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■マネして、模倣して、学ぼうか

「詩集」を読んで (22) 不定期刊

◇詩・池井昌樹 写真・植田正治
手から、手へ 集英社 2012年10月刊

内容

一回だけの人生だけど、一回じゃない。
「やさしい子らよ」と「ちちはは」はつながっている。
読後に、今迄に感じたことのない大きな安心が読者を包む。詩は三好達治賞など数多くの受賞歴に輝く現代詩人の池井昌樹。ひらがなでうたう詩は命の奥底からの声。写真は植田正治。
戦前戦後を通じて鳥取島根で活躍。「植田調」といわれる作品は植田だけの世界。何気なくて深い。世界で高く評価されている。ことばと写真の奇跡の出会いで生まれた家族のものがたり。支持され続けてロングセラー。

(Amazon)

ぼくの感想

図書館で偶然手にした、この詩人の下記2点の詩集を読んだ後、この写真付きの「絵本」を読んだ。
写真と詩が一体化し、ボリュームは少なくとも、味わい深い1冊になっている。
植田正治という写真家は、つい先日、日経新聞の記事「写真家がいた場所(10)植田正治『パパとママとコドモたち』」を読んで初めて知ったのだが、使われている写真は池井の詩とはまったく別に戦前の鳥取で撮影されたものである。

そうか――こういうやり方があるか、と思った。

自分の詩、文字だけで訴える力はあまりに非力。画との組み合わせで世界は広がるのだろう、と。noteに投稿するための写真をスマホ、一眼レフで撮り続けているが、これまた非力ではあるが。

池井の1編の詩と、昭和期前半に撮られた写真を組み合わせ、「絵本」として編んだのは集英社の漫画雑誌の元編集者、山本純司。同社在職時の2009年に「現代詩手帖」思潮社主催の詩のイベントで池井の詩「手から、手へ」の朗読を聞き、本書を作ることを思いついたという。

1編の詩と組み合わされた13枚のモノクロ写真が効果的だ。こういうの、自分でも作ってみたい、と思った。

これら写真は「UEDA CHO」として海外でも知られているそうだ


◇池井昌樹 眠れる旅人 思潮社 2008年9月刊

内容
あなたとともにいるひとときの あんまりたのしいものだから こわくなる このひとときはおおぜいの はかりしれないさびしさの うえにむすんだつゆではないか(「つゆ」より) 「童子」より2年、新たな境地を拓く新詩集。三好達治賞 第4回。

台東区立図書館データ


◇池井昌樹 一輪 思潮社 2003年6月刊

内容
ちいさなうちにくらしていても まいにちゆめをみています まいにちたよりもとどきます とおくからまたちかくから うれしいたよりがとどきます 世界の終わりでわらべ唄を歌うように、ひらがなで綴った詩集。

台東区立図書館データ

ぼくの感想
現代詩というものの存在を認識し、読み、書くようになってまだ2年もたたないが、今回初めて池井昌樹を知った。

何度も書いているが、難解な言葉、表現、ひとりよがり…。それらが評価されてしまう現代詩世界に疑問を持ち続けてきた僕にとって、ようやく自分の気持ちにすっきり入って来る詩に出合えたと感じた。

ひらがなで七五調でつづるというのが基本的スタイル。
1行の文字数をそろえる作品も多い。
句読点がなく、ひらがなだけだと言葉の意味が取りにくい詩もあるが、すーっとわかる、感じられる作品がほとんどである。

分かりやすいけれど、安っぽくなく、心に響く。書き手の人柄も伝わってくるような詩が多い。
この人のスタイルをマネしていくつか書いてみたい、と思うのだけれど。
インスパイア―されたっていう感じのものならよいが、下手なマネはよくない。うまくやらないと。

引き続き、読んでいきたい詩人だ。知るのがちょっと遅かった。

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