックプレイヤーを総称してi-Marketplaceとも呼ぶ。
本日は日本でも応用可能な米国不動産管理業の最新テクノロジー【i-Renters】について解説していきたいと思う。

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■アメリカ人の仕事観

アメリカはアメリカなりの独自の問題がある。例えば従業員の質や入居者の質のばらつきが非常に大きい事から、そこで日本とは違ったテクノロジー活用の必要性が生まれてくる。よく聞く話だと思うが、アメリカ人は自分が言われた仕事以外は、絶対しない。自分で解決できそうな問題が目の前にあっても、自分の仕事でなければやらない、これがアメリカ人の仕事観だ。欧米諸国は基本的に共通の価値観・知識がない前提でのコミュニティであるローコンテクスト文化だ。日本は「おもんばかり、忖度」して仕事進める。相手がこうして欲しいだろうなというところから発想が始まるのだ。

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出典:ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化
https://ssl.pan-nations.co.jp/column/226.html

一方で欧米諸国では、相手が何に喜ぶか、何をして欲しいかが基本的にわからないというのが前提の為、そうした配慮に使う時間は無駄以外の何者でもないわけだ。だから自分のことだけを主張する。それ故にアメリカで不動産管理する場合、多様な人がいすぎるが故の問題が生じるのだ。

■アメリカの不動産管理会社のメインタスク

アメリカの不動産管理会社のメインタスクを大きく四つに分けると、
Tenant ScreeningとRent Collection、Routine inspection、そしてHandling Complaintとなる。入居審査と家賃回収、保守修繕、クレーム処理の質が日本とは異なるものが求められる。

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Tenant Screening(入居審査)で大事なのがクレジットスコアと犯罪歴、職業、立ち退き履歴である。きちんと家賃を払ってくれるかどうか、そして賃貸物件にトラブルを持ち込まない人かどうかという調査だ。クレジットスコアは、これまでのクレジットカードや家賃の支払いやローンの支払い状況、未払い残高、履歴の長さなどによってスコアリングされている。支払い履歴に影響する項目としてはエビクションヒストリーとエンプロイヒストリーも調べる必要がある。
エビクションは過去に立ち退きさせられたことがあるか、未払いの家賃が裁判所経由で徴収された過去があるかどうかなどを調べることだ。エンプロイヒストリーは職を転々と変えていないかということによって、家賃と生活費をきちんと確保できる安定収入のあるテナントかどうかというのを調査する。最後の犯罪履歴は暴力犯罪、性犯罪、薬物犯罪などの有罪判決を受けたことがあるかどうかを調べる。
こうした個人情報を調べることにより、差別だと言って訴訟を起こされてしまうケースがあるので、調べ方やルールなどが規定されている。
テナントの信用情報を調べるのがいかに大変ということがわかってもらえたと思うが、そうしたものをまずテクノロジーで代替する必要がある。

次のRent Collection(家賃の徴収)だが、小切手で支払われることが多いことからこちらも面倒である。クレジットカード引き落としなどもあるが、家賃の支払いで一般的なのはやはり小切手だ。アメリカで銀行口座を開設するとCheckbookがもらえ、これで公共料金や医療費、家賃の支払いをする。その後、回収したらそれを銀行に持っていって換金する流れになる。
ここもテクノロジーで代替できる分野だ。

Routin inspection(保守修繕)については先ほども説明した通り、職人の質が悪くてばらつきも多い。だからどうやっていい職人を手配するかという解決策が必要になってくる。

最後がHandling Complaint(クレーム処理)だ。アメリカは訴訟大国であることから、小さいことでも訴えられる。その為、なるべく迅速に自動的に対処するための解決策も必要だ。
そして、こうした問題を解決するために様々なテクノロジープレイヤーが出てきていて、オーナーや不動産管理会社にサービスを提供しているわけだ。

