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「鳥たちの 声」

囀(さえず)りが聞こえる

ここは ショッピングモールのエスカレーター その下のほうから
囀りが 確かに聞こえ
それが あの人の声のように思え
そちらに目を向けた

若い見知らぬ女ふたりの話し声

あの人の姿などない
あの人のこと 別に
好きとか 気になるとか
特段の気持ちがあるわけではない
確かに年齢の割には
キュートな表情で 目の前にいたら
気になる 実は 気になる

そんなアラフォー 二児あり
かわいい顔かたちとは別
仕事では ぐいぐい行く
その仕事ぶり 遠くから見るくらいだったが
電話口では
業者には強く要求し 契約先には声音を変えて下手 いや 丁寧な対応
飲み会では キーマンの上司のそばに貼り付く…
なかなか男でも しないよな ぼくはしなかった
「仕事ぶり」
そんな彼女
声がかわいく
いつも鳥の囀りを聞くよな
高くはない 決して高くはない声で
コロコロと鈴が転がるような声が 耳に入り
ぼくには心地よかった

だから
エスカレーターで その「囀り」が聞こえ
彼女がいるのか

思った
囀りは
意味のわからない声音が
耳に入ってきた時の 理解できないその音が
ぼくには 決して不快なものでなく
心地よい
響き

それは遠くから届き
ぼんやり 聞いているものが
よい


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