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「いじめ」

少女たちは 時にひっつき 時にはなれ
きょうはじゃれあい
あすは無視しあい
あさってはまた手をつなぐ

その繰り返しくりかえし

少女たちは時にターゲットを絞り
狙いを定めて
「1人」を集団で囲む
「1人」はきのうまでとは違う仲間の目に
自分の置かれた立場をのみ込む

中の1人がターゲットの「1人」に向け 周りに目配せをする
合図とともに
1人が「1人」の体育着のジャージを引きずり下ろす
笑いが上がる
「1人」の頭の中は真っ白
抵抗することもできぬまま
小さな花柄のプリントされた白いパンツの尻をさらす
瞬時に真っ白になった頭を切り替え
顔を真っ赤にしてジャージをずり上げる―
集団はその場を離れてから また笑い声を上げながら 「1人」の視界から消えた

30年以上前の板橋区立中学時代の出来事を
あなたは語った
そんな話をぼくは聞こうと思ったわけではない
ぼくにそんな物語をするのはなぜか
あなたはきっと ぼくを酔わせたかったからのかしら
いや とっくにぼくはよっていたのだけれど


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