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恐怖の電撃!田植えと害獣


山梨の実家で、田植えを手伝ったときの話です。


5月28日に山梨の実家で、久しぶりに田植えの手伝いをしました。

私が子どもの頃、父は専業農家でもないのに、村の人々の田んぼを広範囲に請け負って、田植えや稲刈り、脱穀まで一通りやってあげていました。もちろん手数料は頂きます。

もっと昔、田植えや稲刈りは人力で行っており、休みの日などに近所総出で順番に田んぼを回り、大勢で一気に片付けるのが当たり前でした。田舎の人は近所付き合いを大事にしていますが、別に仲良しで一緒にやっているわけではなく、それなりの理由があります。

というのも、個々の家庭が個別に何週間もかけて其々の家庭で少しずつ植えていると、その間に稲の成長にばらつきがでてしまいますからね。それぞれの田んぼを皆んなで協力して一気に終わらせることには、このような合理的な理由があり、おそらく江戸時代、いやもっと前からの習わしではないかと思われます。私はそれをギリギリ経験した生き残りです。

そんなもっと昔の時代、好奇心旺盛の父は、普段は林業をしていたのに、手作業の効率の悪い農作業を改善しようと、当時の最新型の農作業機器を個人で購入しました。

それにより、農作業効率は一気にアップし、自分の家の分だけだとあっという間に終わってしまうので、他人の家の作業も代わりにやってあげられるようになりました。

そうなると、以前のようにサラリーマン家庭が仕事の合間に、手間のかかる苗代を自分の家の分だけ育てたり、田植えの度に駆り出されることも必要無くなりました。なぜなら、そういった下作業も、大勢集まらないとできなかった田植え自体も、機械を持っている人が全部請け負ってやってしまった方が効率が良いからです。

このようにして、機械を持たない人は機械を持つ人に、農作業を一手に(工程管理的に言うとワンストップで)任せるようになりました。こういった経緯で、いつの間にか父は他人の田んぼの稲作も請け負うようになっていったのです。

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父は村でも評判の働き者で、農盛期になると、朝は暗いうちから起き、夜は暗くなるまで働き、20時には寝てしまうという生活を送っていました。仮に4時に起きていたとしても、20時には就寝していたので、睡眠時間は8時間は取れていたことになります。身体が資本の仕事だったので、健康的な生活は必要だったのでしょう。(農閑期は少し楽になります)

本業に加え副業もやっていたわけなので、たとえ機械にお金を投資したとしても、人一倍働いていれば、普通はひと財産築きそうなものですが、好奇心旺盛なうえに新しもの好きという性格が禍(わざわい)したのか、新型の機械が発売になると、おそらく減価償却が終わっていないだろう比較的早いサイクルで旧型を下取りに出し、まだ買い替えなくても良さそうな新型の機械を、父は勇んで購入していました。なので、父がいくら働いても、実家があまり裕福にならなかったのは、そのせいだったと思われます。

なんたって、トラクターや田植え機、稲刈り機などの農耕用マシンはとても高価で、普通にまあまあの外車が新車で買えますから。コンバインなんか、下手すりゃ家が買えます。


実は、父が新しもの好きだったことを知ったのは、父が亡くなってからの話で、子どもの頃は、きっと農作業機械メーカー(名前は伏せます)の営業マンが巧妙に父をたらしこんで、どんどん売りつけていたんだと信じ込んでいました。なのでその営業マンが家に来ると、子どもながらに露骨に無視していました。

ところが父が亡くなったあと、実は新型の機械を次々に買っていた理由は、農作業機械メーカーの営業マンのせいではなく、ただ単に父が新しもの好きだったからと聞き、正直、呆れました。農作業機械メーカーの営業マンは濡れ衣でした。ごめんなさい。

まあまあそうは言っても、決して裕福な家庭でも無かったのに大学にも行かせてもらえたし、不自由なく学校に通えたのも親のおかげです。新型の機械を購入することで仕事が楽しめたのであれば、それはそれでいいんじゃないかな~と思えるようになりました。

子ども時代の価値観は同じではなかったものの、結局、大人になったら、お金より仕事の満足度を選んでしまっている点は変わりませんから。

さて、前置きが長くなりましたが、久しぶりに手伝った田植えは、現在は兄が自分の家の分だけを小規模な田んぼで作るだけなので、これまで父が使っていた贅沢な機械を使えば、あっという間に終わってしまいます。

田植え (1)

田植え (3)

田植え (4)

田植え (6)

田植え (7)

一番大変な苗代作りも、たった10箱の育苗箱(いくびょうばこ)を世話するわけもなく、兄の友人が作ったものを有料で分けてもらっているので、田植え自体は半日もかかりません。もちろんそれまでの地均し(じならし)作業や、機械のメンテナンス等に時間はかかっていますが、田植え自体はあっという間でした。