■プレイヤー紹介 ①Cozy

i-Rentersで一番有名なのがCozyだ。2012年創業のポートランド本社で、これまでの調達額は18.4Mドル、シリーズBの企業である。不動産オーナー向けのワンストップサービスを提供するSaaS型のテックプレイヤーで、基本機能は無料で使えるフリーミアムのビジネスモデルを展開している。もともと月額9ドルのサービスが基本だったが、なかなかオーナーを開拓できなかっ
たということで、フリーミアムのビジネスモデルに展開して、オプションの有料サービスに誘導するようにしたわけだ。
有料サービスには、カード決済が2.75%の手数料、オンライン分析ツールが39.99ドル、入居者保険が平均20ドル、支払い処理の高速化が2.99ドルとなっている。このフリーミアムのモデルによって、急成長することができたとインタビューで答えている。
Cozy: https://cozy.co/for-renters/

■プレイヤー紹介 ②Avail

オーナー向けのアプリとしては、シカゴ本社で同じく2012年創業のAvailも注目されている。どのデバイスからでもTenant Screeningができ、オンラインで賃貸管理業務が完結するend to endプラットフォームとなっている。こちらも基本はフリーミアムモデルで、基本機能は無料だが、オプションサービスを利用するには一ユニットあたり月額5ドルが必要という料金体系になっている。
Avail経由で家賃を払うと、入居者がクレジットスコアをあげることができる「クレジットブースト」というサービスもある。月額3.95ドルのクレジットブーストサービスを使うと、自動的にF I C OやVantageScoreにクレジットヒストリーが報告されることにより、クレジットスコアが上がるということだ。
Avail: https://www.avail.co/

■プレイヤー紹介③ Bungalow

次に紹介するのがサンフランシスコにある、2016年創業のBungalowという会社だ。ここが面白いのは、ビジネスモデルである。ルームシェア用の部屋を転貸しているモデルの為、基本サブリース会社だ。転貸の為、住宅版のWeworkと言われることも多いが、特徴としてはとにかく賃貸有効スペースを増やすというところである。オーナーから既存部屋をマスターリースで借りて、倉庫だとか収納などを改造して部屋数を増やしてサブリースすることによって差益を稼ぐというものだ。
入居者からすると、シングルルームを借りるよりもシェアルームを借りる方がコストが安くなるということで、メリットがある。入居者サービスにも力を入れていて、共有スペースの提供やソーシャルカレンダーの利用など入居者同士のコミュニティを形成させるためのサービスを提供している。Bungalow: https://bungalow.com/homeowners

■プレイヤー紹介④ Doorstead

同じようなサブリース会社としてはDoorsteadがある。こちらは2019年に創業したばかりのシードラウンドだが、ビッグデータアルゴリズムを解析することで、最低保証額をオーナーに確約するというもので、家賃の8%を徴収して、価格設定、広告、テナントヒアリング、補修、メンテナンス、オンライン賃料回収などを処理するモデルになっている。
Doorstead: https://www.doorstead.com/

■プレイヤー紹介⑤ Latchel

最後がシアトル本社のこちらもシードラウンドの企業である、2016年創業のLatchelだ。創業者がアマゾン出身ということで、アマゾンのデリバリーノウハウを活用したビジネスを展開しようというものだ。適切なタイミングで適切な人にサービスを提供するアマゾンのロジスティックノウハウは、家の保守修繕対応にも応用できるということで、ホームアシスタンスサービスとして、24時間対応のクレーム処理と緊急保守対応を提供しているBtoBのビジネスモデルの企業である。

こちらもフリーミアムで、基本機能は無料で利用できる。面白いのが専門家サポート体制で、Uberドライバーのように3000人の請負業者のネットワ
ークを構築していて、登録業者は担当したいクレームを自由にピックアップして対応するスタイルになっている。
このシステムによって請負業者の質も担保できて、また対応エリアも広げやすくなっているということだ。
Latchel: https://latchel.com/

■最後に

今回はアメリカ不動産管理業界の新しいテクノロジーである【i-Renters】を紹介した。テクノロジーが必要とされる背景や機能についてのノウハウは、日本企業に応用できることだと思っている。今後も引き続き、最新の海外情報を掲載していく。

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