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【ニュース詩】「モダン・タイムス」

61歳の女性が
大手製パン工場の和菓子製造ラインで
ベルトコンベヤーに巻き込まれ
死んだ

新聞に彼女の名前はあったが
どういう人生を送っていたのか
新聞は
そんなことに1行も触れない
他人事である 誰の関心もひかない と

ベルトコンベヤーに巻き込まれる
――なんて
チャップリンの「モダン・タイムス」(1936年)の頃から
いや ずっとずっと前から
人は機械の一部として
使役されてきた

一歩 一拍が狂うと事故だ

製品のオシャカにびくびくし
働く者のリズムが狂う
けがや 最悪 死に至るなんて……
パンだろうが だんごだろうが 車だろうが
そんなことになるのは 御免だ イヤだ

だがしかし
機械のひとつ
部品のひとつ――として
人は働かねばならぬ
そんなこと わかってる

危ないからといって
働かないなら
ゼニカネにはならぬ

きっと
彼女もそうして働いてきた

同年代の者として
遠いできごととは思えない

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