それより私が興味を持ったのは、動物から苗を守る電柵(でんさく)です。

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電柵づくりは私が担当し、電線をかける杭の間隔設定とその杭の打ち込み、それからそのあとの電線を取り付ける作業までをやらせてもらいました。

田植え (10)

田植えと同時進行で行っていたので、田植えが終わる頃には電柵作りも完了しました。


「ところでこの電柵は、どういう動物の、どんな被害を防ぐため?」

「春は鹿の苗食いと、秋は鹿の稲食い」「それと、猪の泥浴び、」

「えっ?イノシシの泥浴び?」「何のために?」

「猪って、身体に付いた寄生虫を追い払うために、よく地面に身体を擦り付けるんだけど、それを田んぼでやるんだよな。たぶん、田んぼの方が気持ちいいんじゃないのか?人間と同じで風呂に入るようなものかもしれない。」

「へぇ~、苗を食べるためじゃないんだ~。」

「苗を食べなくても、泥浴びのせいで、周辺の苗が全部倒れちゃうんだ。食べなくても倒されたら稲が成長しないし、そのおかげで、植え直さなければならなくなるんだ。大迷惑だよ。」

「100歩譲って、苗を倒さないで泥浴びするんなら、別に入ってもいいけどな。あるいは、倒した後、元通りに苗を修復してくれればいいけど。」

「クレイジー・ダイヤモンドだ!(ジョジョに出て来るスタンド)」

「ん?」

「あー 何でもない、こっちのこと。(でも、イノシシがスタンド使いだったら笑える)」


鹿が作物を食べに来るのは想定内だったけど、猪の泥浴びは意外でした。

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出典元「イノシシに注意!新緑ハイキング」


「それで、電柵の高さはどれくらいにすればいい?」

「だいたいでいいよ。下の方は地面から20~30cmくらいで、上もそのくらいの間隔でやればいいから。」

「低過ぎると飛び越えられてしまうし、高過ぎるとウリ坊にくぐられてしまうから、ちょうどいい高さになるようにする必要があるぞ!」

「あと、鹿は電撃ショックで驚いて角を引っ掛けて電柵を倒すこともあるから、たまに見に来て電柵の無事を確認しなければならないんだ。」

「なるほど。」


「道路側は電柵をしなくていいの?」

「舗装された道路までは入ってこないから、そっちはいいよ。」

「でも、最近は、道路側から入ってくる賢い奴も出てるらしいから、本当は道路側もやった方がいいんだけどな。今回はいいよ。」

「賢いともいえるけど、道路側は水路を乗り越えたり、イノシシにもリスクがあるからね。」

「うちはまだ、やられたことないから。」


電柵が苗を食べにくる動物対策と思いきや、まさかの泥浴び対策を兼ねていたとは..。なんなら、田んぼを1つくらい解放して、猪の泥浴び用に提供してあげたらいいのにと思いました。

そういえば昔、インドネシアのレストランでナシゴレンを食べた時、尋常じゃないハエの攻撃に遭い、ハエを追い払うために5秒ごとに手で払い続けたけど、それに疲れて、テーブルの隅にハエ用にナシゴレンの塊を置いてあげたところ、ハエの軍団がそっちへ集まり、攻撃を避けられたということがありました。

若干の無駄は生じますが、このような囮作戦というか生贄作戦は、WinWinに成り得るかもしれません。ただ生贄作戦は、短時間の見張りが居る間だけ効果があり、また、猪側からすると、どの田んぼが猪用に解放されたものなのか見分けが付かないのでダメですね。あと、鹿は泥浴びしないので、結局電柵は必要なのです。


電柵の設置後、通電チェックをすることになり、別に動物が死ぬほどの電圧ではないというので、試しに触ってみたところ、普段イタズラで使っていたビリビリペンやビリビリマウスのショックの比ではなく、心臓の悪い人だったら死ぬんじゃないかと思うほどの物凄い衝撃でした!!

田植え (9)

よくバラエティ番組の罰ゲームで使われる「低周波治療器」を、遊びで出力を最大にして触ったことがあるけど、たしかにあれはあれで針で刺されたような痛さがありますが、この電柵の衝撃はそんなものではなく、まるで肩にボーガンで放たれた矢が刺さったくらいの衝撃です。(刺さったことはありませんが) もっと分かり易く言うとビリビリペンの20倍くらいの衝撃です。(余計分かり難い) 

ビリビリペンは笑って済ませられますが、電柵の目が覚めるようなビリビリは、訴えられても仕方ないくらいの衝撃です。そりゃそうですよね、猪が逃げるくらいなので。


電柵はたいへん危険なので、田んぼで電柵を見たときは、決して触らないようにしてください。


恐怖の田植え体験を動画にまとめました。

こちら→https://youtu.be/P9qrx7hUgMM


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