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「君とぼく」

現代詩 午前零時の再登板 №7

ありがとう
君はいつもぼくのことを
気にしてくれている
ドアを開けると
そこにいて
君がぼくで
ぼくが君で

驚きはしない
長年の付き合いだ
はっきり見えるわけではない
君はいつも
ぼくの視界の隅にいる

君の考えることは
ぼくが考えることで
ぼくは君を見る
君はぼくを見るだろうか
互いに
いつもそばにいる
見えないが 存在は伝わる

蒸し暑い夜
外の空気が吸いたくて
マンションの外廊下に出る
誰もいない
住人なんていない
でも
君はいる――

ぼくを慰労してくれるかい
長のお勤め
ごくろうさんって

君に言われるのが
一番うれしいよ

君がぼくで
ぼくが君なんだから
当たり前のことさ

ぼくは君を見たくて
君はぼくを見たくて
互いに見たくてみたくて

振り返り 顔を向けた

下に降りるエレベーターの前で
君は消えた

ぼくもいつかは消えるんだ

よいお年を」(2021年12月28日)を改変

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