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■大詩人は「詩」と どう向き合うのか

「詩集」を読んで 吉増剛造(10) 不定期刊

「詩とはなにか」 (講談社現代新書 2021年11月刊)

2月に「前衛」ということで、よろしいかで、芸術院会員の大詩人最新詩集を理解できない―と書いた。
ほぼ、同時期に出版されたこの本は、詩集ではない。エッセーである。語りおろしのスタイルを取りながら、御年83歳(1939年2月22日生まれ)のご本人が書いたのかもしれないが、基本は語り口調の文章になっている。
複数、彼の詩集を手に取って、「わからん」「共感できない」としか感じなかったが、この本は勉強になった。
大詩人がどういうことを考えてきたかが、ある程度理解できた。
朔太郎、田村隆一、吉本隆明、吉岡実ら少しだけ読んだことのある国内詩人。ディラン・トマスなんて名前しか知らない、パウル・ツェランなんて聞いたこともない海外詩人の人となりや作品、そしてジャズ、クラシックからジミ・ヘンドリックスまでの音楽やら…。大詩人の様々な芸術体験で感じたことを踏まえての、ものの見方が記されている。

彼が書く、前衛的な詩も、実は日本の七五調の音韻が生きていることやら、内外の古典の持つ意味を説いている。それらを読み、彼の詩にも感情が出ていることが、ようやく理解できた。

何十年も、詩、文学に触れて学び、それを自身で表現してきた人と、詩に触れてほんの1年半に満たない僕が読んだり聞いたり見たりしたものとの間には圧倒的な差、絶対埋められない、埋める必要もない大きな溝がある。
しかし、その差、溝を少し埋めて、「詩とはなにか」を考える道しるべの一つになってくれそうな本に出合えた、と感じた。
図書館で借りた本(既に書いたが基本はどんな本も、まず借りて読むことにしている)だが、繰り返して読んで手元に置いておきたい、と思っている。

本書の中には、著者の手書き原稿の写真(下)が載っているが、びっしりと書かれた細かい文字に、その芸術家の真髄がある…のだろうが、写真を見て、「これはちょっと…アレだな」とは思った。

3/18詩とはなにか 中身

       こんな原稿を書き起こす編集者もたいへんだな

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